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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.01
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Category : ミリタリー
 アメリカはイランの機雷に対抗できるのかね。アメリカとの緊張を受けて、イランも「戦争になったらホルムズ海峡を封鎖する」と言っている。実際にやるとなると、機雷を敷設するイメージなのだろう。その時、対機雷戦を冷遇していた米海軍は対抗できるのかね。

 イラン原油禁輸措置で、アメリカとイランが緊張している。アメリカだけではなく、EUも原油禁輸に同調する様子である。日本もお付き合いで輸入量を減らすらしい。

 実際に戦争になるかといえば、そうとは思えない。「緊張しつつある」とはいうものの、アメリカとイランの緊張状態は30年継続している。また、戦争に疲れたアメリカが、本気で戦争するとも思えない。そして、イランも本気では衝突を望んでいない。イラン現体制も、立場上、アメリカとの対立を避けるわけにはいかないが、イライラ戦争とは時代が違う、それなりに喪うものもある。多少の摩擦や小規模な衝突があっても、エスカレーションするとも思えない。

 しかし、イランは、アメリカに対して強硬発言を繰り返すしかない。イラン現体制そのものがアメリカとの対立の産物である。ガチガチに固めたイラン内政も、アメリカによる外圧の結果である。反米で成り立っている以上、内心どう考えていようが、対米強硬発言以外はできない。

 その対米強硬発言の一環が、ホルムズ海峡封鎖発言である。砲やミサイル、高速艇や潜水艇等も使用されるのだろうが、もっとも有効な手段が機雷である。ホルムズ海峡は比較的狭い航路収束点であり、機雷敷設に向いている。

 機雷は効率が良い。ホルムズ海峡幅60kmは、感応機雷100個程度で構成される機雷線※を設定すれば、10%航路幅の10%が危険域になる※※される。この機雷線を3条(300個)も引けば、触雷率は30%近くになる。分かりにくいように100個程度ランダムに敷設して、合計400個も敷設すると、ホルムズ海峡はしばらく使えなくなる。

 さて、イランが感応機雷を敷設したとして、米海軍は対抗できるかね。米海軍は、機雷を敷設する方に熱心であり、対機雷戦は等閑にしていた。その対機雷戦も、上陸戦に先立った、上陸海岸での、短時間での大まかな機雷処分を目的にしている。そのため航空掃海を維持している。だが、航空掃海にできることは、なんでも感応するダボハゼ機雷を発火させる程度である。商船を通すために、完全に機雷を処分するような戦力ではない。

 アメリカは掃討艇を14隻しか持っていない。地道に海中を探査して、機雷を見つけて破壊できる掃討艇は必須であるが、冷戦以降一気に減らしてしまった。この14隻にしても、掃討艇を機雷処分に専念させられればいいが、実際には、重要艦船への先導にも使う必要がある。こと機雷が敷設されれば、アメリカは対機雷艇不足に悩むだろう。

 救いは、ホルムズ海峡は水深が大きいことである。ホルムズ海峡は、おおむね-60mより深い。このため、使えるのは繋維機雷となる。厄介な沈底機雷は使えない。旧軍資料によれば、-60mを超える深さでは、沈底機雷は発火しても大きな被害はでないとされている。繋維機雷であれば、感応でも、触発でも見つけやすいため、機雷掃討も容易である。また繋維掃海でも対抗できる。これなら米海軍でもできる。おおむねペルシア湾でも、イラン側は水深が大きい。まず、沈底機雷は使われない。

 しかし、機雷の数が多くなるとどうしようもない。繋維機雷への掃海や掃討であれば、飛行機、補助艦船、漁船でも可能である。だが、事前の機雷捜索や、その後の処分確認には掃討艇は必須である。また、重要艦船への先導も掃討艇でなければできない。

 イランが100個以上の繋維機雷を使用したら、おそらく米海軍が持つ対機雷戦戦力では飽和する。この時には、日本や西欧の手を借りるしかない。

 仮に使用機雷が沈底機雷となると、日欧への要請も早期に、且つ大規模なものになるだろう。ペルシア内湾南側(26度30分以南)や、西側は相当浅い、おおむね-40mもない。沈底機雷敷設も可能である。イランにとって敷設が厳しく、アラブの敵、世界の敵にもなるけどね。でも、仮にデタラメに沈底機雷を敷設されたら、米海軍はお手上げではないかな。

 米対機雷戦戦力は、必要な時にはたいてい不足している。朝鮮戦争でも、紅海危機でも、中東危機でも、湾岸戦争でも、アメリカはその場になって対機雷戦力不足に気付く。米軍は高価なハイテク兵器には金突っ込むけど、対機雷戦には金を突っ込まない。そして、対機雷戦戦力に困ると日欧に泣きつく。世界でもっとも掃討艇を保有している日本、そして英仏独伊蘭以下の欧州に泣きつくしかない。

 掃討艇は偏在している。世界にある掃討艇は207隻、うち日米欧が158隻を占める。日本24隻、アメリカが14隻、欧州140隻。欧州は、西欧8ヶ国80隻、非西欧NATO加盟国30隻、スウェーデン7隻、フィンランド3隻。※※※ 技術的に優れている、掃討技術に習熟しているのは、西欧(英仏独蘭あたりか)が一番で、最近、日本がそれに次ぐ地位についたあたりか。当てになるのは、欧州ならイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、あとベルギー、スウェーデン、アジアでは日本だろうね。

 また、日本と西欧に泣きつくのだろうね。



※ 実際には、方位と場所を微妙にズラした5-20個の短い線を、何本かつなげて対岸まで渡す。
※※ 有効半径25mとみた
※※※ 2011年夏に出したウチの本、『瀛報 掃討しかない-感応機雷と対機雷戦-』でまとめといた数字。
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