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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2016.07
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Category : 未分類
 長州カルトの違和感はその夜郎自大にある。彼らは高杉晋作を国民的英雄として取り扱い、明治維新は高杉の手になった国民革命と見ている。だが、それは日本国民としての感覚では過大広告である。そのために違和感を抱く。

 その理由は次の通り。


■ 日本に民族の英雄はいない

 日本には国民的英雄はいない。フィリピンのホセ・リサール、ベトナムのホーチミン、インドネシアのスカルノ、中国の孫文、インドのガンジーに相当するヒーローがいない。

 これは、アンダーソンのタイ研究での指摘から気づいたものだ。岩波の『思想』今月号は去年末に亡くなったベネディクト・アンダーソンを特集している。そこでの実績紹介で「タイはフィリピン、ベトナム、インドネシアのような国民的英雄が不在である」発見についての記述がある。

 この点では日本もタイに近い。あれほど無味透明でもないが、明確な国家英雄は存在しない。

 そもそも明治維新は例示した国の革命とは性格が異なる。他国による植民地化、別民族による支配と圧政への抵抗といった要素は小さい。レボリューションではなくリフォームかもしれないといった指摘もある。

 そこに国家的・民族英雄の成立する余地は小さい。外圧と封建制の機能不全をどうするかといった国家の問題があるものの、結局は大和民族内部の問題であるし、そこでの騒乱もほぼ従来支配階級の中でのヘゲモニー争いでしかないためだ。


■ 長州革命戦士は、あくまでご当地ヒーロー

 この状況で長州革命軍、長州維新軍と言い出しても、結局はヘゲモニー獲得で勝利しただけにすぎないし、その英雄も県の偉人でしかない。

 実際に、高杉ほかの長州革命戦士は、「長州」で括られるようにその地域区分の中で活躍したご当地ヒーロでしかない。これは吉田松陰の松下村塾も同じだ。蕃薯調所や適塾のように全国規模で思想家を輩出したわけではない。結局はその地方限りである。

 だが、長州カルトはそれを国民的英雄、革命聖地として過剰に持ち上げ、押し付ける。結局は、おらが村の偉人や県庁だけで銘柄扱いされる駅弁を持ち上げる田舎漢のアレと同じである。

 もちろん、それに気づかないから、カルトであるわけなのだがね。



 まー、東京あたりだと明治維新の英雄としては大西郷なんじゃないかね。それでも国民英雄までには届かない。その関東で高杉晋作とか吉田松陰と言われてもねえ。靖国社の遊就館の最初の部分、長州パワーの陳列なんて「なんでコレがあるの?」だった。子供心ながら、国民国家としての日本の認識とズレていることが分かっていたのだろう。
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Comment

非公開コメント

伊藤博文まで人材を繋げたところが、高杉晋作の偉いところなんでしょう。

まあ、彼自身は戦国時代でいうと、信長・秀吉・家康のどれにも該当しませんよね。戦術家ではあるが大局から戦略を組み立てる人ではない。
真田信繁、伊達政宗みたいなのが歴史ファンには人気がありますが、それとパラレルなんじゃないかと。

救国の英雄としては、蒙古襲来のときの北条時宗はいかがでしょうか。ま、戦場には行ってませんけどね。

Re: タイトルなし

こりゃまた違うんですよ、19-20世紀の国民国家、民族国家での国家的英雄、民族的英雄は別に勝たなくてよい
ホセ・リサールは医者ですし、ガンジーは戦闘そのものをしていない、孫文も戦争上手でもない

なんと言ったらいいかは私にも言い難いのですが、抵抗・独立の指導者であって「この人がヒーローであると認識され、尊敬されるべきであり、それは当然」と国民意識レベルで投影される人ですね

その点、高杉晋作や吉田松陰は安重根と同じレベル、志士として追憶されるけど国民的なヒーローではない
シモン・ボリバルとかジュゼッペ・ガリバルディとかあのレベルまでいって、紙幣採用や都市の名前になるくらいでなければなりませんねえ


> 伊藤博文まで人材を繋げたところが、高杉晋作の偉いところなんでしょう。
>
> まあ、彼自身は戦国時代でいうと、信長・秀吉・家康のどれにも該当しませんよね。戦術家ではあるが大局から戦略を組み立てる人ではない。
> 真田信繁、伊達政宗みたいなのが歴史ファンには人気がありますが、それとパラレルなんじゃないかと。

Re: タイトルなし

これも面白いのですよ、近世あるいは現代の国民国家の公定ナショナリズムにより、過去の人物が歴史的ヒーローになるという
アンダーソンも述べているのですが、インドネシアではディポヌゴロ王子(1785-1855、https://en.wikipedia.org/wiki/Diponegoro)をインドネシア民族の英雄にしていますけど

肝腎の当の本人は「この植民地支配の混乱に乗じて、いっちょジャワを征服してやるか」といった頭であって
インドネシア人(コレ自体が植民地支配下の20世紀初頭の国政調査でできた概念ですけど)のためにオランダと戦うつもりであったわけではないという

