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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2011.11
25
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01:55
Category : アニメ評
 アニメ『アイドルマスター』第21話「まるで花が散るように」について感想ですが、ネタバレを含みますので注意してください。



 アイマス、響エピソードも神回でした。原作では洲崎パラダイスにあり、3月10日に空襲で焼かれた七六五楼が、吉原遊郭に移り、被災を5月25日に先延ばした理由が明らかになったといえるでしょう。予告編で示された響の情人の戦死から、いわゆる鬱展開であると覚悟したのですが、そうにはなりませんでした。

 戦争が終わったら借金を肩代わりして響を身請けする。そう響と誓った厚生官僚が沖縄県庁に転勤する。そこから物語は始まります。響の良人は沖縄を救うため、地方長官の引き抜きに喜んで応じて沖縄に向かうのです。すでに比島は陥落しています。次が沖縄であることは明らかでした。「ヤマトの人間がウチナーのために死ぬことはない」「一緒に逃げよう」と駆落を願う響に、持って行っても役に立たないだろうと、貯金通帳と印鑑を響に預ける男。
 そして、沖縄戦が始まります。士官級の客から寝物語に聞いた沖縄の戦況は、報道とは異なり絶望的でした。そして、頼まれたという内務省の同期から、男が知事と共に戦死したと知らされます。沖縄の戦況を心配されても、気丈に口癖の「なんくるないさ」を連発していた我那覇響は、作中で初めて慟哭します。

 物語がここで終われば鬱展開だったのでしょう。
 しかし、Bパートから展開も変わります。沖縄失陥後、故郷を喪った沖縄徴兵者達が、沖縄第一の芸者であった響のもとに集まり出します。男を喪った響は、客も取らずに見世前で三線を弾きます。東洋一とまで言われた芸妓、竜宮小町を擁する七六五楼の名妓である響が、路上で三線を引く。そこに行く先も持たない、金もない沖縄徴兵者が集まりだします。
 響は芸者です。路上での演奏や、手踊は鑑札違いの御法度です。でも、響の情婦の戦死や、沖縄の事情を知る皆は何も言えません。
 我那覇響は故郷喪失者のアイドルになったのです。外出日や上陸日には、東京はおろか横須賀からも兵隊や職工が集まります。海没と救助により東京に仮置きされた若い陸兵や、40を超えて徴兵され、第二艦隊で生き残った海軍老年兵、国民徴用令で造船所で働く職工たち。僅かな合成酒と干物を分け合う野外劇ですが、響が生育った那覇の辻町遊郭での遊びを見で、そしてその歌を聞いて皆が涙するのです。

 そしてある日、若い陸兵が、熨斗の効いた空中勤務者の姿で七六五楼に来る。「東京も楽しかったです。でも、明後日には沖縄に帰ります」と皆に挨拶します。すでに沖縄戦も終盤です。誰もが無言の中で兵隊は「響さまは自分の阿媽観音さまでありました」と別れを告げます。それを聞いた響は他の兵隊に今日は終わりだと告げて、久々に年下の兵隊を客に取ります。

 事情を知った竜宮小町のあずさから、馴染みの重臣※が来た時だけ使う特別室を譲られる二人。いつもは格式や支払いに口うるさい遣手の小鳥と律子も何も言わない。半ば闇社会に生きる女衒のプロデューサーPも蛇の道は蛇と闇の酒と御馳走を準備する。

 明かりが消えたあとで、本当は死にたくないと泣きじゃくる兵隊。どんなことをしても生きて帰って来いと、捕虜になっても死ぬなとたしなめる響。そして生きていればこんなにいいことがあるよと体で慰めます。

 翌日は生憎の小糠雨。響は七六五楼と大書した番傘を兵隊に差し渡します。巡邏していた憲兵曹長が傘を差す兵隊を大喝し、殴りとばそうとしますが、それを響が唐手で突き飛ばす。「兵隊さんは明日、飛行機で沖縄に帰るんです、ヤマトには、東京にはもう二度と来られないから最後に遊んでいったのです」というと、曹長も「そうか、頑張れ」と標準語で励ましたあとで、そのまま沖縄の島言葉で、おそらく曹長の本音であろう言葉を一言二言…あとは、EDのとおりです。

 永井荷風原作『アイドルマスター 日陰に咲く花』にはないエピソードで、左右両方から叩かれた回ですが、脚本を書いた野坂昭如の面目躍如と言えるでしょうね。
 今期『アイマス』はオリジナル回も素晴らしい物ばかりです。
 やよい回「大好きなもの、大切なもの」では、山本薩夫が高槻家に東京の貧民生活を描き、独占資本家に生まれた伊織との対比で戦前日本資本主義の格差を印象づけました。
 五木寛之脚本の雪歩回も、学徒出陣で戦死した異母兄への追憶、陽の目を見なかった兄との小さな命といったエピソードを挿入し、客を取っても体を許さない雪歩の「男嫌いか穴なしか」を上手に処理しています。いや、雪歩回は、キレイ事を並べた『ドリームクラブ 嬢王物語』での「ピュアな純愛」よりもよほど「純愛」ですねえ。

 なんにしてもアイマスは最終話まであと五話ですが、なかなか眼が離せません。オススメです



※ 「戦時下に自家用車を使った花柳界通い」ですので、風流で知られ、エノコ・ヌレマラと綽名された重臣(本名を秘す)がモデルなんでしょうね。
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