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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2011.05
17
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Category : 未分類
 ロシアでの国勢調査で、自分は「シベリア人」であるという回答が無視できない数であったという。雑誌『クーリエ・ジャポン』※では、海外新聞記事を翻訳・転載している。ロシア新聞記事を紹介した中には、シベリアでの民族主義勃興を紹介した記事があった。『国籍をシベリアと書いた市民は[略]悪ふざけで済ませられる数ではなかった』とあり、『僕らはロシア人とは違うんだ』とする、民族運動団体の主張も載せられている。

 新しい民族が萌芽しようとしているのである。シベリア以東には種々の少数民族が居住しているが、彼らは、帝政ロシア・ソ連・ロシアによって、事実上、一段低い地位におかれていた。彼らは住む土地から、石油、鉱物、木材、狩猟や漁業の資源を対価なしにロシアに奪われている。ロシアからもたらされるのは、放射性廃棄物の最終処分場程度である。ロシアに不満を持つ人々が、互いに同じ民族集団であると認識する可能性は高い。ロシア人ではない、シベリア・ネイティブである、あるいは体制に疎外されていたことで紐帯とした民族が生まれる可能性がある。

 新しい民族が生まれた実例はある。民族集団は、古代氏族から連綿と続くものではない。大半は古くとも近世に「誕生」したものである。「民族が生まれた」過程が一番わかり易いのは、インドネシア人誕生である。インドネシア人は、非白人であり、インドネシアに現住しており、そしてオランダに弾圧された点を紐帯として生まれたごく新しい民族である。新民族であるインドネシア人が誕生する前には、インドネシアには多数の民族が居住していた。それぞれの民族はそれぞれの王国を建て、互いに抗争を繰り返していた。オランダによる侵略・植民地化に際しても、オランダによる攻撃を奇貨として王国の伸長を図る状況であった。いまだにそうであるが、宗教も、言語も異なっている。インドネシア語は、交易用共通言語であった外国語、マレー語に過ぎない。※※

 インドネシア人は、オランダ植民地支配によって誕生した。オランダ植民地政府が国勢調査を実施する際、分類しがたいアジア人はまとめて「インドネシア人」としたことが起源である。「インドネシア人」とは、東インド植民地に居住する、日本人ではなく、中国人でもなく、インド人でもないアジア人を総称する人種名であった。国政調査で便宜上に作られた「インドネシア人」という概念は、後の行政制度や司法制度でも使われるようになった。オランダ東インド植民地に住む人々は、インドネシア人として括られることにより、仲間意識が根付き、最終的には独立運動により、互いに同じ民族であると認識するようになった。植民地支配の結果、新しい民族、インドネシア人が生まれたのである。

 シベリアでの国勢調査の傾向は、インドネシア人が誕生しようとした時期の状況に近い。シベリアは実質的にロシアが持つ植民地である。帝政ロシア以来、ネイティブである人々は疎外されている。シベリア・ネイティブである人々は、比較的小規模の民族集団しか形成できていない。このため「シベリア少数民族」として十把一束で把握されていた。そして、シベリア・ネイティブである人々は、自分たちが「シベリア人」であると考え始めているのである。

 「シベリア人」誕生は、周辺国にとって興味ふかい話となる。「シベリア人」誕生し、民族自決により、「シベリア人のシベリア」が成立した場合、シベリア開発はブームとなる。シベリアには手付かずの天然資源が埋蔵されている。シベリアにはありあまる資源がありながら、新規開発に至らない理由は、ロシアには新規開発をするだめの必要性も資金がなく、外資の導入にも消極的であるといったものだ。しかし、「シベリア人」が独立を果たした場合には、外資を積極的に導入する。シベリアはフロンティアになる。世界中から投資は集まるが、周辺にあり、経済的に余力のある日中韓は特に熱心となるだろう。

※「ロシアで『シベリア国籍』を主張する市民が急増している」64p『クーリエジャポン2011年4月号』(2011.2)
※※アンダーソン『比較の亡霊』に詳しい
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