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Category : ミリタリー
某所で『海運』を閲覧したのだけれども。2003年9月にバングラディッシュにあるチッタゴンでの海難訴訟(交通事故)が、なかなか想像しがたいもの。記事は高橋裕勝氏の「チッタゴンの347日」※である。
事故当事者は、韓国船籍コンテナ船A(船主は日本)と、バングラディッシュ船籍コンテナ船B、バングラディッシュ海軍となっている。チッタゴンはカルナプリ川に面した河港である。河口から距離は短いものの、河はS字にカーブしているので見通しが悪い。事故はその状況で発生している。
記事の内容から、事実関係を時系列風に記載すると、以下のとおりになる。
・ パイロット操船中のコンテナ船Aが、カルナプリ川の・湾曲部へ飛び出してきた小舟を避けた。
・ コンテナ船Aは、対向車線を走っていたコンテナ船Bと衝突
・ そのまま縺れ合って、海軍基地に突っ込み、艦艇と衝突。
・ 係留していた艦艇が玉突き衝突
これにより、艦艇18隻が損傷する、バングラディッシュ海軍最大の事故となった。
また、これからも酷いもの。
・ コンテナ船AとBは海軍に差し押さえられる。事実上の抑留状態
・ コンテナ船AとBも相互に差し押さえを行う。
海軍による差し押さえが、民事行為なのか、行政行為なのかすらも判別しがたい様子である。
・ 海軍の損害額に関して、JANE'Sに鑑定を依頼したところ「300万から2500万ドルの損害」
・ それにも関わらず、バングラディッシュ海軍は3000万ドルの賠償を要求
→ 海軍に損害額の立証を求めると、「軍事機密であるので説明できない」
国際慣行上、船舶所有者の責任は船舶価値に限定される有限責任制度である。そこで「船舶価格900万ドルを超える賠償はありえない」とし、船舶放棄を試みると
・ 海軍は乗員に下船許可を与えず、長期間に渡り乗員を人質とする
というありさまである。
これは、乗員をおろし帰国させると、容易に船舶放棄される可能性がある。そうなると賠償金を取りはぐれる。乗員をトリコにしておけば、賠償金を払う方向に持っていけるだろう…といった発想のようだ。海上警察権力と当たり屋が一緒になった感もある。英米法の基礎をなす「法の支配」つまり「正義」にもとる行為だといえるだろう。
事件解決は、日本(船主)、韓国(船長)、フィリピン(船員)3国の外交努力(圧力?)によりもたらされるのであるが
・ 3月に乗員を下ろし、バングラディッシュ人船員と入れ替え
・ 9月に賠償金900万ドルで和解、コンテナ船が解放された
乗員は延々半年も半拘束されたという話である。
そして、記事のまとめは
・ パキスタンとバングラディッシュのカントリーリスクだから、船主は注意しろよ
・ そんなときでも、ウチ(損害保険ジャパン)の船舶運航傷害保険があれば助かるよ
というもの。
英米法の国でもこのような対応となると、発展途上国では似たような事件はいくらでも起きるのでしょう。海上保険も、単純に海上危険にだけ備えるものだけでもないというわけですね。
なんにせよ、某国海軍はインド洋の当たり屋かなあという話です。
※ 高橋裕勝「チッタゴンの347日(上)」『海運』(日本海運集会所,2009-08)、「同(下)」(2009-08)
2011年02月28日 MIXI日記より
事故当事者は、韓国船籍コンテナ船A(船主は日本)と、バングラディッシュ船籍コンテナ船B、バングラディッシュ海軍となっている。チッタゴンはカルナプリ川に面した河港である。河口から距離は短いものの、河はS字にカーブしているので見通しが悪い。事故はその状況で発生している。
記事の内容から、事実関係を時系列風に記載すると、以下のとおりになる。
・ パイロット操船中のコンテナ船Aが、カルナプリ川の・湾曲部へ飛び出してきた小舟を避けた。
・ コンテナ船Aは、対向車線を走っていたコンテナ船Bと衝突
・ そのまま縺れ合って、海軍基地に突っ込み、艦艇と衝突。
・ 係留していた艦艇が玉突き衝突
これにより、艦艇18隻が損傷する、バングラディッシュ海軍最大の事故となった。
また、これからも酷いもの。
・ コンテナ船AとBは海軍に差し押さえられる。事実上の抑留状態
・ コンテナ船AとBも相互に差し押さえを行う。
海軍による差し押さえが、民事行為なのか、行政行為なのかすらも判別しがたい様子である。
・ 海軍の損害額に関して、JANE'Sに鑑定を依頼したところ「300万から2500万ドルの損害」
・ それにも関わらず、バングラディッシュ海軍は3000万ドルの賠償を要求
→ 海軍に損害額の立証を求めると、「軍事機密であるので説明できない」
国際慣行上、船舶所有者の責任は船舶価値に限定される有限責任制度である。そこで「船舶価格900万ドルを超える賠償はありえない」とし、船舶放棄を試みると
・ 海軍は乗員に下船許可を与えず、長期間に渡り乗員を人質とする
というありさまである。
これは、乗員をおろし帰国させると、容易に船舶放棄される可能性がある。そうなると賠償金を取りはぐれる。乗員をトリコにしておけば、賠償金を払う方向に持っていけるだろう…といった発想のようだ。海上警察権力と当たり屋が一緒になった感もある。英米法の基礎をなす「法の支配」つまり「正義」にもとる行為だといえるだろう。
事件解決は、日本(船主)、韓国(船長)、フィリピン(船員)3国の外交努力(圧力?)によりもたらされるのであるが
・ 3月に乗員を下ろし、バングラディッシュ人船員と入れ替え
・ 9月に賠償金900万ドルで和解、コンテナ船が解放された
乗員は延々半年も半拘束されたという話である。
そして、記事のまとめは
・ パキスタンとバングラディッシュのカントリーリスクだから、船主は注意しろよ
・ そんなときでも、ウチ(損害保険ジャパン)の船舶運航傷害保険があれば助かるよ
というもの。
英米法の国でもこのような対応となると、発展途上国では似たような事件はいくらでも起きるのでしょう。海上保険も、単純に海上危険にだけ備えるものだけでもないというわけですね。
なんにせよ、某国海軍はインド洋の当たり屋かなあという話です。
※ 高橋裕勝「チッタゴンの347日(上)」『海運』(日本海運集会所,2009-08)、「同(下)」(2009-08)
2011年02月28日 MIXI日記より
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