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Category : ミリタリー
人間魚雷への対策も、どこまでできるのかね。「米海軍はイラン人間魚雷に対抗できるのかね」で「人間魚雷に対抗する専用システムはない」としたけど、売っていないわけではない。ただ、それで「安全になるのかね」というと、違うんじゃないかな。
港湾防衛における潜水員対策を謳ったシステムは、存在する。少々古いIDR※に、DRS Technology社による港湾防備システム(Habour Security System)提案が掲載されている。記事では、米海軍/沿岸警備隊のシステムに連接可能であるとしており、一見、有効な器材であるように見える。
しかし、実態は港湾監視システムである。DRSが提案した器材は、海面監視用に使われるレーダ、海中監視用ソーナー、光学監視器材にすぎない。レーダ、ソーナー共、極端に短い波長を使用している。波長が短くなると、高解像度が得られる。おそらくは物体の形状を画像確認しようとしているのだろう。
海面監視用にはスカウト・レーダが用いられる。IDRによれば、Iバンド(Xバンド:8-10Ghz,波長3mm)が使用されている。出力は1wと小さく、システムはハンヴィーに搭載できる大きさである。エジプトが30セットを購入したとされる。能力的には、破壊工作対策でもあるだろうが、まずは密入国対策、国境管理用だろう。
海中には、潜水員監視用ソーナーが提案されている。同じくIDRによれば、360度操作可能なソーナーで、800m以内の50目標を補足できるとされている。アクティブは、基本100khz、オプション300khzであり、機雷用ソーナーに似ている。別にパッシブで2-8khzを監視できるとされている。写真によれば、VDSタイプであり、使用時にも1-2ktで航行できるとある。
別に、光学監視器材として、EO/IRが挙げられている。電子器材による光学・赤外線監視を指すが、細かい説明はない。
このシステムでは、潜水員は確実に補足できないだろう。
レーダで監視できる面積は、それほど広いとも思えない。大遠距離での分解能を確保できる出力ではない。低出力では、ノイズによって埋もれてしまう。遠距離、例えば10km先の小型船程度を追尾できるかもしれないが、泳者の頭は見えない。高分解能を実現できるのは、それなりの近距離になる。その程度の距離であれば、進入側は潜水したままで通り抜けようとする。
ソーナーでの探知距離は、公称800mとさらに短い。泳者に限れば、探知できる距離はさらに短くなる。比較的大きな対機雷専用ソーナーでも、何かが落ちているとわかる距離、公称で同じような距離である。ソーナーの大きさはわからないが、掃討艇よりも小さい船を投入するだろうとすれば、800mで探知できると見るのは楽観的である。また、360度方向にアクティブ・ソナーを振り回せるだろうが、同時に全周を監視できるわけではない。スリ抜けられる可能性は高い。
EO/IRも、泳者には有効とは思えない。船舶から横合いに海面を見ても、海中は見にくい。機械でも同じである。真上から透視するように使えば、透視できる可能性も高い。しかし、常時在空しての監視は、監視できるエリアの広さにもよるが、UAVを使うにしても容易ではない。
そして、このシステムは監視しかできず、侵入者排除・無力化は別の方法による。水中にいれた防御側ダイバーが、水中銃、ナイフ程度でどうにかする。あるいは、上方向から、銃撃や爆雷で攻撃しなければならない。排除・無力化はシステム化されていない。原始的に対応しなければならないのである。
DRS Technology社による港湾防備システムは、確実に人間魚雷から港湾を防御できるものではない。まず、確実に泳者を発見できるものではない。その上、泳者を攻撃する手段は別であり、そこにも確実性はない。
調教したイルカなりを投入した方が有効に見える。米海軍は、対機雷戦用に調教したイルカを、軍用犬的に警備にも運用する。相当有効だろうが、イルカはそれほど多数を擁しているわけでもなさそうである。対機雷戦もあるため、ペルシア湾での泊地防衛に投入できるかわからない。また、動物であり、24時間働けるものでもない。増やそうにしても、イルカは工場で作れない。捕獲調達には動物愛護との兼ね合いもある。調教にも時間を要する。
イランが原始的な攻撃行った場合、やはり米海軍は対抗に苦慮することになるだろう。人間魚雷なら、経験豊富な英・伊に泣きつくしかない。
…まあ、米国とイランは大規模な戦争にならないだろうけどね。多少の摩擦や小規模な衝突は起きるかもしれないが、エスカレーションするとも思えない。イラン・イラク戦争のような大規模なタンカー攻撃や、小規模な機雷敷設までも行かないだろうねえ。
