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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2016.12
05
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16:04
Category : 未分類
 神立尚紀さんが「ゼロ戦」に怒っている。面倒でも「零戦」と表記しろ、「レイ戦」と読めといった主張である。

ゼロ戦警察神立さん
神立尚紀@koudachinaoki 2時間2時間前
零戦を「ゼロ戦」と表記するのはやめて欲しいですね。これは戦後の戦記漫画ブームの頃から広がったインチキ表記ですから。
先人たちの底力 知恵泉「ゼロ戦開発の光と影~世界に通用する技術を生むには~」
https://twitter.com/koudachinaoki/status/805621784162598913

神立尚紀 @koudachinaoki
朝日新聞の表記は「零戦」で、漢字に「ゼロセン」とルビが振られている。搭乗員の間では一般には「レイセン」、一部部隊で「ゼロセン」と呼ぶ人もいたが「ゼロ戦」との表記はしていません。そこまで言わないといけませんか?私は「ゼロ戦」の表記について言っている。無用な揚げ足取りはやめてね。
https://twitter.com/koudachinaoki/status/805644321332432900


 だが、神立さんの主張は正しいのだろうか? 本当に「搭乗員の間では一般には「レイセン」、一部部隊で「ゼロセン」と呼ぶ人もいたが『ゼロ戦』との表記はしていません。」(神立)と言い切れるのだろうか? 軍隊内の表記に「0戦」や「ゼロ戦」があり、そのような読みがあったらどうするのか?

 というのも、手書きの時代の表記は適当だからだ。昔はパソコンもワープロもコピーもない。だから略字や略表記を使っていた。面倒な字を一々書いていられないからだ。


■ 筆記経済を無視した主張

 実際に旧海軍の表記を見てもさほど厳密ではなく「『ゼロ戦』との表記はしていません。」(神立)どころではないためだ。

 特に画数の多い字は省略される。

 例えば短艇の例はそれだ。旧海軍も海自も櫂漕型の短艇は普通にカッターで済ませている。書くのが面倒だからだ。普通に「カッター」と表記するし、あるいは「舟カ」といった略字も作っている。この字は『高松宮日記』に出てくる。

 さらに空母機動部隊をKDB等と筆記する例もそれだ。特にこれは従来の英語略字から作られたものではない。自然発生的な表記も受容したものだ。

 特に日常的に使う文字なら適当に略される。筆記上の経済性を追求するためだ。

 台湾が良い例だ。正式名称が大字の「臺灣」なのに「台湾」と略字で書き、台湾人はそれでも面倒と手書きでは漢字の中にTWとも書く。

 日本円や人民元も同じだ。金額を書くのにいちいち大字の「圓」なんて書いていられない。日本では崩して囗に人と書き、今ではさらに省略して「円」と書いている。中国は同じ発音の「元」ですませている。

 この点からすれば「『ゼロ戦』との表記はしていません。」(神立)漢字筆記の経済性を無視した相当に怪しい発言だということだ。特にメモや写し文書、細密字を書きにくいガリ版で「0戦」や「ゼロ戦」が出て来ることは充分に予想できるし、その場合、主張は容易にひっくり返ってしまう。


■ 日本語は読みの規範がテキトー

 読みも同じだ。零をレイとだけ読ませるのには無理がある。「零落」といった例外を除けば、もともとが数字の「0」の意味に当てるために使われている字のためだ。難読訓同様にゼロと読んでも誤りではない。例えば「等」を「など」と読む人がいるのと同じことだ。

 そもそも、日本語での漢字の訓みは固定していない。人名漢字がいい例だが、誰がどう読んでも文句は言えない言語である。だから日本語学習者は困っている。

 さらに軍隊式の読みを国語で強制するのも無理がある。「零戦」を「レイセン」と読めと強要するのは、「一〇式戦車」を「ヒトマル式センシャ」と読めといっているようなものだ。軍隊内部は縛れてもシャバを縛れない。

 その軍隊内部での表記も揺れる。「一三年式機関銃」は「じゅうさんねん式機関銃」でもある。正式名称「三十八年式小銃」は用途から三八式歩兵銃と常に略称略記され、さらに「サンハチ」ではなく「サンパチ」と常訓されている。 

 この点からしても「レイセン」と読め、「ゼロ戦」は許さないは乱暴な主張であるということだ。


■ ゼロ戦警察神立さん

 では、なぜ神立さんはそのような主張をするのか?

