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- » 2023 . 10
Category : ミリタリー
中国で刊行されている『航空知識』10月号※、その見返し(表紙1-4とすれば、表2)に、中国海軍が保有する早期警戒ヘリが出ている。
Ka-31早期警戒型である。ハコフグに似た四角い機体だが、その底面に平らなAEW用レーダを折りたたんでいる。固定翼早期警戒機を艦載運用できないため、苦肉の策なのだが、このレーダ、キャプションを見るかぎり、性能に疑問符がつく。
Ka-31早期警戒型は、空中目標を最大100-150kmで探知する、とあるが、レーダ性能としては低めである。『航空知識』によれば、Ka-31早期警戒型はロシア製E-801MEレーダが装備している。このE-801レーダ、面積は6平方メートルと比較的大きい。レーダ性能は、空中目標を最大100-150km、対水上目標最大250kmで探知、同時追尾可能数20としている。
「最大100-150km」は、空中目標最大探知距離として短い。水平線から上にある目標を探知する距離としては短く見えるのである。40年以上前に作られた、戦闘機搭載レーダと同程度に過ぎない。比較対象として妥当であるかどうかはともかく、F-14に搭載していたAWG-9は空中目標を最大200km、同時に24目標を探知できた。数字的にこのあたりと同等以下である。
また、水平線内側にある低空目標を探知する距離としても、褒められたものではない。能力的には、フォークランド紛争でとりあえず作られた、30年前のシーキングAEWを超える能力ではない。シーキングAEWは、ニムロッド哨戒機に搭載するサーチウォッチャ捜索用レーダについてモードを切り替え、搭載している。このサーチウォッチャであっても、低空目標は150kmで探知できるとしている。※※ 同時追尾数も空中目標で16とされており、水上目標であれば40目標を追尾可能とされている。
乱暴だが、E-801レーダは、1970年代に作られたサーチウォッチャ・レーダと同等性能しか発揮できていない。空中目標探知距離、探知数だけではなく、水上目標探知距離も250km+と概ね同等である。サーチウォッチャ・レーダは、シュノーケルであれば50km、小型艇であれば100kmを探知限界としている。
中国で刊行される軍事雑誌は、概ね高めに性能を誇示する傾向がある。だが、このKa-31に関しては、レーダ能力は凡庸、あるいは低めで書かれている。これは、実際に性能が低いか、そもそもの水準を知らないで書いた結果である。
仮にE-801が『航空知識』キャプション並の性能が出たとしても、能力はシーキングAEW初期型同等と見るべきである。
また、その性能を発揮するため、6平方メートルものレーダ反射板を要する点についても、ソ連/ロシア、中国系アビオニクスがそれほど高い水準ではないことを示している。
もちろん、Ka-31早期警戒型であっても無きに勝る万々である。AEW実現は、中国海軍、特に空母運用上では相当の前進となる。
しかし、AEWとして、滞空時間や前方進出に難がある。原型であるKa-27/29での航続距離と巡航速度からすれば、3時間滞空することは難しい。実働2時間程度の警戒が限界だろう。おそらく中国空母は、搭載機数の少なくない数をKa-31で食われる。それを嫌い、Ka-31搭載を抑制すれば経常的なAEWは確保できない。
※『航空知識』2011年10期(航空知識雑誌社,北京)p.2
※※ Freedmann "The Naval Institude guide to World Naval Weapons System 1991/1992 "(USNI,Maryland,1991)pp.141-142.
Ka-31早期警戒型である。ハコフグに似た四角い機体だが、その底面に平らなAEW用レーダを折りたたんでいる。固定翼早期警戒機を艦載運用できないため、苦肉の策なのだが、このレーダ、キャプションを見るかぎり、性能に疑問符がつく。
Ka-31早期警戒型は、空中目標を最大100-150kmで探知する、とあるが、レーダ性能としては低めである。『航空知識』によれば、Ka-31早期警戒型はロシア製E-801MEレーダが装備している。このE-801レーダ、面積は6平方メートルと比較的大きい。レーダ性能は、空中目標を最大100-150km、対水上目標最大250kmで探知、同時追尾可能数20としている。
「最大100-150km」は、空中目標最大探知距離として短い。水平線から上にある目標を探知する距離としては短く見えるのである。40年以上前に作られた、戦闘機搭載レーダと同程度に過ぎない。比較対象として妥当であるかどうかはともかく、F-14に搭載していたAWG-9は空中目標を最大200km、同時に24目標を探知できた。数字的にこのあたりと同等以下である。
また、水平線内側にある低空目標を探知する距離としても、褒められたものではない。能力的には、フォークランド紛争でとりあえず作られた、30年前のシーキングAEWを超える能力ではない。シーキングAEWは、ニムロッド哨戒機に搭載するサーチウォッチャ捜索用レーダについてモードを切り替え、搭載している。このサーチウォッチャであっても、低空目標は150kmで探知できるとしている。※※ 同時追尾数も空中目標で16とされており、水上目標であれば40目標を追尾可能とされている。
乱暴だが、E-801レーダは、1970年代に作られたサーチウォッチャ・レーダと同等性能しか発揮できていない。空中目標探知距離、探知数だけではなく、水上目標探知距離も250km+と概ね同等である。サーチウォッチャ・レーダは、シュノーケルであれば50km、小型艇であれば100kmを探知限界としている。
中国で刊行される軍事雑誌は、概ね高めに性能を誇示する傾向がある。だが、このKa-31に関しては、レーダ能力は凡庸、あるいは低めで書かれている。これは、実際に性能が低いか、そもそもの水準を知らないで書いた結果である。
仮にE-801が『航空知識』キャプション並の性能が出たとしても、能力はシーキングAEW初期型同等と見るべきである。
また、その性能を発揮するため、6平方メートルものレーダ反射板を要する点についても、ソ連/ロシア、中国系アビオニクスがそれほど高い水準ではないことを示している。
もちろん、Ka-31早期警戒型であっても無きに勝る万々である。AEW実現は、中国海軍、特に空母運用上では相当の前進となる。
しかし、AEWとして、滞空時間や前方進出に難がある。原型であるKa-27/29での航続距離と巡航速度からすれば、3時間滞空することは難しい。実働2時間程度の警戒が限界だろう。おそらく中国空母は、搭載機数の少なくない数をKa-31で食われる。それを嫌い、Ka-31搭載を抑制すれば経常的なAEWは確保できない。
※『航空知識』2011年10期(航空知識雑誌社,北京)p.2
※※ Freedmann "The Naval Institude guide to World Naval Weapons System 1991/1992 "(USNI,Maryland,1991)pp.141-142.
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