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- » 2023 . 10
Category : 未分類
日本軍の将兵は中国での乱暴狼藉ではまず裁かれない。
そもそも起訴されない。軍法会議は日本軍が日本軍人を裁く。日本軍内や日本軍人への犯罪は困るから一生懸命に裁く。でも、戦場となった中国で虐殺をしても強姦をしても強盗としても日本軍も日本人も困らない上、部隊や日本軍、日本の悪評になるから一切起訴しない。
仕組からして軍隊に甘い。軍法会議は軍内の法務士官が検事役となる。起訴するしないは日本軍の都合で決まる。さらにいえば検事が検事総長の指揮監督をうけるように法務士官は軍司令官の指揮監督を受ける。法務士官が起訴すると決めても司令官がNGをだせばオーバーライドされる。
裁判は不告不理である。検事が起訴しなければ裁判にはならない。またその犯罪で起訴しなければ裁判も対象としない。以上は軍法会議制度の常識だ。
だから日本軍の非行記録に占領地の乱暴狼藉は載らない。ネトウヨは日本軍が軍機厳粛だった証拠だと言い出すのはこのあたり全く無知だからだ。
そして、それは中国側にも指摘されている。彭程さんの『軍事歴史研究』の記事がそれである。*1
これは「掃討」に従事した日本軍非行記録の紹介である。58師団が新四軍と戦った際の記録を提示したあとの最後の余論として次のように既述している
■ 家屋全焼くらいもみ消せばいいのにね
まあ軍法会議制度を抜きに説明するとそうなるということだ。
そして、その記事の中を見るとまあ大したことはない。一等兵が酔っ払って中隊長をぶん殴ったとかお金ちょろまかしたといった話。前者は当たり前だが軍法会議は回避されていて訓戒で済んでいる。まあ自衛隊でもよくあるどうしようもない話。
厳しい話は自傷行為。映画の二百三高地で出てきた右手の指を飛ばすアレだ。あとは夜間交戦中にはぐれて彷徨ううちに部隊に帰る気力がなくなった兵隊。これらは軍法会議送り方である。読んでいて気の毒でしょうがない。
ただ、面白い話はあるもの。それは失火の罪なんだが、一等兵三人が仲良くお酒を飲んでいた。アルコール濃度が高い白酒4合だから業務用ストロングゼロどころの比ではない。泥酔してぶっ潰れる。そして灯油ランプの火を消すのを忘れて、それが木造紙張りの現地接収の建屋に引火し、都合悪いことに水源まで1kmあるので、おそらく全焼したといった話。
でも誰も死んでいない。このあたりで一種の笑い話だ。火災部署で在隊者は一味同心して物件を搬出。ガスマスク11ヶを除けば武器も無事、損害も300円程度でしかない。思想性もないし、喧嘩でもない、軍規への挑戦でもない。中国人民も死んでいないし、家屋接収はともかく非人道、非合法の行為の影響はうけていない。
でも3人は営倉7日。よほどアレでクソ真面目な指揮官が罰を与えたのだろう。本来はもみ消すべき案件だからだ。*2
そして、とばっちりは留守隊長の少尉さん。監督責任で営倉3日を貰っている。まあ責任といえば責任なんだが、耐燃性や防火用水が準備できないところでは搬出成功、人的被害なしでむしろ褒めてもよいはずである。
あるいはこの少尉さんが上級部隊にホントのことを言ったせいでもあるかもしれない。「新四軍の襲撃と判断して飛び起きたところランプが転がって引火」とでもいっておけば新四軍のせいにできただろうし、新四軍も日本軍の営舎を焼く戦果を挙げたことにできてWin-Winだと思うけどね。
*1 彭程「1942年日軍第五十八師団在与新四軍作戦期間士兵内部違反報告」『軍事歴史研究』135(国防大学国家安全学院,南京,2019)pp.114-124
*2 あるいは軍法会議を回避するための便法かもしれないが
そもそも起訴されない。軍法会議は日本軍が日本軍人を裁く。日本軍内や日本軍人への犯罪は困るから一生懸命に裁く。でも、戦場となった中国で虐殺をしても強姦をしても強盗としても日本軍も日本人も困らない上、部隊や日本軍、日本の悪評になるから一切起訴しない。
仕組からして軍隊に甘い。軍法会議は軍内の法務士官が検事役となる。起訴するしないは日本軍の都合で決まる。さらにいえば検事が検事総長の指揮監督をうけるように法務士官は軍司令官の指揮監督を受ける。法務士官が起訴すると決めても司令官がNGをだせばオーバーライドされる。
裁判は不告不理である。検事が起訴しなければ裁判にはならない。またその犯罪で起訴しなければ裁判も対象としない。以上は軍法会議制度の常識だ。
だから日本軍の非行記録に占領地の乱暴狼藉は載らない。ネトウヨは日本軍が軍機厳粛だった証拠だと言い出すのはこのあたり全く無知だからだ。
そして、それは中国側にも指摘されている。彭程さんの『軍事歴史研究』の記事がそれである。*1
これは「掃討」に従事した日本軍非行記録の紹介である。58師団が新四軍と戦った際の記録を提示したあとの最後の余論として次のように既述している
発現一个奇怪現象:日軍対其士兵常年在外(尤其是対当地居民)犯科的厳重罪行諸如焼殺搶掠等、進行記載並形成的報告極少[中略]日軍十分重視其対内的紀律建設、意在借此保持戦闘力、而極度忽視対外的紀律建設、甚至対他們来説、其士兵対中国人民犯罪、根本不是在”違反紀律”。
彭(2019)p.124
■ 家屋全焼くらいもみ消せばいいのにね
まあ軍法会議制度を抜きに説明するとそうなるということだ。
そして、その記事の中を見るとまあ大したことはない。一等兵が酔っ払って中隊長をぶん殴ったとかお金ちょろまかしたといった話。前者は当たり前だが軍法会議は回避されていて訓戒で済んでいる。まあ自衛隊でもよくあるどうしようもない話。
厳しい話は自傷行為。映画の二百三高地で出てきた右手の指を飛ばすアレだ。あとは夜間交戦中にはぐれて彷徨ううちに部隊に帰る気力がなくなった兵隊。これらは軍法会議送り方である。読んでいて気の毒でしょうがない。