時の執権さんも、日本を守るために戦うではなく、ここで勝たないと自分の支配体制が揺るぐから、朝廷やら寺社も巻き込んで頑張るくらいだったのではないかなと

> 救国の英雄としては、蒙古襲来のときの北条時宗はいかがでしょうか。ま、戦場には行ってませんけどね。

No title

>「この人がヒーローであると認識され、尊敬されるべきであり、それは当然」と国民意識レベルで投影される人ですね

アイドルないしアイコンのことですね。マクロスのリン・ミンメイみたいなやつ(笑)
現代人からすれば西郷隆盛、坂本龍馬、高杉晋作になるのですが、当時だと西郷以外は一部マニアの地下アイドルなんでしょう。地方組織の藩を中心に動きましたから、仕方ない部分もあります。
維新はガンダム的に敵方モビルスーツの人気が高いので、その辺もヒーロー不在の原因なんでしょう。

会津の人たちからしたら、薩長の英雄なんかを英雄視するわけないですし、全国民が認める英雄は不在でしょうね

外国人襲撃(他藩でもやってましたけど)や御所焼き討ちや松陰本人の他国侵略構想を見る限りではISと何ら変わりがない様に見えますがその辺は山口県の方々は如何感じていらっしゃっているのでしょうね?

Re: タイトルなし

ただ、テロは当時、19後半-20世紀初頭の世界的流行なのですよ
電信と新聞で世界がつながった結果、一つの国で民族派のテロが起きると別の国でもテロがおきる
その最大のものが、セルビア民族派のオーストリア皇太子暗殺というわけで

> 外国人襲撃(他藩でもやってましたけど)や御所焼き討ちや松陰本人の他国侵略構想を見る限りではISと何ら変わりがない様に見えますがその辺は山口県の方々は如何感じていらっしゃっているのでしょうね?

No title

全国規模で英雄扱いされる資格がありそうといえば坂本龍馬だけど、最近の研究だと坂本の構想とされるものは全部他者の発案、あるいは最初から存在しないってばれちゃったよね。
坂本は大物志士として活躍した人物ではあったけど、もっと地味な人だったと。
戦前戦後を通じて、「理想の志士」「志士とはこうあるべき」のイメージが、各種メディアを通じて繰り返し上塗りされた結果、坂本龍馬のイメージがすごい独り歩きしてしまったそう。
この点真田幸村に近いものがある。

だいたい、坂本の人格ってつぎはぎしすぎて破綻してるんだよね。「日本人」であることを自覚した数少ないファーストナショナリストでありながら、脱国家を目指すグローバリストという奇怪な人格。
志士の集合人格坂本龍馬!

Re: No title

ヒーローについて史実そのものはいいのですよ、アイドルですのでみんながそのイメージを想起すればホンモノはどうでもよいのです
その点では坂本龍馬はヒーローとしては合格なのですけど、ただやはり民族英雄になるには押しが弱い。

ちなみに一番好きな話は、幕末明治初期には無名だったけど、明治20年位の高知新聞だかの連載小説で幕末のヒーローになった人と言った話ですねえ。院にいってたとき、よそのゼミで博士中間発表がそれの人がいて聞いた話ですけど
なんというか、司馬遼太郎の小説で幕末明治のヒーローとなった人と本質的に同じという


> 全国規模で英雄扱いされる資格がありそうといえば坂本龍馬だけど、最近の研究だと坂本の構想とされるものは全部他者の発案、あるいは最初から存在しないってばれちゃったよね。
> 坂本は大物志士として活躍した人物ではあったけど、もっと地味な人だったと。
> 戦前戦後を通じて、「理想の志士」「志士とはこうあるべき」のイメージが、各種メディアを通じて繰り返し上塗りされた結果、坂本龍馬のイメージがすごい独り歩きしてしまったそう。
> この点真田幸村に近いものがある。
>
> だいたい、坂本の人格ってつぎはぎしすぎて破綻してるんだよね。「日本人」であることを自覚した数少ないファーストナショナリストでありながら、脱国家を目指すグローバリストという奇怪な人格。
> 志士の集合人格坂本龍馬!

No title

薩長閥に押されて不遇をかこっていた土佐閥が、イメージで対抗しようとして「英雄坂本龍馬」を捏造したっていう話、いいですねぇ。
普通なら「おらが土佐のローカル英雄」で終わるはずが、当時の日本には薩長閥が嫌いな人がたくさんいたために、薩長閥のアンチテーゼとして祭り上げられたっていう話も好き。

No title

たしかにいませんね
中国大陸を占領したとか、ロシアを占領したとかの人物じゃないと
その点ではパールハーバーを爆撃した山本五十六
ロシア艦隊を撃破した東郷平八郎
この二人がかろうじて英雄ってところです
やっぱり複数の国を占領して巨大帝国を築かないと厳しいですね

まあ、でも
日本の誇るゲームや漫画オタクカルチャーにかかれば、高杉晋作もメジャーな英雄ですよ
日本中の歴女や腐女子たちにですがw

稲田朋美氏が防衛相に任命されましたね。現役の自衛官の方々には不幸な話でしょうが。

No title

稲田防衛大臣は、外務大臣や法務大臣よりずっとまし
自民の保守派議員は、アホウヨと自衛隊の板挟みにされて、まともになってほしい

この記事の内容とは全く関係ないんですが、映画通な文谷先生のシン・ゴジラ批評を是非拝見したいです。
私はまだ観てないのですが、ガルパンおじさんたちは絶賛してるようですよ。

Re: タイトルなし

どっちかというと鈴本あたり行ってアサダ二世のインチキ奇術みたいです

> この記事の内容とは全く関係ないんですが、映画通な文谷先生のシン・ゴジラ批評を是非拝見したいです。
> 私はまだ観てないのですが、ガルパンおじさんたちは絶賛してるようですよ。