 権威を示したいのだろう。「オレは一人者であり正しい表記、発音を知っている」といったものだ。零戦で衣食しているうちに、零戦の権威となって、俺が正解と決めたレイ戦以外は許さないといったゼロ戦警察となった。そのあたりだろう。

 だが、やっていることは「さいたま」警察と同じものだ。

 これは「さいたま市」の「さ」の字は「ち」を裏返した二画が正しい、三画は誤りとするものだ。マヌケなことに住所表記の漢字部分では二画「さいたま市」、そのふりがなでは三画「さいたまし」と書くのが正しいといっている連中である。

 これは教員に多い。他にも埼玉警察や薩摩警察もいる。埼玉の「埼」は山か立か、薩摩の「薩」は文か立かのゆれを許容せず、正しい表記を言い出してテストで◯☓をつける教員がそれだ。大きく見れば掛け算の順番警察と同じものだ。

 その伝から言えば神立さんの主張も、まずは小学校教員が掛け算の順番で正邪を言い立てているのと同じようなものである。

 そのような無意味な主張を崩すためにも、新聞等が普及しているゼロ戦を常用することはむしろ好ましいものでもあるだろう。
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Comment

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No title

http://ameblo.jp/zero21nk/entry-12214141431.html
そこまで当時の表記に拘るのであれば「スピットファイア隊」という表記も使ってくれるなと言ってもいい気もしますけれどね。"Spitfire" squadronとか無いでしょみたいな。総じて先の大戦における旧軍関係はすごく厳格ですけど、一方で他面では神立さんの、特に社会科学の理解の度合いとかはブログやツィッターから見る限りではちょっとヘンなんじゃない?って思うことが多くて、かつまた零戦かゼロ戦かとか、三〇一空か戦闘三〇一かとか(神立氏本人が歴史の歪曲につながるから気になるとする点)よりもっと重大な影響がありそうに思うんですよね。たとえば
http://ameblo.jp/zero21nk/entry-12102660205.html
ここにある「プロレタリアートな階級史観」とか。そういった用語の厳格さの適用に軽重があるあたりはブログ主の言うように「権威を示したい」心理があるだろうと言われるのも当然でしょうね。

オレ達の、オレのみの零戦

当事者、海軍では「零戦(公称)」と云っていたという事実と、戦後「(通称)ゼロ戦」として広く日本社会で浸透したという実態は何ら矛盾しません。

その彼の云う「インチキ表記」で書かれた戦記漫画で今日受け容れられたという事実を軽く見ているというか、ゼロ戦として親しまれ、親しんでいる人々に向けられた狂気的悪意の矛先は一体どこへ向かうのでしょうか?暇なのでしょうか?

今現在彼が主張している事はTBSの時代劇『水戸黄門(R)』を水戸光圀と言え、と叫んでいるワケです。インチキ表記だと。光圀公に対して無礼だとセルフ崇敬会を気取っているわけでしょうが、本当のファンが今しなくては成らないのは、再放送の要望を出して「水戸黄門を初めとした時代劇の火を消しては成らない」というキャンペーンなんですが。

零戦がスゴいという話は未来永劫語り継がれる場合、それは恐らくある種の日本の悲劇で、また伝説へと昇華した場合は、その実績こそが中身の本質であって、名称が何という形で未来で語られようが、それは当時の呼称とされるだけだと思います。

零戦警察はどうも内ゲバ指向のようです。私は「ゼロ戦ファン=零戦ファン」の区別がつきませんが、一方はその存在が否定されなければならないのでしょうか?

天皇制を維持するためには天皇は死んでも構わない、という臣節wを抱く保守と同じで、訳がわからないです。

Re: No title

厳密なこと言っている風で、結構適当なもんだと思いますよ
ハンモックナンバーは指揮序列で大事とかいってるけど
https://twitter.com/koudachinaoki/status/802426365777616898

通常は先後任順で足りるし、そもそも同期で同時に昇任したやつが指揮継承を争うような配置にしない
仮に上層部が全滅しても当座は指揮しやすい方が指揮を取る
そもそもハンモックナンバーと序列は正確に言えば違う、病気や事故で昇任が遅れて先後任順がひっくり返ればオシマイ

「レイセン」も、生き残った連中の中でなんとなくできた正規表現なんじゃないかなと思うけど、それを絶対と言って振り回すのはねえ。
新撰組か新選組かについて、六〇年後に「新選組」が正しいとした爺ィが、それを主張する文中で「新撰組」使ったりしてるし

Re: オレ達の、オレのみの零戦

ご本尊も大東亜戦争といえ太平洋戦争というなといった太平洋戦争警察風な割には
天皇制というな国体と言えとはいわなさそうなあたり、太平洋戦争とゼロ戦以外はあんまり知らない感じがね

