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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2018.02
11
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06:35
Category : 未分類
 件の「自衛官を守る会」の小笠原理恵さんが軍法会議が必要と主張している。

 その主張のキモは「検察が自衛隊員を被疑者として刑法199条の殺人罪で起訴し、日本の裁判所で審理するほかないのです。」(小笠原)といった部分だ。それでアレ右派の連中の情緒に訴えようとしているのだろう。

軍法会議がないと、どのようなことになるのでしょうか。
PKO(国際連合平和維持活動)に派遣された自衛隊の部隊が現地で武装勢力から攻撃を受け、戦闘に巻き込まれた民間人が死傷したとします。こうした場合、PKO部隊の兵士の行為が適切だったかどうかはそれぞれの派遣国の軍法会議によって裁かれることになっていますが、日本には軍司法制度がありません。そうなるとこの事件は、検察が自衛隊員を被疑者として刑法199条の殺人罪で起訴し、日本の裁判所で審理するほかないのです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tachibanaakira/20180205-00080933/
任務で射撃したとしてもそれを隊員個人の殺人罪になる可能性があるって言う段階でダメダメダメってことなのです。
https://ameblo.jp/calorstars/entry-12351362848.html



■ 違法性阻却事由をご存じない
 だが、どうしようもない内容である。「任務で射撃したとしてもそれを隊員個人の殺人罪になる可能性がある」(小笠原)はそれだ。

 違法性阻却事由とは、この場合について簡単に言えば「命令を受け、業務として射撃した場合には殺人罪にはならない」といったものだ。防衛出動や治安出動、あるいは海上警備行動や領空侵犯措置、PKOなら特例法で規定された条件を満たしていれば違法性はない。あるいは警職法で武器を使用する条件を満たしていても違法性はない。

 つまりは軍法会議がないから「任務で射撃したとしてもそれを隊員個人の殺人罪になる可能性があるって言う段階でダメダメダメってことなのです。」(小笠原)はダメダメすぎるということだ。


■ 軍法会議があっても検察官に裁かれる
 また、その行為に違法性があれば隊員はPKOでも当然裁かれる。例えば海外派遣で射撃訓練のあと、薬莢拾いに来た寡婦や子供を撃てば殺人罪となる。

 その場合には軍法会議でも検察官に裁かれる。だから「[軍法会議がなければ]検察が自衛隊員を被疑者として刑法199条の殺人罪で起訴」(小笠原)も誤りだ。

 その検察官もシャバの法曹と変わらない。旧陸海軍であれば法務士官から検察官が指定されるが、かれらはちなみに旧司法試験合格者である。ちなみに志願してくるのは司法省に入れない出来の悪い子が相場とされていた。

 つまりは、軍法会議があっても検察が自衛隊員を被疑者として殺人罪で起訴されるのである。

 この点でも「検察が自衛隊員を被疑者として刑法199条の殺人罪で起訴し、日本の裁判所で審理するほかないのです。」(小笠原)といったアレ右派情緒扇動は誤りである。


■ 軍法会議のいいところは検察官を軍司令官がコントロールできること
 結局は、制度的には何も変わらないということだ。

 唯一変わる点は、検察と訴訟を軍司令官がコントロールできることだ。それにより恣意的な裁判が可能となる。

 特に敗戦前には不告不理が悪用された。軍法会議に士官が掛からない理由はほぼそれだ。軍司令官の指揮下にある検察官が起訴しなければ裁判にならない。また罪状をコントロールすれば微罪にできるからだ。


■ 薬莢拾いを射殺して「業務中の事件だから日本の軍法会議に」とかを望むんだろ
 小笠原さんはこのあたりを承知しているかどうかは怪しい。言っていること全てが聞きかじりで情緒に訴える話ばかりである。それほどの知識があるとも思えないからだ。

 だが、知恵をつけているあたりはそれを狙っているのかもしれない。

 いずれにせよ「自衛官を守る会」のトップがヨイショしている。それを見ると「自衛官をどう守るつもりなのか?」と怪訝となるものだ。海外で薬莢回収の女子供を殺した咎人に「業務中の事件だから日本の軍法会議に」や「執行猶予をつけろ」とか難癖をつけて守れるような制度がほしいのだろう。


