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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2011.06
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Category : ミリタリー
 「来年10月にできる中国空母(旧ワリヤーグ)って、いろんなものが足んないよね」とね。アレ、強力すぎる日米海軍力や、台湾の前では使えるものでもなさそうですね。空母については中国人自体、威信財だと理解しているから、本人的にもいいのでしょう。以下、趣旨としては「まあ能力的も、フランスや南米で保有している威信財空母と同じじゃないかね?」といったあたりです。ハイ。



 香港誌『鏡報』5月号表紙は「中国航母明年十月成軍」という特大の記事紹介がある。記事※によれば、中国初となる空母が来年10月1日に海軍に引き渡されるという話である。中国人にとって空母は「夢」であった。記事中にも「『航母熱』が国や人民を動かした」という記述や「地方政府である山東省が空母建造のために20億元の支出をした」(大意)とする紹介もある。海軍も「何があっても、岩にしがみついても空母を作る」(「咬定青山不放鬆」)と公言していた。中国人にとっては、空母建造は悲願であり、それが成就する日が近づいているのである。

 しかし、建造した空母が使い物になるかどうかは怪しい。中国が手に入れる空母関連技術は、旧ソ連系技術である。今建造している空母にしても、船体そのものはウクライナから購入した半完成品である。同様に、船体に取り付けられる航空艤装や、艦載機も運用技術もロシアやウクライナから輸入されたものである。ロシアやウクライナが持つ空母関連技術は実用性に富んでいるわけではない。確かに、いまでもロシアは旧ソ連以来の技術で空母を運用している。洋上で固定翼艦載機を飛ばし、着艦させている。だが、それだけである。ロシアは空母を運用しているが、活用できているわけではない。厳しい見方をすると、試験運用を続けているだけである。空母を限定使用しかしていないロシアや、現要していないウクライナからもたらされる技術には限界がある。中国は短期間で空母を実用レベルに持っていくことはできない。

 そもそも、旧ソ連に由来する空母技術には、抜けがおおい。カタパルト、固定翼早期警戒機、専用艦載機は、旧ソ連以来欠落した技術である。ロシアとウクライナには渡せる技術も実物もない。これらの欠落は、中国にとって、本格的に空母運用をする上で大きな障害となる。

 まず、カタパルトがない。カタパルトがないため、スキー・ジャンプ台による発艦となる。艦載機はカタパルト発艦に比較して、シビアな重量制限を課せられる。燃料や弾薬についても、搭載量が制限される。艦載機は比較的短距離・短期間の運用を強いられる。問題を解決するには、カタパルトを搭載するしかないが、いまカタパルトを作ることができる国は米国だけである。旧ソ連が空母建造を決心してから今日にまで、70年代から今日に至るまで、旧ソ連もロシアもカタパルトは作ることができなかった。同じように、中国はカタパルトを入手する見込みは立たない。

 次に、固定翼早期警戒機がない。早期警戒機は、空母機動部隊を防空する上で是非とも欲しいものである。しかし、ロシアが提供できるのは、能力が制限されるヘリコプターに搭載した早期警戒システムである。ヘリコプター搭載型早期警戒機では、搭載できる機材は小さく、軽いものにならざるを得ない。固定翼早期警戒機に比べて飛行高度も稼げないため警戒範囲は狭くなる。もちろん滞空時間は短く、乗員に疲労は多い。また艦載機を攻撃的に使う場合にも、ヘリコプター搭載型早期警戒機では攻撃部隊に同行できない。相手が早期警戒システムによる支援が得られる場合、攻撃部隊は一方的に不利になる。極端な話、空母から運用できる固定翼早期警戒機がなければ、艦載機は威力を発揮しない。空中では高性能であるSu27系統を艦載機として搭載しても、宝の持ち腐れとなる。固定翼早期警戒機も、中国は長い期間と予算を投じて、自前で作らざるを得ない。

 そもそも、母艦運用専用の艦載機もない。ロシアに購入を持ちかけているSu-33は、艦載機についてノウハウを持たぬロシアが、陸上機を改修したものにすぎない。機体も大型であり、空重量で20トン近くと重い。カタパルトを持たない中国空母で容易に運用できる機体とはいえない。同じように通常型空母を運用しているフランスやインドは、小型軽量な機体を指向している。カタパルトを持つフランスでも、艦載機は丁度10トンのラファールを搭載している。カタパルトを持たないインドは、国産陸上機LCAに手を入れた機体であるが、6.5トン程度の艦載型を開発しようとしている。カタログ上、Su-33は空中に上がれば高性能かもしれない。だが、軽量機に比較して離着艦は容易なものではない。また、搭載数も制約を受ける。そもそもロシアにしても空母運用は実用試験を続けているようなものである。艦載機としてのSu-33も、たしかに艦上運用は可能である。しかし、実運用で役に立つものであるのどうかは実証されていない。中国が空母を実用品として使うためには、空母をある程度運用し、空母技術を熟知した上で、中国の事情に合わせた正規の艦載機を開発するか、購入する必要がある。

 このように中国は空母技術上の不足している。完成した中国空母は、ロシア空母と同様に、長期間にわたり試験運用程度の水準にとどまる。正規空母として本格的に利用できる目処は、当座立たないだろう。この問題は中国人も承知している。一時、中国で刊行されている一般向け軍事雑誌『艦船知識』や『軍事知識』では、空母紹介のたびごとに、カタパルトや固定翼早期警戒機、専用艦載機の必要性を主張していた。

 しかし、問題は空母技術だけではない(以下、『中国空母って使い物になるのかね?(後編)』


※ 江小舟「中国航母明年10月成軍」『鏡報』(鏡報文化企業、香港 2011年5月)




 …まあ、ちょっと長くなったので、読みにくいから残りは明日にでも上げることにします。内容的には、これに加えて「護衛戦力と洋上哨戒力と対潜技術をどーするよ」ってあたりです。
 まあ、原潜も持って、空母も持ってだと、それ以外の海軍装備って絶望的におしまいになるんじゃないかね。その上で中国が言われている「空母5隻欲しい」というのも、戦前日本にとっての戦艦×8、巡戦×8なみの負担になるんじゃあるまいかと。すでに海軍と第2炮兵は金食い虫だし、ほかにも武警やら公安警察やら、4つもあるコーストガードといった機関に金突っ込んでいるわけで、今以上に陸軍を削減し、空軍装備更新を後回しにしても金は続かないだろうね。
 中国もじきに一気に高齢化するようだし、『デフレの正体』みたいに引き潮的な経済縮小があると、中国がやっている海軍優先もどうなることかね。もともと陸軍国だから、大海軍はさっさとあきらめるのかもねえ。ソ連崩壊後のロシアのように。
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