そんなに正規表現が大好きなら全部「零式艦上戦闘機」と書けばいいのにね
九六式とは~みたいな戦闘機としての比較で略すなら「零式」になるはずだし

> 当事者、海軍では「零戦(公称)」と云っていたという事実と、戦後「(通称)ゼロ戦」として広く日本社会で浸透したという実態は何ら矛盾しません。
>
> その彼の云う「インチキ表記」で書かれた戦記漫画で今日受け容れられたという事実を軽く見ているというか、ゼロ戦として親しまれ、親しんでいる人々に向けられた狂気的悪意の矛先は一体どこへ向かうのでしょうか?暇なのでしょうか?
>
> 今現在彼が主張している事はTBSの時代劇『水戸黄門(R)』を水戸光圀と言え、と叫んでいるワケです。インチキ表記だと。光圀公に対して無礼だとセルフ崇敬会を気取っているわけでしょうが、本当のファンが今しなくては成らないのは、再放送の要望を出して「水戸黄門を初めとした時代劇の火を消しては成らない」というキャンペーンなんですが。
>
> 零戦がスゴいという話は未来永劫語り継がれる場合、それは恐らくある種の日本の悲劇で、また伝説へと昇華した場合は、その実績こそが中身の本質であって、名称が何という形で未来で語られようが、それは当時の呼称とされるだけだと思います。
>
> 零戦警察はどうも内ゲバ指向のようです。私は「ゼロ戦ファン=零戦ファン」の区別がつきませんが、一方はその存在が否定されなければならないのでしょうか?
>
> 天皇制を維持するためには天皇は死んでも構わない、という臣節wを抱く保守と同じで、訳がわからないです。

実は解らないワケでは無いんですよ…

もんたにさんの主義とは違いますが、私は歴史屋なので固有名詞は出来る限り正確に書く主義なので靖国神社を表記出来ないけれど正字で表記したいと思っています。「髙橋さん」を勝手に「高橋さん」と書きたくないからです。でも連隊を部隊名として聯隊として登場させると文中の普通名詞としての連隊と整合が取れなくなってしまいますので、やっぱり一般的な表記となってしまいます。
この辺が旧字(正字)主義者とは違う訳で、今更文語でなんか文章は書けません。

ゼロ戦は通称で公称では無い事くらいはアホでも判る。でも赦せない、と彼はいうのですかね。
理屈では無くって、どうしても引っかかる、許容出来ない、という感覚は私でもありますからね。

でも思うのです。先の方のリンクで当該ブログを拝見致しましが、私もそこまで言うなら旧海軍という失礼な云い方では無く(現に表には出しませんが、憤りを顕わにする関係者もいますし)日本海軍もしくは帝国海軍だろうと。

案外「零戦警察」はへっぽこ、というのが当方の所感ですw

Re: 実は解らないワケでは無いんですよ…

戦時中からゼロ戦って読んでた人いるよねといった反論について
屁理屈といって逃げてるあたりはへっぽこですね

ゼロ戦スゲーで褒めてくれる狭いサークルでしか通用しないタイプなんじゃないかなと

> 案外「零戦警察」はへっぽこ、というのが当方の所感ですw

以前のtwitterの意趣返しですか

神立さんの人柄や、過去の人の仕事に乗っかって第一人者になっているんじゃないかというのはともかく、

当時の記録文献には、少なくともどっかの誰かさんよりも目を通しているんじゃ?違うの?

わたしが答えるのもナンなのですが。

史料も読んでいるでしょうし、誰よりも関係者や搭乗員とも会っているのでしょう。その自負もお有りなのでしょう。

だから気持ちは判らないのでも無いのだけれど、彼の主張は「パイロットを搭乗員と呼べ」と云っているに等しく、例えこれが当時の公式の正式の呼称であっても、逆に通称を「間違った、出鱈目だ」ということは果たして正しいのでしょうか?何か間違っていませんか?勘違いしていませんか?と云いたくなるわけです。

既に「ゼロ戦」として親しまれている愛称として定着してしまったワケですし、戦記ブーム当時には名称の違和感が海軍関係者より噴出していたのかも知れませんが、今日からすれば既に「終わった(勝負がついた)」話を定着後に「海軍の正式・公式」をふりかざして覆えそうとしているその姿は懐古主義を飛び越えた復古主義で悪しき海軍ファンの姿と云えます。

