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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2014.10
30
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Category : 未分類
 北村淳さんの主張は、結局は「危険が危ない」を囃し立てることだけが目的なのではないか?  北村さんの「米軍も取らざるを得ない『弱者の戦略』、早急に必要な中国のA2/AD戦略への対抗策」の中身を見ると、そのような疑問が生まれる。

 まず、中国の願望と事実を混同している。中国が持つだろうと推測する、A2/AD能力の見通しについて、中国には実現不能な範囲を北村さんはそのまま将来の事実として述べている。
(1)第1列島線までの海域は中国人民解放軍が完全にコントロールして、アメリカ海軍をはじめとする他国軍事力を侵入させないようにする。

(2)第1列島線と第2列島線で囲まれる海域での軍事的優勢を人民解放軍が手にして、アメリカ軍には自由な作戦行動をさせないようにする。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42075
とある。これは中国のA2/ADについての説明で必ず出てくるものだ。

 だが、中国には(1)と(2)は不可能である。特に(2)の地域に中国水上部隊や海軍航空部隊は容易には出られない。限定された数の潜水艦が展開しても、その潜水艦脅威ではできるものではない。(1)についても、日米潜水艦は容易に展開可能であり、(2)以上の潜水艦脅威を中国に与える。その他の海空戦力展開も、日本側沿岸ではどう考えても日米が優位に立つ。

 また、サラミ戦術により、A2/ADが推進するといった見方も、奇妙である。米側の安全保障関係者がサラミ戦術と呼ぶものは、南シナ海での岩礁や漁業権の取り合いでの中国の振る舞いを指すものである。米国を中国に寄せないというA2/ADとは異なる。南シナ海のどうでもいい岩礁の取り合いは、米国に対する中国のA2/AD能力に寄与しない。

 「危険が危ない」とはやや異なるが、米側による対中A2/ADにしても、焦点がずれている。それを主張する側の目的は、人民解放軍の行動を阻止するものではなく、中国の海洋使用も不可能とさせるものだ。戦争を千日手にすることで中国を諦めさせる効果はあるが、中国の、特に沿岸部でのA2/AD能力を喪わせるものではない。

 北村さんは「日米は危うい、安全保障大事」と言いたいだけではないのか。敵の能力を相当高めに見て、味方側能力を低めとすることで、安全保障の価値、なかでも、日米同盟や、米国の駐留軍の価値を重視させることだけが目的であるように見える。

 現実的に見れば、現状の日米海軍力は、中国に劣勢ではない。もちろん、対中アドバンテージを維持する必要はある。だが、安全保障の理由だけで日本が中国に対して積極的に敵対的な立場を取る必要はない。

 北村さんが結論とする
 対中国A2/AD戦略を実施するための具体的内容は、本コラムでこれから折に触れて紹介することとなるが、それらの具体的施策や戦術にとってアメリカと東アジア諸国による集団的自衛権の行使は不可欠となる
は、想像上の対中戦だけを重視する日米安全保障サイドの願望かもしれない。だが、日米とも、あるいは中国に、対外協調や経済交流重視する立場は多く、米国では主流である。北村さんの主張するような、安全保障サイドのいい振りだけを真に受けると、日本だけ損をする形になるだろう。



 まあ、何回も繰り返すけど、北村さんの主張は読む価値がある。その上で、読んで批評している。その点で、井上和彦さん桜林美佐さんの、読む価値すらない愛国商売や、産経新聞の国防ホニャララとか歴史戦wの類とは異なる。ここで褒めとかないと、北村さんに悪い気がするので何回も繰り返すものであるよ。


※ 北村淳「米軍も取らざるを得ない『弱者の戦略』、早急に必要な中国のA2/AD戦略への対抗策」『JBPress』(日本ビジネスプレス,2014.10.30)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42075
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Comment

非公開コメント

褒め殺しじゃなくて?

No title

実際に米軍側のA2D2戦略というか作戦構想では、陸海空の統合を重視し、陸の対艦誘導弾部隊と海空をリンクで接続するとか、敵の攻勢機雷作戦を封じつつ、我が方が行うとかの施策が次々とあがってくるんじゃないでしょうか。

偶発的な衝突で日米が一方的に損害を蒙り、その後事態が急速に終息してしまうということがあるかは分かりませんが、偶発的な衝突に応じて米軍が戦力を集結させる前に外交合戦があるでしょうから、外交努力を支える保障は必要でしょうし。