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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2014.08
07
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Category : 未分類
 金田秀昭さんは、『外交』での「南シナ海波高し」で、新中国の南シナ海主張を崩壊させるために、台湾に11段線の説明をさせればいい主張している。新中国が南シナ海領域として主張している9段線は、民国の11段線を受けたものである。台湾が11段線には国際法的な根拠はないと言えば、新中国の海洋進出について根拠を失わせるとする主張である。

 しかし、台湾は「11段線はファンタジー」というだろうか?

・ 台湾は海洋権益からそうは言えない
 まず、台湾も海洋利益確保のため、11段線内の島嶼や岩礁を放棄できないので、根拠を弱めるような発言はできない立場にある。南沙諸島については、太平島を始めとして、台湾が一番いいとこどりをしている。そこから得られる、あるいは得られるかもしれない海洋での経済的利益からすれば、中国領土としての主張を交代させるような発言はできない。

・ ナショナリズムからもそうは言えない
 また、ナショナリズム刺戟の面からも、台湾の政府にそのような発言はできない。中国人にとっては、南シナ海が中国の歴史的領域であることは自明である。11-9段線は、その感覚を地図上に表したものであり、そこからの後退は、中国人には神聖な領土の喪失に映る。そのような判断をした政権を、両岸のいずれも問わず、中国人は許さない。もしそのような発現をすれば、台湾の政府は信を失い倒れてしまうだろう。

・ 新中国と友好関係からそうは言えない
 そもそも、台湾には新中国と対立する理由はない。

 今の台湾には新中国と対立する気はない。そんなことを考えているのは日本とベトナムとフィリピンだけで、それ以外の国は中国と積極的に対立する気はない。台湾も、わざわざ9段線を叩いて新中国を怒らせる必要はない。南シナ海での共通利益もある。

 新中国による南シナ海支配は、台湾にとって悪い話ではない。まずは、同じ中国人であるため、台湾支配地域に新中国が干渉するおそれは現段階では殆どない。その上で、新中国がベトナムやフィリピンと対立してくれて、そこが焦点となっているためので、台湾が支配している島嶼に難癖が付く可能性が減っており、現状は利益である。

・ 9段線だけが主張ではない。
 以上が、台湾が新中国の9段線批判に乗っからない理由である。

 さらに付け加えれば、そもそも9段線を叩いても新中国の海洋進出の根拠は無くならないという問題もある。

 例えば、新中国による南沙支配については、日本の新南群島支配を下敷きにしている部分もあるためだ。南沙諸島は日本に支配された実績を持つのは日本である。その日本は南沙を台湾に属するとした。そして、台湾は中国に属する。このロジックについては、9段線の無根拠が明らかになっても崩れるものではない。

 つまり、台湾を引き釣り込んで、新中国の南シナ海進出を止めるということは、まずは無理であるということである。

 安全保障関係の人たちには、台湾を以って新中国を制するアイデアがあるのだろう。かつての両岸関係からの発想だろうが、今の台湾は昔のように新中国と対立する存在ではない。

 その種の夢想よりも、台湾が新中国に取り込まれることを阻止することを考えるべきではないか。台湾の中立化は避けられないにせよ、台湾が新中国に味方することを阻止するアイデアを考えた方がいいだろう。今までの台湾は日本の、日米の都合のいいように動いてくれる友好国であり、歓待する発想だけで進むよりも、台湾に、向こうについたらどういうことになるかを示す方策も同時に示す時期ではないか。



※ 金田秀昭「南シナ海波高し -法による対中包囲を」『外交』(時事通信,2014.7)pp.70-73
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