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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.01
02
CM:3
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12:22
Category : 未分類
 『怒りの葡萄』の対義語が「笑顔のみかん」なら『新宿鮫』の対義語は『目黒のさんま』となるだろう。

 『バーナード嬢曰く』各話には特段の物語はない。作画も原作絵柄をリファインしたものの極端に力は入っていない。動画もあまり割っていない。背景も簡単に済ませている。

 そもそも1話3分半、正味3分である。そこに無理やり会話を、セリフを詰め込んでいる。相当の説明セリフもある。

 だが、見逃すことはできない。なぜなら視聴者自身の物語だからだ。

 真の主人公は神林しおりであり、しおりは視聴者そのものだ。「彼女はオレだ」といった心情から視聴者は没入する。

 そして、しおりが救済される物語でもある。しおりは町田さわ子に救済される。しおりの鬱屈はかつての我々の鬱屈である。自分が捜索している世界の価値。それを肯定する存在だからだ。さわ子はしおりを否定しない。その読書を、世界探索を認めている。

 最後にしおりはさわ子を認める。最終話のしおりは1話のしおりではなく、さわ子も1話のさわ子でもない。笑顔のみかんは12話36分のドラマツルギーのカタルシスである。

 これは凡百のアニメよりも優れる。危機を作為する上でその強度に頼らない。これは優れたものだ。身体的危険や怪力乱神を強調して危機をつくるよりも、日常生活で出来する不安のほうがリアリティは高い。

 そのように語らえることはないが、2016年のTVアニメで最高水準の一つである。

 もちろんその作画、ドラマは今年最高の『甘々と稲妻』に劣る。だが、原作の力を借りずにドラマを作ったことは『甘々と稲妻』を凌ぐ。甘々は原作あってアニメがある。もし原作が劣っていればアニメも劣る。

 もちろん『バーナード嬢曰く』は構造や作劇以外にも惹かれる部分はある。

 なぜ本好きは本を酷使できないか。「雨宿り」でしおりは『カラマーゾフの娘』のノドを心配した。開いた本に頭を落としたさわ子を一喝した。本を痛めることを苦世話とし別に一冊買おうとするのは、本への畏敬である。

 ただ、しおりには不覚悟もある。なぜ書皮をつけないかだ。

 物語上、書名書影を示さなければならないと言うなら、それはリアルを欠くものだ。なぜグラシンに包まないのかを責めるものだ。

 なによりも神回をアニメ化しなかったのは残念だった。なぜ吹奏楽部を蹂躙しないのか、全く不徹底である。

 感動ポルノで頭の弱い吹奏楽部に常々意地悪される図書室の面々。作画と動画と背景しかない連中。口も汚ければ心も汚いユーフォーの京女どもは、さわ子が抱いていた音楽教師への密かな想いを暴露し嘲笑う。

 さわ子の涙についに爆発。しおり、さわ子、すみか、遠藤の四人が納屋に走る、隠したタンクで復讐する。しおりが怒ればタンクが走る!書痴の涙が怒りとなって爆発する!

 大人の御仕着せ吹奏楽に諾々とし、ラッパごときの勝負に浮かれる低偏差値を読書階級が踏み潰す。あの原作神回をスキップしたのは残念だった。

 BD特典となれば、お涙頂戴の感動ポルノ、ユーフォー女の言うがままに感動したと言い放つ安い視聴者ごと踏み潰す。そのシーンは読書階級の喝采を引き起こすだろう。


 2016冬コミのあとがきです
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Comment

非公開コメント

だからセンスないって言ってるのに

No title

>しおりには不覚悟もある。なぜ書皮をつけないかだ。

書店で本を購入した時にかけてもらうブックカバー=書皮だと自分は理解してるんですが
体験上、カバーかけてもらって自分で本の背に書名を書いといても、本がたまってくるとけっこう探すのに手間取るんですよねー。
似たようなカバーばっかりになるからw

結果、元々は本を保護するために「必ずカバーかける派」でしたが、今はやめちゃいました。
神林ほどの書痴ともなると蔵書が数百冊を軽く越えてるでしょうから、自分と同様の理由で「書皮をつけない」のかも——と勝手に想像しております。

最後にどうでもいい話ですが、神林が一人でデレ+ツッコミしまくる「往復書簡回」も読んでて(or観てて)ニヨニヨしてきますねw

Re: No title

学生とか兵隊のときは書皮の掛け直しとか題名書いたりしてましたが忙しくなるとねえ
古本屋で使う透明なグラシンは背表紙読めるけど柔らかでつけにくいし、薄手のクラフトは背表紙はらなければならない
適度に透ける薄手の画仙紙がいいのです、一時期は最高級の紅星牌つかってましたけどやや厚い

中国の本も質が上がっていて高級な本屋も出来ていますから
国営の宣紙廠で書皮専用の紅星牌を漉いてくれれば、それは番外の機械漉きでいいので作ってくれれば買うんですけどね
「RED STAR CARD」だけでアガりますからねえ

> >しおりには不覚悟もある。なぜ書皮をつけないかだ。
>
> 書店で本を購入した時にかけてもらうブックカバー=書皮だと自分は理解してるんですが
> 体験上、カバーかけてもらって自分で本の背に書名を書いといても、本がたまってくるとけっこう探すのに手間取るんですよねー。
> 似たようなカバーばっかりになるからw
>
> 結果、元々は本を保護するために「必ずカバーかける派」でしたが、今はやめちゃいました。
> 神林ほどの書痴ともなると蔵書が数百冊を軽く越えてるでしょうから、自分と同様の理由で「書皮をつけない」のかも——と勝手に想像しております。
>
> 最後にどうでもいい話ですが、神林が一人でデレ+ツッコミしまくる「往復書簡回」も読んでて(or観てて)ニヨニヨしてきますねw