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- » 2023 . 03
Category : 未分類
『魔法使いの嫁』は偽装ダークではないか。
今季は『魔法使いの嫁』が他を圧している。作劇がしっかりした唯一の物語である。進捗とともにチセと周囲の人間関係は変化する。受容され成長して家族になっていく姿がある。
残りは芳しくはない。もちろんすべてが作劇重視である必要もない。物語として弱いから悪いわけでもない。ただキャラクターへの依存が多い。その点で観客を選ぶ。
『妹さえいればいい』や『うまる』はその代表だ。奇矯な登場人物を造り奇矯な行動で気を引く形だ。だがその世界は狭い。ネット、ラノベ、ゲームと若年読者視聴者の想像できる範囲を出ない。さらに奇矯さもその想像範囲での奇矯さでしかない。想定範囲を外れた視聴者にはリアリティが感じられない。だからお歯もあてない。
対して『嫁』の質は群を抜いて高い。もちろん魔法やその周囲世界は実世界そのものではない。だが、その中での人物の行動は実世界の人間の感情行動を反映している。その愛憎の裏には苦悩が揃っている。生老病死の四苦と愛怨ほかを足した八苦が揃っている。
もちろん気になる点もある。無理やり表層的に暗い話としている点だ。しかし、話の内実は明るい。その差異が気にかかる。筋立や設定よりも不思議なものだ。
『嫁』は話を暗くしようと努力している。疎外されたチセの生い育ち。集まる災厄。呪い。残された命。チセの独白もそうだ。その上、悲劇的なシチュエーションをつくりクリフハンガーとする。そもそも演出も絵も音楽も暗めで抑鬱的だ。
しかしその中身は明るい。これはダークな雰囲気を除去すれば明らかだ。買われたチセにとっての環境は改善している。本人は幸福の実感を掴み絶望から希望に転じている。買ったエリアスも感情の発生とともに家族を得る。その上でいえば周囲も救われていく傾向がある。カルタフィルスもいずれは救われるのだろう。
ハーレムものでもある。日本で厄介者と遠ざかられていたチセは英国では途端にモテまくる。特に何も仕掛けもしないのにチヤホヤされる。エリアス、ルツ以下リンデル、幼龍に至るまで。まずは男向けハーレムものの裏返しだ。
これが「無理に話を暗くする必要があったのか?」といった疑問につながる。
もちろんチセを幸せにするために最初に暗い世界に落としたのかもしれない。そこから明るい未来へとハッピーエンド方向に道筋をつける。そそうとも取れる。
それにしても抑鬱的に描き過ぎている。
その抑欝演出に眼が行くあまり、それ以外の違和感は気にもならないほどだ。例えば「なぜ英国なのに日本人のチセが主人公であるか」である。また妖怪描写での日英差だ。日本妖怪は不気味な化物で英国妖怪は姿形が整った妖精である。もちろん前者は「日本読者向けの日本作品だから」だ。後者も英国田舎趣味にハマった結果の「ミーはおブリテンに行くザマス」は承知している。
もちろん『魔法使いの嫁』はマンガ・アニメともに面白い話だ。マンガも早く配信されないものかと心待ちとしている。それは断っておく。
だが、アニメのヘビーローテーションの挙句に物語の没入から離れた時には抑欝的表現と内実の落差や気にかかるのである。
もちろん最新話が出ると再び吾人は物語に没入するのだが。
著者兼編集兼発行人/白坂小梅とは紙一重だよね
文谷数重
2017年冬コミ『F-35Bは正規空母を滅ぼす』の「まえがき」です。
時節モノですのでここで公開します
新刊通販は次の2箇所です
とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/59/79/040030597943.html
メロンブックス https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=323545
今季は『魔法使いの嫁』が他を圧している。作劇がしっかりした唯一の物語である。進捗とともにチセと周囲の人間関係は変化する。受容され成長して家族になっていく姿がある。
残りは芳しくはない。もちろんすべてが作劇重視である必要もない。物語として弱いから悪いわけでもない。ただキャラクターへの依存が多い。その点で観客を選ぶ。
『妹さえいればいい』や『うまる』はその代表だ。奇矯な登場人物を造り奇矯な行動で気を引く形だ。だがその世界は狭い。ネット、ラノベ、ゲームと若年読者視聴者の想像できる範囲を出ない。さらに奇矯さもその想像範囲での奇矯さでしかない。想定範囲を外れた視聴者にはリアリティが感じられない。だからお歯もあてない。
対して『嫁』の質は群を抜いて高い。もちろん魔法やその周囲世界は実世界そのものではない。だが、その中での人物の行動は実世界の人間の感情行動を反映している。その愛憎の裏には苦悩が揃っている。生老病死の四苦と愛怨ほかを足した八苦が揃っている。
もちろん気になる点もある。無理やり表層的に暗い話としている点だ。しかし、話の内実は明るい。その差異が気にかかる。筋立や設定よりも不思議なものだ。
『嫁』は話を暗くしようと努力している。疎外されたチセの生い育ち。集まる災厄。呪い。残された命。チセの独白もそうだ。その上、悲劇的なシチュエーションをつくりクリフハンガーとする。そもそも演出も絵も音楽も暗めで抑鬱的だ。
しかしその中身は明るい。これはダークな雰囲気を除去すれば明らかだ。買われたチセにとっての環境は改善している。本人は幸福の実感を掴み絶望から希望に転じている。買ったエリアスも感情の発生とともに家族を得る。その上でいえば周囲も救われていく傾向がある。カルタフィルスもいずれは救われるのだろう。
ハーレムものでもある。日本で厄介者と遠ざかられていたチセは英国では途端にモテまくる。特に何も仕掛けもしないのにチヤホヤされる。エリアス、ルツ以下リンデル、幼龍に至るまで。まずは男向けハーレムものの裏返しだ。
これが「無理に話を暗くする必要があったのか?」といった疑問につながる。
もちろんチセを幸せにするために最初に暗い世界に落としたのかもしれない。そこから明るい未来へとハッピーエンド方向に道筋をつける。そそうとも取れる。
それにしても抑鬱的に描き過ぎている。
その抑欝演出に眼が行くあまり、それ以外の違和感は気にもならないほどだ。例えば「なぜ英国なのに日本人のチセが主人公であるか」である。また妖怪描写での日英差だ。日本妖怪は不気味な化物で英国妖怪は姿形が整った妖精である。もちろん前者は「日本読者向けの日本作品だから」だ。後者も英国田舎趣味にハマった結果の「ミーはおブリテンに行くザマス」は承知している。
もちろん『魔法使いの嫁』はマンガ・アニメともに面白い話だ。マンガも早く配信されないものかと心待ちとしている。それは断っておく。
だが、アニメのヘビーローテーションの挙句に物語の没入から離れた時には抑欝的表現と内実の落差や気にかかるのである。
もちろん最新話が出ると再び吾人は物語に没入するのだが。
著者兼編集兼発行人/白坂小梅とは紙一重だよね
文谷数重
2017年冬コミ『F-35Bは正規空母を滅ぼす』の「まえがき」です。
時節モノですのでここで公開します
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03:44
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とりあえず撮り溜めてるのをシコシコ見ることにします。