■ まー、入会権も知らないみたいだしね
 小笠原さんは実際にそういうと思うよ。「演習場に入ってきたから射殺した」とか言ってね。

 なんせ入会権も知らない程度だからね。
自衛隊は広大な演習場をもっていますし、フェンスで囲っていてもそれを超えて山菜などをとる人たちがいると聞きます。その人達を処罰したりする権限はありません。演習場のフェンスを人が超えられない強固なものにする予算もありません。監視カメラなどを設けて24時間監視するにも予算とそれなりの人員が必要です。そんな余分な予算は自衛隊にはありません。
「オークションで自衛隊の武器が売られている謎」


 地元住民には山に入って山菜や飼料、肥料、燃料を取る権利がある。従前からそのような採取を行っていた場合、国が土地を買って演習場としても権利は残る。囲い込むにしてもアクセスを許す形としなければならない

 それを「フェンスで囲っていてもそれを超えて山菜などをとる人たちがいると聞きます。その人達を処罰したりする権限はありません。」(小笠原)と権利がないように書いている。「処罰できない」ではない。それは権利であることを理解していないのだ。


■ 「日本国の財産である薬莢を守るために犯人を射殺した」とか言い出すよ
 その程度の御仁である。薬莢拾いを射殺しても「日本国の財産である薬莢を守った、薬莢は卑金属であり高額」や「薬莢は武器の一部であり武器等防護に相当」といいだすのだろう。あるいは「非文明的な○○国の非人道的裁判には掛けられない」とかね。顔を見てもそういうことを言いそうなお面だものね。
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Comment

非公開コメント

軍クラの連中、憲法無視の考えが当たり前な、無法者軍団のわりには軍法会議だけは有り難がってますね。
自分が裁く側だと勘違いしてるんでしょうかね。

違法性阻却事由

PKOが事例に上げられているようなので、国連の議決による武力行使が違法性阻却事由に該当するかに絞って話せば。

安保理決議をもって多国籍軍が対象国に侵攻するのは、 国連憲章第2条第4項の武力不行使条項に抵触し国際法違反ではないか、という議論が交わされたことがあります。

憲章第42条にいう兵力による強制措置が発動されていれば、決議の拘束力をもって武力行使の違法性阻却事由が発生するという「積極説」で押し切ってはいるが。
国際法理的には必ずしもすっきりとした解決を見ていません。

そのため、1990年のイラクのクウェート侵攻を発端とする多国籍軍に安保理決議第678号で武力行使権限を与えた際にも、国連憲章の根拠条例をこれと明記できなかった経緯があります。

まして、国連平和維持活動(PKO)は、憲章の6章と7章の間というくらい、直接の根拠規定がなく。
上記の第42条説を応用して、武器の使用は自衛と任務妨害などに限り、自衛権行使に際しての「違法性阻却事由」とみなす。
現実として、そうやって経験と慣行によって運用しなければ平和維持活動の成果もあげられない、というなかで実績を重ねているのが実態です。

>その行為に違法性があれば隊員はPKOでも当然裁かれる
にしても、たとえ「国内刑法が正当防衛を違法性阻却事由とする」場合でも、「国際法上も(自動的に)その違法性が阻却される」がオールマイティーかどうかは疑義が残っています。
そうしたあいまいさ故、PKO派遣現地部隊の苦労があるわけです。

もちろん日本国が、国際法上認められた自衛権を行使する場合は、違法性阻却事由が発生する。
しかし、このような難しい話をしなくても、日本国憲法第76条が特別裁判所(軍法会議はその一つ)の設置を封じているのですから。
軍法会議の要不要論については言うまでもなく。

No title

> しかし、このような難しい話をしなくても、日本国憲法第76条が特別裁判所(軍法会議はその一つ)の設置を封じているのですから。

yakozen888さん、

アレ総理が改憲に固執するのは「大好きなおじいちゃんの悲願」というだけでなく、かつての日本軍や今の米軍みたく「悪さをしても司令官の胸三寸でどうにでもできる軍法会議の復活」を狙う自衛隊幹部が後押ししているからとか?(呆)

No title

> 旧陸海軍であれば法務士官から検察官が指定されるが、かれらはちなみに旧司法試験合格者である。ちなみに志願してくるのは司法省に入れない出来の悪い子が相場とされていた。

