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- » 2023 . 07
Category : 未分類
サウジが増産凍結で合意しても、原油価格つり上げはできなかったのではないか。
藤和彦さんはJBPress「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」で「サウジのせいでOPEC・ロシアの増産凍結ができなかった」と述べている。
この記事は、原油価格低迷がサウジの体制を揺らがすことを示すものであり、興味深い内容である。読むべき価値のある記事である。
だが、サウジが合意したとしてもOPEC・ロシアの会議が実効性を上げ、原油価格を上げられたかどうかは怪しい。
■ 北米の原油増産は止められない
まず、北米やイランの原油生産が抜け駆けするためだ。これらはざっと2014年ベースで原油採掘量の25%を占めている。イランを除くOPEC(+ロシア)が増産をやめて価格上昇を図っても、これらの国はそれを奇貨として増産するだろう。
アメリカ、カナダ、メキシコでも原油は生産されている。シェールオイル革命以降、アメリカは世界第一位の原油生産国となっており、カナダもサンドオイルにより世界シェアの5%を握っている。両者は高コストといわれている。だが、条件の良い所は安くバレル40ドルでも価格競争力はある。特にカナダは長期的立場から市況と関係なくサンドオイル増産を進める方針にある。
また、イランは増産する気が満々である。経済封鎖が解かれた状況であり、従来のシェアを取り戻すまで増産するとも言っている。社会の不満を解消するため、経済を安定化させるには現金が必要といった背景もある。
■ 安値の石炭や天然ガスで代替される
また、原油生産が滞っても、天然ガスや石炭での代替が進む構図もある。このため、増産凍結により石油価格を釣り上げようとしても上手くいかないだろう。
もちろん石油はエネルギー資源として死活的な重要性を持つが、その死活性はかつて程ではない。エネルギー資源のうち石油の占めるシェアは31%まで低下している。これは非石油エネルギーの伸展によるものである。具体的には石炭29%、天然ガス22%、バイオエネルギー10%が挙げられる。
石油の値段が上がれば、同じく安値となっている石炭や天然ガスで代替する動きもでてくることになるのである。
■ 不景気なので値段も上がらない
そして、最後に不景気の影響も挙げられる。世界銀行の見通しも、世界経済の成長率は下方修正されている。つまり実需が伸びず、同様に投機的な資金流入も見込めない現況にある。そこで原油価格が釣り上げられる見込みはない。
なによりも中国の石油需要は旺盛ではない。中国自体が「新常態」と称する低成長に対応しようとしており、第13次5カ年計画も環境重視にシフトしている。さらにロシア、中央アジア(以前はロシアに買い叩かれていた)からの天然ガス輸入も進んでいる。石油需要は伸び悩み、あるいは縮小するだろう。
■ 構造的に原油価格は上がらない
原油価格は構造的に上がらない。短期的な上下があるとしても、その範囲は大したものではないということだ。
この状況でOPECとロシアが何をしようとしてもダメのダメ押しでしかない。
OPECの価格支配力は三〇年前から弱まりつつあるといわれていた。当時の北海石油程度でそうなったとも言われていたが、今ではそれ以上に米国とカナダが生産シェアを占めており、石炭・天然ガスの活用も進んだ。その上、不景気では原油価格は上がるものではない。
つまり、サウジがわがままを言わなくとも、石油価格のつり上げはできなかったということだ。
書いたあとで思いついたけど、この状況が続けばMRJは売れないね。他社機との価格差を燃費で回収できるかどうか怪しいし、できてもその時間が長いと話にもならないから。まあ、C-2とは違って「なんで作ったの?」バカにしてはいない飛行機だけどね。
* 藤和彦「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」『JBPress』(JBPress,2016.4.25)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46684
藤和彦さんはJBPress「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」で「サウジのせいでOPEC・ロシアの増産凍結ができなかった」と述べている。
この記事は、原油価格低迷がサウジの体制を揺らがすことを示すものであり、興味深い内容である。読むべき価値のある記事である。
だが、サウジが合意したとしてもOPEC・ロシアの会議が実効性を上げ、原油価格を上げられたかどうかは怪しい。
■ 北米の原油増産は止められない
まず、北米やイランの原油生産が抜け駆けするためだ。これらはざっと2014年ベースで原油採掘量の25%を占めている。イランを除くOPEC(+ロシア)が増産をやめて価格上昇を図っても、これらの国はそれを奇貨として増産するだろう。
アメリカ、カナダ、メキシコでも原油は生産されている。シェールオイル革命以降、アメリカは世界第一位の原油生産国となっており、カナダもサンドオイルにより世界シェアの5%を握っている。両者は高コストといわれている。だが、条件の良い所は安くバレル40ドルでも価格競争力はある。特にカナダは長期的立場から市況と関係なくサンドオイル増産を進める方針にある。
また、イランは増産する気が満々である。経済封鎖が解かれた状況であり、従来のシェアを取り戻すまで増産するとも言っている。社会の不満を解消するため、経済を安定化させるには現金が必要といった背景もある。
■ 安値の石炭や天然ガスで代替される
また、原油生産が滞っても、天然ガスや石炭での代替が進む構図もある。このため、増産凍結により石油価格を釣り上げようとしても上手くいかないだろう。
もちろん石油はエネルギー資源として死活的な重要性を持つが、その死活性はかつて程ではない。エネルギー資源のうち石油の占めるシェアは31%まで低下している。これは非石油エネルギーの伸展によるものである。具体的には石炭29%、天然ガス22%、バイオエネルギー10%が挙げられる。
石油の値段が上がれば、同じく安値となっている石炭や天然ガスで代替する動きもでてくることになるのである。
■ 不景気なので値段も上がらない
そして、最後に不景気の影響も挙げられる。世界銀行の見通しも、世界経済の成長率は下方修正されている。つまり実需が伸びず、同様に投機的な資金流入も見込めない現況にある。そこで原油価格が釣り上げられる見込みはない。
なによりも中国の石油需要は旺盛ではない。中国自体が「新常態」と称する低成長に対応しようとしており、第13次5カ年計画も環境重視にシフトしている。さらにロシア、中央アジア(以前はロシアに買い叩かれていた)からの天然ガス輸入も進んでいる。石油需要は伸び悩み、あるいは縮小するだろう。
■ 構造的に原油価格は上がらない
原油価格は構造的に上がらない。短期的な上下があるとしても、その範囲は大したものではないということだ。
この状況でOPECとロシアが何をしようとしてもダメのダメ押しでしかない。
OPECの価格支配力は三〇年前から弱まりつつあるといわれていた。当時の北海石油程度でそうなったとも言われていたが、今ではそれ以上に米国とカナダが生産シェアを占めており、石炭・天然ガスの活用も進んだ。その上、不景気では原油価格は上がるものではない。
つまり、サウジがわがままを言わなくとも、石油価格のつり上げはできなかったということだ。
書いたあとで思いついたけど、この状況が続けばMRJは売れないね。他社機との価格差を燃費で回収できるかどうか怪しいし、できてもその時間が長いと話にもならないから。まあ、C-2とは違って「なんで作ったの?」バカにしてはいない飛行機だけどね。
* 藤和彦「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」『JBPress』(JBPress,2016.4.25)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46684
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No title
11:38
陣羽笛
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また良くも悪くも天下国家を動かしてやる、という自我が極めて強い。
ですから冷静な分析ができるのか、ちょっと疑問なものがありますね。
故に結構本をだされておりますが、私は読みません。
まあ内調なんてどこの役所もエース級は出さず問題児や窓際族をだす傾向があります。みんながみんなとはいいませんが。