「略字は13%の人しか読めない」(嶋田兵庫大允隆志さん)とはね

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 昔は広く略字を使っていた。康煕字典の本字は書いてらんないが常用漢字でも画数がおおいと書くのが面倒くさい。だから画数を減らす努力をした。これは漢字研究では筆記経済という概念で説明されている。

 それをご存知ない有職家とは不思議なものだ。
 
 嶋田兵庫大允隆志さんは歴史の細部に詳しいことを自慢していらっしゃる。
嶋田兵庫大允隆志@Shimada_Hyougo
そこは調べたことはありませんね。まぁ、戦前の「席次」は親任官、勅任官、奏任官とかいう序列の中で、勅任官(高等官1等)の将官(天皇の直接任命による師団長)と、同じ勅任官でも高等官1等または2等の内務省の一つの部局長(知事)だと師団長の方が席次が上になって仕舞うのが理由なんですが。
https://twitter.com/Shimada_Hyougo/status/1364019072166334473



■ 「13%の人しか『権』は読めない」(嶋田)そうです

 でも、略字の広範な使用はご存知ない。「権の略字は昭和52年では13%しか知らない」と言っている。

嶋田兵庫大允隆志@Shimada_Hyougo
素朴な疑問なのですが、ま45年前に13%だとして、今、この次を知っているのは何%なんでしょう?
あらいぐま@raccoon_496
デモ自体への賛否でなく漢字の字体への揶揄が拡散されるのだから,それは分断は解決しないなと思わされます。「权」は昔ながらの略字で,学生運動でも好まれました(俗に言うゲバ字)。昭和52年の世論調査では国民の13%が「权」を主に書くという結果で,写真の方が外国人というのは無根拠なデマです。
https://twitter.com/raccoon_496/status/1551206926570369025

https://twitter.com/Shimada_Hyougo/status/1551442381974618112


 これは抗議活動で「権」の略字を使った人を揶揄する過程での発言である。簡体字利用である、中国の手先である、学生運動の一味である。そのような主張に乗る形で発言している。そのスタンスは次の発言からうかがえる。
嶋田兵庫大允隆志@Shimada_Hyougo
この[権の]略字、30年前に一回見たっきりだなぁ。
銀星王@ginseiou
常用漢字も書けない人でも入れる法学部があるみたいですねw
銀も法学部だけど知らなかったですw
https://twitter.com/ginseiou/status/1551021047063138305

https://twitter.com/Shimada_Hyougo/status/1551100721495359488



■ 80年代までは略字は普通に使ってたよね

 まず「略字を普段から使っている」を「略字を知っている」と短絡していることは置こう。元の文章で明確に「昭和52年の世論調査では国民の13%が「权」を主に書くという結果」と書いていることに目が届かないことはともかく置く。

 ただ、「昭和52年に『権』の略字を知ってる人間は13%しかいない」(嶋田)の見立てはどんなものかね。

 五十郎や六十爺なら80年代まで略字が溢れていたことは体感的に知っているはずである。また謄写版以来に事務で使われていた手書き孔版印刷で複雑な字は書けないので略字を使っていたこと、手書き看板も書きやすさ読みやすさから略字を使っていたことを知っているはずである。

 しかも、権の略字はポピュラーだった。略字の「職」や「藤」と同じくらい使われている。限定略字の図書館の「図」や俗字由来の「喜」、地方限定の新潟の「潟」どころではない利用をされていた。

 子どもでなければまずは読めたといったあたりである。

 それを「13%しか読めない」あたりと誤読するあたりは勘所がない。見立てとしてなかなか甘いというものだ。「歴史に詳しい」といったご自身の自己認識あるいはアピールと合わせるとまずは興味深い印象を受けるものだよ。


■ 戦前も市町村長は選挙なんだけどね

 ちなみに、島田さんの戦前の話も正しくない事例はおおい。

 例えば市町村長と選挙の関係である。
嶋田兵庫大允隆志@Shimada_Hyougo
出向じゃなくて、戦前のように知事も市町村長も全部国の役人がやればいいんです。
https://twitter.com/Shimada_Hyougo/status/1292237562749177858


 実際には市町村長のいずれもが戦前から選挙で選ばれている。正確に言えば内務省-県の承認が必要なのだが被承認者はあくまでも選挙で選ばれる。それをご存知ないのだろう。

 戦前の新聞記事をよめば普通に市町村長の選挙は出てくるのだけれどもねえ。


■(オマケ) 法律の先生って普通に「権」を略字で書くよね

 「30年前に一回見たっきり」・「銀も法学部だけど知らなかったですw」もなかなかである。

 法学系の授業の板書はだいたい略字を使う。「権」の字を多用する状況だと自然とそうなる。30年前の学部生のときもそうだった。10年前に修士のときにも見た。作業場所がなくて学部の民法、債権法だか身分法だが覚えていないが、その授業の机を借りたときも板書はそうだった。

 ホントに法律の授業をとった上の発言であるかは疑問である。図書館司書課程で「『口にト』なんてしらなかったです」慶応大学出身で「广にK、广にOなんて略字は知らなかったです」のようなものだからだ。

 有職故実系ならササ菩薩を知らないようなものか。

 仏教では書き物で観音菩薩、勢至菩薩。虚空蔵菩薩とたまに菩薩ラッシュが起きる。そして菩薩の文字の画数は異様におおい。だから、草かんむり2つを「サ サ」のように書いて菩薩の略字とする。これは仏教関連では抄字と呼ぶ手法である。特に菩薩では「ササ菩薩」とも呼ぶ。

 これは今でも続いている。お坊さんだけでははく仏教学部や仏教美術の先生や学生も使っている。

 中にはさらにつなげて「井」とする例もある。縦書きで「観音井」と書くやり方だ。まあ、そもそも観音菩薩も観世音菩薩の省略形なのだけれども。

 その上、さらに「ぼさつ」=「BS」として「KNBS、SSBS,KKZBSとやる人もいると」いった話もある。「漢字を使わずアルファベットなんて仏教にそぐわない」という人もいるかもしれないけれども「もともとはパーリー語やサンスクリットで梵字もブラフミー文字もアルファベットだよね」「仏典の漢字は音写か意訳だよね」といわれればグウの音も出ないだろうという話である。
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