海軍における表現は国語における一表現でしか無く、当時においてもそうだったにも関わらず、かつそれを知りながら、他の表現に対する規制呼び掛けるというのは私は(気持ちは判りますが)零戦研究の権威者としては、ただのおごりでしかありません。

昨今の「萌えミリブーム」に苦言を呈すミリオタと同じようなもんで、軍事を「高尚にして神聖なるもの」と考えていないなら、これがこの国のカタチとして受け容れた方が現実に即しているような気がします。

結局、大衆化って平易な方へ靡くことなわけです。

No title

元パイロット、もとい搭乗員の爺様が出てきて「うちの部隊ではA6Mと読んでいたし書いていた。
だから『ぜろせん』も『れいせん』も誤り」とか言い出したらどーするつもりなんでしょ?
元米軍パイロットが「うちの部隊ではZekeと読んでた書いてた」でもいいですけど

昔のエントリにありましたけど、結局↓ですわな
>その理屈で言えば、「医者はコウクウとよむから、『口腔外科』の正しい読みはコウクウ外科だ」
>ということになるだろう。

Re: No title

新聞の慣例的表記があるのに「『書類送検』という法律用語はない、警察ドラマが作ったインチキ表記」と言い出す
検察マニアな感じもね。もちろん本人は元検事でもない、その虎の威を借る狐であることが愉快だなあと
このあたりも桜林美佐の自衛隊ヨイショ、自衛隊と自己を一体させるような感覚に近いものがあるのかなと

> 元パイロット、もとい搭乗員の爺様が出てきて「うちの部隊ではA6Mと読んでいたし書いていた。
> だから『ぜろせん』も『れいせん』も誤り」とか言い出したらどーするつもりなんでしょ?
> 元米軍パイロットが「うちの部隊ではZekeと読んでた書いてた」でもいいですけど
>
> 昔のエントリにありましたけど、結局↓ですわな
> >その理屈で言えば、「医者はコウクウとよむから、『口腔外科』の正しい読みはコウクウ外科だ」
> >ということになるだろう。

No title

「萌えミリブーム」を無邪気に消費してるミリオタのほうが寧ろ、「ゼロ戦」警察と親和性高そうなのですけえどね。


>>昨今の「萌えミリブーム」に苦言を呈すミリオタと同じようなもんで、軍事を「高尚にして神聖なるもの」と考えていないなら、これがこの国のカタチとして受け容れた方が現実に即しているような気がします。

Re: No title

艦これやってるような消費するだけのオタだと「戦前の横書きはすべて右から左にかいている」とか「年号はすべて皇紀」とか「漢字はすべて繁字体」とか信じてそうですよねえ


> 「萌えミリブーム」を無邪気に消費してるミリオタのほうが寧ろ、「ゼロ戦」警察と親和性高そうなのですけえどね。
>
>
> >>昨今の「萌えミリブーム」に苦言を呈すミリオタと同じようなもんで、軍事を「高尚にして神聖なるもの」と考えていないなら、これがこの国のカタチとして受け容れた方が現実に即しているような気がします。

No title

日本を「ジャパン」と表記するのはやめて欲しいですね。これは戦後のGHQの占領政策から広がったインチキ表記ですから

というテンプレートを考えてみたんですが、何をいまさらゼロ戦が問題なのよというのが実感です。
「ニホン」か「ニッポン」かさえ統一出来ていないのに。

No title

「本当は○○って言うのが正しいんだぜ?知ってる?」だったらイケ好かない気障野郎って話で済むんですがね。界隈に持つそれなりの権威に比してずいぶんと大きな権力を持ちたいようで。。。

話は逸れますが、岩波の新赤版863の「横書き登場―日本語表記の近代」に「昔あった【右→左に書く横書き】は横書きじゃなくて【一行一文字の縦書き】だよ。だから右から書いてあるんだよ」(大意)って記述があって目から鱗が落ちましたよ。

No title

神立って人は、海外で零戦乗りのことを「Zero Fighter」と呼ばれているように書いてますけど、普通は「Zero Pilot」とか「Zeak Driver」とかでしょうに?
「ゼロファイター」なんて和製どころか自家製英語というか、安物のアニメか特撮みたいですけどねw

>零戦警察はどうも内ゲバ指向のようです
神立氏は本当に訳がわかりませんよ
氏の知り合いが雑誌とかに間違いだらけの原稿を載せても、ツッコミの1行すら入れませんから
氏が追求する基準とはいったいなんなのか、まったくわかりません
せっかくなんだから神立氏は「笑ってはいけない零戦警察」とか「零戦特高」とか名乗りゃいいんですがw