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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2011.04
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22:04
Category : コミケ
 2010年夏コミで出した『瀛報』(ようほう)29号まえがきから。ナマモノなので一部訂正のうえ転載。



 映画版のソラヲト、なかなか良かったです。カナタ着任前のプレストーリー『ソラノヲト 拝啓大公殿下さま』ですが、インテリ初年兵のノエル着任から始まる小隊の心温まる交歓劇に仕上がっています。
 最初は荒んだ古兵クレハの無理難題、イジメ、鉄拳制裁でチョット沈んだ気持ちになりますが、二人の遭難から物語は穏やかに進展を始めます。山道からのクレハの転落と、殺意すら抱いていたにもかかわらず、惻隠の情から飛び出して助けるノエル。骨折で歩けないクレハを背負ってのサバイバルから互いのわだかまりは溶けていきます。

 そして入院中、新しい小隊長フィリシアの勧めもあってクレハはノエルから読み書きを習います。徐々に読み書きできるようになるクレハ、兵隊として成長していくノエルの姿に、小隊の連帯感が強まりが重ねられていきます。孤児であり、兵舎しか知らないクレハにとって、1121小隊は初めての家族なのでしょう。1年後、乙幹に合格したノエルが教導隊に入校するとき、別れを悲しむクレハが拙い文字で「拝啓大公殿下さま…」で始まる直訴状を書きます。手紙はフィリシアの検閲で差し止められますが、リオの口添えで天聴に達します。伍長昇任後に異例の原隊復帰をするノエル…

 映画版が心温まる話になったのは、TV版のソラヲトの反動なんでしょうね。でも、鬱展開、救いようがないと言われたTV版もドラマとしては傑作です。いや、ソラヲト熱がぶり返して、TV版を見返してしまったということです。
 やはり掉尾を飾るのは第12話『蒼穹ニ響ケ』です。あのスピード感はたまりませんでした。両軍対峙の中間線への進出。通訳の巫女ユミナを通じたアーイシャの捕虜宣誓と解放、独断での停戦ラッパを伝達してからの急展開は何遍見ても目が離せません。

 偶然の結果、始まってしまった戦闘。停戦ラッパを吹奏していたカナタは両目を負傷し車内に転落します。ユミナが包帯を巻いている間にも敵弾は小隊に集中する。そしてタケミカヅチは脚部が撃破され、地上に落下、横転します。
 かろうじて皆は底部脱出口から這い出たのですが、ノエルは整備担当としての責任感からか、または戦車への愛情からか、皆が止めるのも聞かずタケミカヅチに戻り、鹵獲防止用の爆薬を取り出し破壊部署を果たそうとします。車内破壊するために黄色薬のセットを終え、脚部破壊用の対戦車地雷を取り出したところでローマ軍の偵察戦車の接近を認めます。ノエルは躊躇なく黄色薬・対戦車地雷の双方に点火します。煙を引く導火線のついた地雷を持って,こけつまろびつ走るノエル。偵察戦車に接近、戦車底部に飛び込んだところで爆発。敵戦車の擱座と同時に自爆するタケミカヅチ。

 その状況を目の当りにし、狂を発し心身喪失となるフィリシア。「眼が見えない」と泣き叫ぶカナタ。そして偵察戦車から飛び出したローマ兵の接近。意を決したクレハは短機関銃を手に飛び出します。クレハは雄叫びを上げながらローマ兵に走り寄り、乗員を薙ぎ倒すことに成功します。ですが、最後の一連射は途中で弾切れを起こしてしまう。止めを刺しきれなかった敵兵に組み敷かれ、クレハは銃剣で腹を刺突されます。そして重傷を負ったもの同士の、雪の中で這いつくばった格闘。クレハは指でローマ兵の眼を潰し、かろうじて掴んだ円匙で敵の顔を殴り潰すことに成功します。その敵兵の絶命、痙攣のあと、クレハも斃れる。相打ちとなった二人の周りに、白い雪に血が広がっていく…

 そして、一旦落ち着いたカナタが立ち上がり、アメイジング・グレースを吹く。ここからが圧巻ですね。
 戦闘の合間に突然訪れた凪の瞬間、静寂の瞬間に始まったアメイジング・グレースですが、やはりマクロスではない。音楽で戦争が止まるはずもないというリアリティなのでしょう。カナタの音楽を聞き、倒れていた偵察戦車の最後の一人が車体にすがりつくように這い上がる。仲間の仇討ちのつもりなのでしょう。砲塔上に備え付けられた重機関銃にとりついて、カナタを狙う。連射の発砲炎のカットのあと、カナタの音楽が突如止まります。重機の弾で胴体を引きちぎられたカナタ。それを見た敵兵も引き金を引いたまま重機にもたれかかり絶命、空に向いた重機から続く連射。

 カナタの上半身が、ラッパを握ったままでフィリシアの足許に落ちるところからがクライマックスでしょう。
 戦闘の衝撃で心神喪失状態であったフィリシアですが、その表情が怯懦から狂気に変わります。その憎しみの視線は、ローマ軍の散兵線から飛び出してきた一人のローマ兵に向けられる。
 「カメラード」と叫びながら、笑いながら走ってくるローマ兵アーイシャ…時告げ砦でかつて肌を合わせたこともある、百合の仲になった恋人。それと知りながらも、敵として憎しみのまなざしを向けるフィリシア。自動拳銃にストックを取り付け、狙い、全自動で発砲。斃れるアーイシャと雪原に広がる血潮。その手にはヘルベチア語で書かれた『停戦になりました、戦いは終わりです』というビラ…。そして、ローマ軍から飛来した一発の弾丸と倒れるフィリシア。

 直後、停戦命令を伝えるラッパ。猛スピードで到着したクラウス少佐のオートバイ。その側車に乗って大公姫リオが到着するのですが、間に合わないのです。「みんなはどうした」と叫ぶリカに対して「みんな死んじゃったよ」という虚ろな眼をしたユミナ。
 最後に「停戦協定の翌日のことであった」がフェード・アウトしてFIN。

 映画版にしても、TV版にしても、硬軟どちらの展開でもソラヲトはいいですね。『ストライク・ウィッチーズ』とは全然違います。ストパンもソラヲトを意識して硬軟つくろうとしたのでしょう。ですが、軟派のストパンTV版は萌え兵営描写ばかり。硬派をやろうとしたのが映画版『ストライク・ウィッチーズ -音速雷撃隊-』なのでしょうね。でも戦争賛美アニメになってしまいました。よりによって原作のキモであった「月に行くため」と「基地外だ」のシーンをオミットまでしています。TV版にしても映画版にしても、ストパンのの限界はやはり制作総指揮の石原慎太郎の限界なのです。あの世代、従軍経験を持たず、戦場のリアルを知らない割に、一番過激なんですね。特攻隊の肯定や死の美化も甚だしいものです。
 いけませんね、ストパンの悪口を書くつもりはないのですけれども…でもまあ、映画版ソラヲト『拝啓大公殿下さま』、ストパンの『音速雷撃隊』よりもよっぽどオススメです!

 参考資料
『拝啓天皇陛下さま』(63年 松竹)
『血と砂』(65年 東宝)


   『瀛報』(ようほう)第29号『必要なのか新戦車』(平成22年8月15日発行) まえがきより
   





2009年夏コミ「かわいそうなしゃち」
2008年夏コミ「最後の早慶戦」
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