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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2016.04
23
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Category : 未分類
 教科書問題は結構古い。今の自民党は戦後まもなくから内容に文句をつけている。

 このあたりは先にも書いたことだ。昭和37年に朝日新聞に「現代教科書批判」* として貝塚茂樹さんが批判したというものだ。教科書問題から遠い貝塚さんのところに、いきなり『うれうべき教科書の問題』といったパンフが送られて来て、読んだ所唖然としたというものだ。


■ 卑弥呼は貢物を送っていない

 そしてその大元となったパンフ、今の自民党が作った『うれうべき教科書の問題』** にはもっと露骨な内容がある。

 「中国の歴史書の記述を日本の歴史教科書に載せるな」とあり、さらにそれは「ソ連中共を礼賛する」行為であるとしている。

 たとえば、小学校6年生用の歴史教科書での記述である。
まず、この『あかるい社会』[小学校6年、社会科用教科書]の日本歴史に関する記述は、中国の史書『魏史』にもとをおいて書き始めている。そして「三世紀のはじめにも、まだたくさんの国々がありましたが、そのなかで「ひみこ」という女王は、つかいを中国に送つて、どれいや織物をみつぎものにしました」(上刊一三ページ)と記している。
 この教科書は、中国を正しいとしようとする現実の政治的意図から、中国の史書をもそのまま、正しいもののように取り扱い、あまつさえ、「ひみこ」が、中国にどれいや織物をみつぎものにしたと、断定的なものにして、わが国をえがいているのである。
『うれうべき教科書の問題』(1950.9)p.24


 この部分を「ソ連中共を礼賛する」ものとして断じている。

 要は、卑弥呼が貢物をしたことが、中国への隷属を示すもので気に食わないらしい。

 だが、卑弥呼が奴隷を献じたことを示す偽書の記録を覆すまでの根拠はどこにもない。逆に卑弥呼が魏と敵礼(対等の礼儀)を示す根拠もない。そもそも、それでなければ聖徳太子が敵礼の国書を送ったことが、従来と違って対等を要求した点でトピックたりえないのだがね。


■ 律令も都市計画も日本オリジナル

 ちなみに、その飛鳥時代以降にも『うれうべき教科書』は今では理解に苦しむ内容が続いている。

 批判する点としては、つぎのような事例を挙げている
「代々の天皇の氏のかしらは、日本の王として、中国の皇帝にたびたびつかいを送って、みつぎものを差し出しました」(一六ページ)、「はじめて中国のやりかたをまねて」(二一ページ)、「中国の唐の都をまねて」(二三ページ)、「中国のすすんだ文化」(二三ページ)等々一連の記述を通じて[中共礼賛の態度が]あますところなく、いいあらわされているのである。
『うれうべき教科書の問題』(1950.9)p.24


 実際のところ、江戸中期までは中国は日本の手本であった。政治的な手本であることは徂徠が品川に引っ越した時、これで中華の地に近くなったと喜んだエピソードや、江戸期の刑法典の多くは中国の律を転用しているあたりで伺える。経済・文化的にも日本が追いつくべき先進地帯であった。

 それを全部なかったことにして「日本は中国からの影響は受けていない」と言い出すのは不思議なものだ。

 日本が、中国と並び追い抜くのは日清戦争以降のことだ。それはこの『うれうべき教科書』が書かれた60年ほど前のことに過ぎない。

 その60年の経験と教育だけで、日本は中国よりも進んでいると思い込むのは、夜郎自大でしかない。


■ 神話を載せる歴史教科書

 これらは歴史について、自分たちに心地よい記述以外は拒否する発想である。

 そして、それは今でも続いている。アレ保守の教科書の偏向といった批判があるが、その中身をみると、自分たちにとって不都合なことは書くなというものだ。育鵬社の歴史教科書は全くそれだ。

 だが、それを本統と思いこんでしまうとバカを見ることになる。

 かつて、ソ連では飛行機は、テレビはロシア人が発明したと教科書に載っていたという。それを信じこんでしまうと、外に出て恥を書くだけの話だ。

 いずれ育鵬社あたりもも、最初にグライダーを発明したのは岡山の幸吉とかいいだすのではないかね。あるいは土器は日本人の発明とかね。

 で、それを採用しない教科書は売国的だと云い出すのだろう。

 まあ、昔の自民は左右のバランスが取れていた。この手のことは守旧派がいいだすが、実務派は「本気で言い出すと馬鹿にされる」こと承知しているので無理押しはしない。現実的な必要性から教育二法は必要として推した。だが、そこから先の部分、神がかり教科書は推しもしなかった。

 だが、今の自民には宗教右派しかいない。まず、昔以上にそういうことを言い出し、押し付けるのだろう。日本の前途と歴史教育を考える議員の会あたりの面子をみると、そう云い出すのも目に見えるものだ。例えば、今の義家副大臣は八重山教科書問題で石垣市をそそのかし、竹富町に育鵬社教科書を押し付けようとした張本人とも言われている。


*   貝塚茂樹「現代教科書批判」『朝日新聞』(朝日新聞,1962.12.21)朝刊p.9
**   『うれうべき教科書の問題』(日本民主党,1955.9) 
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Comment

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小林よしのりら漫画右翼の仲間たちのおかげで、その手のトンデモ日本史をあたかも真実の歴史ととらえた人間が大量生産されたのが10数年前
あれから現在に至るも、さらに日本国民はカルトチックな愛国主義に傾きつつありますね

No title

中国共産党とそれ以前の中国文化の区別がついてない点もアレっちゃアレなものを感じますね。ソヴィエトロシア初め各国の共産主義政権が結局ナショナリズムとのある程度の癒着があったのは確かにしろ、一方で近代以前の日本がモデルとした中国文化の中には中国共産党が激しく批判する内容もあるわけで、まあそういう知的水準の人が書いたのだなあと。

魏志倭人伝を引き合いに中共批判する時点ですでにキチガイ沙汰ですが、
そこまで言うなら漢字自体使わなければいいのに。もちろん漢字を基に発明されたひらがなカタカナも使わない。
自分たちで新たに作り出した文字で批判記事を書くべき。
普及させるのに千年くらいかかるかも知れんが、まあそれはそれで。

Re: タイトルなし

だぶん、30年位でできますよ
漢字廃止とアルファベット化(アレはチベットのパスパ文字が下敷きですけど)は韓国がやってますし
イスラエルも30年位でヘブライ語化しているので
日本も日本書紀と古事記の記載と、アルファベットで国語純化できるでしょう

まー抽象的な単語がやたら長くなるし同音異義語が頻発するし
厚いと篤いの概念とか、進めると勧めるの概念が区別つかなくなるでしょうけど
さらに100年あればアーヴ語が完成するのではないですかねえ

> 魏志倭人伝を引き合いに中共批判する時点ですでにキチガイ沙汰ですが、
> そこまで言うなら漢字自体使わなければいいのに。もちろん漢字を基に発明されたひらがなカタカナも使わない。
> 自分たちで新たに作り出した文字で批判記事を書くべき。
> 普及させるのに千年くらいかかるかも知れんが、まあそれはそれで。

ネトウヨに言わせれば「古代の中国は今の中国とは違う」そうですから何も問題が無いはずですがね…

No title

トンデモさん曰く、日本には漢字が導入される前から神代文字とやらがあったみたいですね。

>アーヴ語
新刊出たんだから新作アニメも作られて欲しいところですな

No title

この記事を拝見してから一年後、
本当に「中国礼賛につながるから漢文教育はやめろ」という禿が出てくるとは、さすがに予想がつきませんでした