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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2012.01
28
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13:00
Category : 有職故実
 明治時代に発行された『海軍雑誌』でドイツ「空中雷船」発見したのだけれどもね。

空中雷船 
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『海軍雑誌』66号(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1500469 館内限定閲覧) 56ページ折込図より
当記事は無記名であり、発行後120年を経過しているため、著作権による保護期間は経過している。


 要は、気球で爆撃しようというもの。有人気球1個が、爆薬を搭載した無人気球4個をコントロールして爆撃する仕組み。もちろん、気球であるため、自由に移動することはできない。風まかせである。正確に目標上空に到達できるものでもないので、城砦といった大面積目標を標的にしている。

 『海軍雑誌』ではドイツ人「『ゲオルグ、ローデック』氏」が発明した「独乙空中雷船」を紹介している。

 気球(文中では「風船」)は、図で見るかぎりは、水素気球である。有人、無人でサイズが異なっている。有人気球は容積1200m^3、無人気球は500m^3と記されている。有人気球には士官1名、練習生2名が搭乗する。

 無人気球には「雷函」(トルピードケヘッツ)が搭載されている。電機仕掛で投下が可能であり、炸薬は、ダイナマイトあるいは綿火薬50-75kgと記載されている。
 「雷函」に取り付けられた発火機構は不詳である。「ダイナマイト薬包百個ヲ装填スルヲ以テ」「雷函」が地面に墜ちた時に爆発するとされている。当時製造されたダイナマイトが、落下程度で爆発するものかは疑問である。函外側に、雷管多数をつけて落下衝撃で発火する、あるいは黒色火薬導火線程度で作られた時限発火装置が必要だと思われるが、詳細はない。
 「雷函」構造に関しては、詳細は記載されていない。おそらく弾殻は薄く、弾片効果は望めない。

 有人気球と無人気球は、索により連結されている。もちろん、連結された効果は、互いに離れない程度である。「雷函」投下以降、不要になった無人気球は綱の切断により放棄される。この際、無人気球は「戸口ヲ開放シ以テ敵ノ陣営外ニ剽落ス可シ」と、おそらく水素放出により墜落する。

 「空中雷船」がもたらす効果は、比較的高く評価されている。おそらく、空から攻撃するアイデアそのものへの賞賛である。直接的な威力を高く評価する様子はない。一応「堅城鉄壁」であっても「震動破壊スルニ至ル可シ」としている。だが、「縦令失敗シテ」(シテは合字)も「大ニ敵ノ気ヲ粗相セシメ」て、味方の「勇ヲ鼓舞スル」ことができると、比較的逃げている印象である。効果としても、敵にショックを与えられるとする、精神的な効用を説いている程度である。

 記事は、高度を取ることによって、気球は攻撃を受けず、安全であると主張している。「敵ノ砲弾ノ為ニ撃破セラルヽノ虞無者トス」とあり、高度1000m以上を飛行すれば砲弾は届かないと普仏戦争での例を挙げている。
 しかし、普仏戦争で用いられた対空砲、「『クルップ』気球砲(バルロングシュツ)」は射高800-900mあるとも、記事中で指摘している。漫然と風まかせで飛んでくる気球は、敵の標的となる点には無視できないと考えた様子である。

 「空中雷船」起源は、オーストリア砲兵士官「ウハチウス」氏である。翻訳元となった独文記事から、おそらく1886年前後にウイーン近郊で実験されたとある。その後、オーストリア軍が「フエ子シヤヲ」(フェンシャオ?、子=ネ)を包囲した時、「ウハチウス」氏は攻撃を試みたが失敗したとある。
 記事では、類似兵器としてアメリカ人「ルッセル」氏が発明した「空中『ダイナマイト』」船も挙げている。気球+爆薬といった点で、似たようなものなのだろう。



 まあ、実際に使うとすれば、地上が見える程度、月明かりがある夜間や、黎明しかないだろうね。高度を取れば安全といっても、昇る時間も伸びるから使いにくくなる。城砦間近から、風を待って低空で襲えばそれなりに攻撃のチャンスもあるだろうが、昼間だと小銃でも狙われる。そうなると『夜のスツーカ』みたにするしかないんじゃないかね。空から突然、攻撃される点で敵に衝撃を与えられるし、夜なら混乱も増えるだろう。枕を高くして眠れないんじゃないかね。
 一応、風船爆弾の先祖かねえ。有人管制式風船爆弾といえなくもないだろうし。さすがにジェットストリームアタックは無理だろうけれども。


※「独乙国空中雷船(千八百八十六年九月独乙国伯林『イルヽストリルテ』新聞抄訳)」『海軍雑誌』62号 pp.46-49. 
オリジナルはベルリンで発行された、おそらく”Ihre Straße”紙 
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