※ Habour Security System DRS Technolog, Jane's International Defence Review (Aug 2005) p.24
港湾防衛における潜水員対策を謳ったシステムは、存在する。少々古いIDR※に、DRS Technology社による港湾防備システム(Habour Security System)提案が掲載されている。記事では、米海軍/沿岸警備隊のシステムに連接可能であるとしており、一見、有効な器材であるように見える。
しかし、実態は港湾監視システムである。DRSが提案した器材は、海面監視用に使われるレーダ、海中監視用ソーナー、光学監視器材にすぎない。レーダ、ソーナー共、極端に短い波長を使用している。波長が短くなると、高解像度が得られる。おそらくは物体の形状を画像確認しようとしているのだろう。
海面監視用にはスカウト・レーダが用いられる。IDRによれば、Iバンド(Xバンド:8-10Ghz,波長3mm)が使用されている。出力は1wと小さく、システムはハンヴィーに搭載できる大きさである。エジプトが30セットを購入したとされる。能力的には、破壊工作対策でもあるだろうが、まずは密入国対策、国境管理用だろう。
海中には、潜水員監視用ソーナーが提案されている。同じくIDRによれば、360度操作可能なソーナーで、800m以内の50目標を補足できるとされている。アクティブは、基本100khz、オプション300khzであり、機雷用ソーナーに似ている。別にパッシブで2-8khzを監視できるとされている。写真によれば、VDSタイプであり、使用時にも1-2ktで航行できるとある。
別に、光学監視器材として、EO/IRが挙げられている。電子器材による光学・赤外線監視を指すが、細かい説明はない。
このシステムでは、潜水員は確実に補足できないだろう。
レーダで監視できる面積は、それほど広いとも思えない。大遠距離での分解能を確保できる出力ではない。低出力では、ノイズによって埋もれてしまう。遠距離、例えば10km先の小型船程度を追尾できるかもしれないが、泳者の頭は見えない。高分解能を実現できるのは、それなりの近距離になる。その程度の距離であれば、進入側は潜水したままで通り抜けようとする。
ソーナーでの探知距離は、公称800mとさらに短い。泳者に限れば、探知できる距離はさらに短くなる。比較的大きな対機雷専用ソーナーでも、何かが落ちているとわかる距離、公称で同じような距離である。ソーナーの大きさはわからないが、掃討艇よりも小さい船を投入するだろうとすれば、800mで探知できると見るのは楽観的である。また、360度方向にアクティブ・ソナーを振り回せるだろうが、同時に全周を監視できるわけではない。スリ抜けられる可能性は高い。
EO/IRも、泳者には有効とは思えない。船舶から横合いに海面を見ても、海中は見にくい。機械でも同じである。真上から透視するように使えば、透視できる可能性も高い。しかし、常時在空しての監視は、監視できるエリアの広さにもよるが、UAVを使うにしても容易ではない。
そして、このシステムは監視しかできず、侵入者排除・無力化は別の方法による。水中にいれた防御側ダイバーが、水中銃、ナイフ程度でどうにかする。あるいは、上方向から、銃撃や爆雷で攻撃しなければならない。排除・無力化はシステム化されていない。原始的に対応しなければならないのである。
DRS Technology社による港湾防備システムは、確実に人間魚雷から港湾を防御できるものではない。まず、確実に泳者を発見できるものではない。その上、泳者を攻撃する手段は別であり、そこにも確実性はない。
調教したイルカなりを投入した方が有効に見える。米海軍は、対機雷戦用に調教したイルカを、軍用犬的に警備にも運用する。相当有効だろうが、イルカはそれほど多数を擁しているわけでもなさそうである。対機雷戦もあるため、ペルシア湾での泊地防衛に投入できるかわからない。また、動物であり、24時間働けるものでもない。増やそうにしても、イルカは工場で作れない。捕獲調達には動物愛護との兼ね合いもある。調教にも時間を要する。
イランが原始的な攻撃行った場合、やはり米海軍は対抗に苦慮することになるだろう。人間魚雷なら、経験豊富な英・伊に泣きつくしかない。
…まあ、米国とイランは大規模な戦争にならないだろうけどね。多少の摩擦や小規模な衝突は起きるかもしれないが、エスカレーションするとも思えない。イラン・イラク戦争のような大規模なタンカー攻撃や、小規模な機雷敷設までも行かないだろうねえ。
※ Habour Security System DRS Technolog, Jane's International Defence Review (Aug 2005) p.24
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