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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2015.09
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Category : 未分類
 山田吉彦さんの講演要旨が産経WESTに掲載されている。中国の海洋進出にあわせて南シナ海が危険であると主張するものであるが、南シナ海の範囲を混同し、機雷戦の脅威を煽っているようにしか見えない。

 山田さんは、ASEAN各国向けの輸出は迂回できないと述べている。
最も危険なのは南シナ海だ。迂回(うかい)航路があるとの主張も聞くが、全く海を知らない論理だ。ベトナム、マレーシア、シンガポールなど南シナ海を通らなければ、他国と貿易できない国が多くある。

 日本とそれらの国との貿易総額は、輸入が約900億ドル、輸出が約1000億ドル。これなくして日本経済は成り立たない。となれば南シナ海の安全を守らなければいけない。しかも重要なオイルルートであり、日本人の使うエネルギーの80%がマラッカ海峡を通り南シナ海を通過して日本に送られている。この海の安全を守るのは日本の義務だ。
http://www.sankei.com/west/news/150901/wst1509010073-n1.html


 だが、南シナ海の範囲を意図的に混同させた話ではないか。中国海洋進出の正面は南シナ海北部であり南部ではない。

 また、日本からシンガポールとのアクセスはジャワ海経由で南側からの迂回で確保できる。東南アジアでの生産物はたいていはコンテナでやり取りされシンガポールに集積される。だからそれで十分である。

 そもそも中国が海洋利用の自由を踏みにじり、南シナ海だけで日本とシンガポール、マレーシア、タイと海上輸送を阻止するような海上封鎖をする話はあまり現実味はない。

 さらに経済的なインパクトもおかしい。

 山田さんは東南アジアと日本の貿易「輸入が約900億ドル、輸出が約1000億ドル」がなければ日本経済が成り立たないという。つまり、海上封鎖のような日中対立がおきている状況を指している。

 だが、それで経済が成り立たないなら、日中貿易ができない状況は日中双方ににとって致命的である。日本の対中輸出と輸入、中国の対日輸入と輸出は1600億ドルと1800億ドルである。それがなくなれば、東南アジア貿易どころではない。

 最後に機雷の話を出しているが、これも首を傾げる内容である。
中国は台湾海峡の封鎖用に持っていた5万個の機雷を南シナ海方面を管轄する艦隊に移し、「人工島周辺で米国やフィリピンが強引に動けば機雷を敷設する」という動きを見せた。処理能力があるのは海上自衛隊だけ。
http://www.sankei.com/west/news/150901/wst1509010073-n3.html


 水深を見ればわかるが、南シナ海は機雷戦に適していない。中国の進出正面である南シナ海北部は海盆状であり、水深4000mに達する海で機雷敷設に適していない。しかも、オイルルートにせよシンガポール向け航路にせよ機雷戦に適した航路収束部もない。バシー海峡は大水深である上に広い。そこを機雷封鎖できるなら太平洋戦争で対潜機雷堰を作っている。南シナ海北部で水深や航路収束部として機雷戦向くのは、自国の広州・香港の前面くらいである。

 結局は「大阪『正論』懇話会」向けの話だ。常に日本は存亡危機と思い込んでいる連中を満足させるため、南シナ海への中国海洋進出は危険が危ないといっているだけなのだろう。それに毎年個人4万、法人5万円の会費を払ってくれるのだからチョロいものだ。




 まー「日米の懸念と、南シナ海周辺国の懸念は違う。日米としては公海使用と上空通過の自由を確保できればいい。南シナ海のどーでもいい岩礁がどこの国のものになろうと、日米は公海と上空の自由が確保されれば知ったこっちゃない」位はいえばいいものなのにね。

 ちなみに、『軍事研究』の今月号、文谷数重「恐るに足りぬ脆弱な中国の人工島」でそのあたりを書いているので、よければ御覧の上お買い上げください。イイ雑誌ですよ。
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Comment

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No title

せっせと埋め立てて人工島こさえても防御力には限界があるわけで、あれでどうするんだろうと他人の話ながら心配ではあるんだよねえ

No title

島を守るには航空の優位が決定的に重要で、航空戦で勝てなきゃ、海戦も陸戦も負ける。
太平洋戦争でも、大規模上陸戦には常に航空決戦が先行した。
フィリピン戦の前にはレイテ航空戦と台湾沖航空戦が、沖縄戦の前には九州沖航空戦と菊水作戦が。
日本軍はこのすべてで敗退したので、海戦も陸戦も負けた。

No title

対中封じ込めで、日本が集団的自衛権をフィリピンやヴェトナム相手に発動したとして何ができるかという面はどうなんでしょうね。海自の哨戒機をフィリピンから展開させるとか、海自でタスクフォースを組んで南シナ海に行くとか想定している方もいらっしゃるんでしょうけど、そうなると日本本土のエアカバーからは外れるしでどこまで有効な働きができるかどうか微妙にも思えます。

> 日本が集団的自衛権をフィリピンやヴェトナム相手に発動したとして何ができるかという面はどうなんでしょうね

中国に疑心暗鬼を呼ぶように救難艦を出没させれば良いんじゃないですかねえ?

そもそも今の日本人が考えている集団的自衛権って、
アメリカが前面に立って日本が後ろからついて行く状況だけでしょう。
「安保法制で南シナ海の中国に対抗する」とか言う人たちは、
出てくるはずだったアメリカが出てこなかったり、
出てくる途中で「悪い、塾の時間だから俺帰るわ」とか言い出したらどうするつもりなのかしら。
フィリピンやベトナムに「僕も帰る」って言うつもりかね。


No title

シベリア出兵と似ているな南シナ海なんぞどうでもいいのに

今月号拝見しました。
南沙問題にしろ尖閣問題にしろ、データを集めて客観的に実態を分析するのって大事なんだなと思いました。
しかし文谷さんの冷静な記事が掲載されたと思ったら、
次のページには某氏による典型的な「危険が危ない」記事が載ってるんだからなあ。
かくも対照的な記事を並べて紹介するのはバランスが取れた編集方針というか何というか。
ある意味「イイ雑誌」なのかも知れません。



人工島附近の水深

最近は粗っぽい主張が幅をきかせているだけに、本ブログの論説、とても興味深く読ませてもらっています。

ただ、今回の話に限っては前提となる部分に誤解があるようですので、僭越ながら一言。

おっしゃる通り、南シナ海北部の水深は全体としては非常に深いのですが、深さ20m-40m程度の浅瀬が海盆から突き出るようにいくつも存在しています。環礁も大きいものですと、台湾海峡の数分の1の面積があります。

人工島はそういったサンゴ礁で囲まれた水域の内側にあります。(周囲の浅瀬を少し掘って、その砂で埋め立てるだけですので、手間としてはたいしたことはありません)。外海との出入りに使われる外周のサンゴの切れ目に機雷を敷設すれば、効果は大きそうです。
(外海は季節風の関係で冬はかなり波が高くなるはずで、通常の生活に居住に適しているとはとても思えません。)

ちなみに数年前に確認した限りでは、米軍が一般向けに出している西沙諸島の海図は、旧日本軍が出したものをそのまま転用していました。少し前の産経の報道によれば、台湾が実効支配する東沙諸島もそのようですね。こんなところでも日本が関係しているところが面白いです。