法曹有資格者の自衛隊員って、いったい何人いるんでしょかねえ。

実際に軍法会議を創設するんだったら、法務官要員としてかなりの数の法曹有資格者を新規採用しないといけませんな。

軍法会議は

お邪魔します。
 軍法会議は「敵前逃亡をした兵士を死刑にするため」にあると聞いた事があります。「命あっての物種」では兵士に戦闘をさせられないが、だからと言って「公務員の職務放棄」程度では死刑にできないためと。つまり軍法会議は「軍隊内秩序を保つための手段」ですから、軍隊以外の人間が関係した件を扱うのは筋違いではないかと思います。「当事者の片方とだけ繋がった者の裁き」の信頼性は低いでしょうから、「身びいきになるか、それとも身びいきと批判されたくなくて必要以上に厳しくなるか」で量刑のバランスが取れなくなるかも知れません。

No title

被本塁打大王さん
>実際に軍法会議を創設するんだったら、法務官要員としてかなりの数

ご存知とは思いますが、旧軍には法務隊があり法務将校は帝大法科から採用していました。
海軍は「短期現役制度」で高文合格者、法曹出身者、さらには帝国大学の途中学徒まで採用して、人材確保には同じく苦労したようです。

ブロガー(志望)さん
敵前逃亡懲罰だけであれば、野戦憲兵、督戦隊が後ろで拳銃を構えていれば、軍法会議は不要かと。
いえ、冗談です。

第二次大戦中の米軍では敵前逃亡の最高刑は死刑でしたが、
軍法会議で実際に死刑判決を受けたのは数えるほどしかなくて、
本当に死刑になったケースは1件だけだったと聞きます。
軍法は戦場で兵士を縛るものであったと同時に、通常の民放や刑法から兵士を免責するものでもあったとかなんとか。

No title

>ブロガー(志望)さん

陸軍刑法

http://pddlib.v.wol.ne.jp/rules/etc/rikugun.txt

逃亡に関する規定は7章75条と76条。
かなりの重罪ではあるけど、敵前であっても有期刑の規定あり。
一番重いのは叛乱ですね。当たり前か。

陸軍軍法会議法

https://ja.wikisource.org/wiki/%E9%99%B8%E8%BB%8D%E8%BB%8D%E6%B3%95%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E6%B3%95

1章に裁判権の対象者の規定を並べておりますが、主に陸軍刑法によります。しかし5条と6条はたいがい酷いことをさらっと書いておりますな。

というわけで、(敵前)逃亡した軍人についての規定もあるけれども、上記URLの内容からは「敵前逃亡をした兵士を死刑にするため」とは言えないでしょう。
どこでお聞きになったお話なんでしょうか。

お教えいただきありがとうございます。

再びお邪魔します。
 お教えいただきありがとうございます。先の投稿は既に述べたように「『命あっての物種』を認めて、兵士に戦闘をさせられるか」でしたが、「兵士の敵前逃亡を、他の公務員の職務放棄と同等の扱いにしないため」と考えた方が良さそうに思えます。

No title

もし軍法会議があったら先日のヘリ墜落事故の真相究明や責任者への処分等はどうなるんでしょうかねえ。

真相は闇の中、責任追及もうやむや、なんてことになりそうで怖い。

>ブロガー(志望)さん

失礼ながら不思議なご理解ですね。
戦前体制では陸軍(海軍)刑法というものがあり、その運用のために一般司法から切り離した特別法廷が軍法会議なんですよ(時系列ではなく概念上の順序。念のため)。

もしどうしても「命あっての物種」を罪として裁きたいなら、自衛隊刑法にようなものでも定めて現行の裁判システムで取り扱えば済むだけの話です。
特別法廷でなければならない理由は特にない。
身内を庇いたいだけでもなければね。

先の投稿の後

三度お邪魔します。
 先の投稿の後自分で色々考えて、「命あっての物種」というのは少しずれていたかなと思えてきたので、この件に関してはもう少し自分で考えてみようと思います。ですからこれ以降は文谷氏の記事への論評等を期待します。再考の機会が与えられた事は幸運だったと思います。

No title

世が世なら統帥権干犯!とか政治家をののしってそうな人って軍クラとか多そうですよね。

No title

自衛隊にも「軍法会議」が必要なこれだけの理由
https://diamond.jp/articles/-/171103

小笠原氏はこの話を曲解してるような気がする