ただ、面白い話はあるもの。それは失火の罪なんだが、一等兵三人が仲良くお酒を飲んでいた。アルコール濃度が高い白酒4合だから業務用ストロングゼロどころの比ではない。泥酔してぶっ潰れる。そして灯油ランプの火を消すのを忘れて、それが木造紙張りの現地接収の建屋に引火し、都合悪いことに水源まで1kmあるので、おそらく全焼したといった話。
でも誰も死んでいない。このあたりで一種の笑い話だ。火災部署で在隊者は一味同心して物件を搬出。ガスマスク11ヶを除けば武器も無事、損害も300円程度でしかない。思想性もないし、喧嘩でもない、軍規への挑戦でもない。中国人民も死んでいないし、家屋接収はともかく非人道、非合法の行為の影響はうけていない。
でも3人は営倉7日。よほどアレでクソ真面目な指揮官が罰を与えたのだろう。本来はもみ消すべき案件だからだ。*2
そして、とばっちりは留守隊長の少尉さん。監督責任で営倉3日を貰っている。まあ責任といえば責任なんだが、耐燃性や防火用水が準備できないところでは搬出成功、人的被害なしでむしろ褒めてもよいはずである。
あるいはこの少尉さんが上級部隊にホントのことを言ったせいでもあるかもしれない。「新四軍の襲撃と判断して飛び起きたところランプが転がって引火」とでもいっておけば新四軍のせいにできただろうし、新四軍も日本軍の営舎を焼く戦果を挙げたことにできてWin-Winだと思うけどね。
*1 彭程「1942年日軍第五十八師団在与新四軍作戦期間士兵内部違反報告」『軍事歴史研究』135(国防大学国家安全学院,南京,2019)pp.114-124
*2 あるいは軍法会議を回避するための便法かもしれないが
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Comment
01:21
きらきら星
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けっきょく警務も連隊長も来なかったけど。
さすがに次の定期異動ではどっかに行ったなあ。定年まで勤め上げたんだろうか。
No title
01:24
岩見浩造
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まぁ特定イシュー以外では支持賛同する気ないので構わんですがね。
勿論、こういう話を聞かされると、本土決戦なんて真面目に考えてる輩とは組みたくないなぁとは思います。自宅燃やされたくないし。
11:21
被本塁打大王
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ネットでよく見かける下記のフレーズを思い出しましたわ↓
「俺は嫌な思いしてないから」
No title
07:57
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Re: No title
12:36
文谷数重
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だから、研究的にはちょっと。失礼だけど研究ノートとしても評価は高くはないかなとは思います。
> 大陸の文書館にある旧軍史料を利用した研究でしょうか。まだまだ大陸には日本で資料集として刊行されてない旧軍の文書史料とか残ってそうで興味をひきますね。
軍法会議の目的はあくまで「軍隊内秩序の維持」
17:10
ブロガー(志望)
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軍法会議の目的はあくまで「軍隊内秩序の維持」ですから、それ以外の事に対してはそれ程有効ではないように思われます。「占領地での乱暴狼藉」どころか「軍隊内の私的制裁(イジメやリンチ)」も有効に阻止できなかったのではないかと。欧米は兎も角、一神教の伝統も歴史的視野も無く、専ら直接的な人間関係で秩序を構築してきた日本に於いてそれは顕著となり、その結果として山本七平が「旧陸軍の人間の大部分は普通の人のはずなのに、どうみても普通でない一握りの人間のやりたい放題になっている」といった事を言った旧軍特有の秩序が作られた(私的な力関係で構築された秩序を擁護する側に回った)のではないかと思われます。今の学校でのイジメ他及びそれへの当局の対応や、NGT48の山口真帆の実質追放を見ても、日本は本質的には何も変わっていないのではないかと。
「裁き」は基本「直接的な利害関係の無い第三者」が行うものです。軍隊等でも「第三者による審判」といったものが必要ではないかと思ったりもします。
余談ですがホリエモンロケットが三度目の正直で宇宙まで上がりました。「何十年も前に既に成された事」とはいえ、経験者とかからの直接の指導無しで「三回目で成功」は早いのではないかと思ったりもします。尤もこれから先の方が遥かに長いでしょうし、「ようやくたどり着いても、そこには既に誰もいない。」のかも知れませんが。
No title
02:29
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編集
小林源文氏の漫画のような独ソ戦ものや、冷戦期に書かれたトム・クランシーの小説などではNKVD(後のKGB)やコミッサール(政治将校)は「獅子身中の虫」的な悪役として描かれていましたけど、満州でソ連兵に襲わそうになった赤塚不二夫氏の母親を助けたのも「カーベー(NKVD)」だったという証言を聞くと、弊害はあれど軍隊がお痛しないよう見張っておくシステムとしては全否定できるか微妙だと思うんですよ(速水螺旋人氏の靴ずれ戦線などを読んだ影響もありますけど)