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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.04
07
CM:1
TB:0
13:00
Category : アニメ評
 岩波ホールで『劇場版ストライクウィッチーズ 音速雷撃隊 ノーカット版』を観てきました。

 初回公開版ではオミットされた「本当は月に行くため」「キチガイだ」が原作通りになったノーカット版です。世評でも、予告編でも断片的に流された、芳佳がロケットを一気に全点火していくカット以降が賞賛、あるいは批判されております。しかし、初回公開版ではハサミが入れられた、男を買うエピソード復活も評価すべきでしょう。坂本少佐が帯同していた情夫をみんなに宛てがうエピソードですが、なんとも素晴らしい。

 第一回攻撃の失敗後、坂本少佐は、情夫を幼い部下に宛てがいます。TV版と同様に、坂本少佐は情夫である圭助を従兵に仕立てて戦地も連れて歩いています。それを男を知らない、幼い部下たちを気の毒がって抱かせます。抱かせることによって「生き抜けばいいことがある」と動機づける、中盤での山場のシーンです。

 話や筋ならエロですが、肝心のいくつかのカットには声だけです。演出としては、その場のカットを描くよりも声だけにとどめた点は評価すべきでしょう。絵を入れると、原作者である伊藤桂一が描きたかったものから離れてしまい、あるいは成年指定も絡んでしまう。BD版に期待するか、あるいは薄いマンガで補間するかといったあたりです。

 なによりも、シャーロットですね。男を抱く前に、シャーロットはが芳佳に自慢気に話します。「あたしはもう男を知っている」「あんなもんは何遍やったておんなじさ」「ものすごくつまらないもんだよ」と強がります。しかし、慰安所「第二ふさう楼」を開く、その直前に戦闘が始まる。そして、一躍、飛び上がったシャーロットが還ってこない…

 お弔いのあと後、みんなは順番に男を抱きます。順番待ちでそわそわする子、終わってニヤニヤしながら出てくる子、色々います。その中で、一番最初に男を抱いた芳佳が泣いている。

 坂本が「そんなに痛かったのか?」と訪ねますが、芳佳の鳴き声は大きくなるばかり。ようやく「シャーロットのことです」と。「『男を知っているのは私だけ』だと」「でも、◯◯◯は、そうなっていませんでした」「シャーロットはみんなを楽しませようと下手な芝居で」と小さく、声も切れ切れに訴えるのですが、最後に「あの子は何も知らずに死んじまった」と慟哭するのです。

 その後の、出撃前の宴会、無礼講。坂本は「シャーロットは幾つか、16だ、フランチェスカもまだ12だった、わずか20年も生きられなかった、悲しい弔いでは寂しすぎる」からの大宴会。

 そして、突然の爆撃。「偵察機が駄賃で落としていった」「100ポンドの取るに足らない爆弾」と宴会は続きますが、弾着地には、乗用車に燃料搭載していた圭助がいた。

 翌日の攻撃前、白服が汚れるのも厭わず、黒焦げの燃え残りを抱きかかえる坂本。「なんですがそのケシズミ」と芳佳が尋ねると「圭助だよ」「しばらく一人にしてくれ」と答える坂本。その表情は、喜怒哀楽何れでもなく、彫像のように感情が残っていない。

 TV版や予告編では、坂本少佐の行動にはやや突飛なものがありました。脚の短い紫電改でありながら、増槽を落としてからも帰らない。これは、普段の「生き抜け」「プロペラが回る間は何があっても飛べ」「プロペラが止まったら手で掻いても飛べ」と指導する坂本のポリシーと異なるからです。

 しかし、ケシズミを抱く坂本のカットが挿入されることにより、物語としてのリアリティは破綻なく処理されたと云うべきでしょう。坂本には帰るところがなくなったのです。その行動も、復讐のためではなく、芳佳と搭乗機を守るため、音速を超えること、そしていつか月に行くことを望んだシャーロット最後の「作品」を飛ばすためであることが明らかになっています。

 劇場版は、TV版で描ききれなかった部分、心情が明確になっており、素晴らしい作品に仕上がったと言えるでしょう。物語としてのリアリティで残念だった部分も、綺麗に詰められています。エロのシーンはありませんが、それはBD版を楽しみとして、いま見ておくべきでしょう。



 ま、欝展開ばかりでもないのですよ。男を抱くシーンでも、坂本の「このなかで、処女のものは挙手」で、アンナ・フェラーラが手を上げる。「なんだお前もか」で「いえ、自分はみんなが手を挙げたので、何かと…」とかね。「怖がることはない、親父さんの◯◯◯見たことあるだろ」で「自分の親爺は90でして、その、もう」は笑えるところです。

 初回公開版である『ストライクウィッチーズ 音速雷撃隊』で改悪された部分が全部復元した感じですね。意図的に抜かれた「いつかは月に行く」「味方もキチガイだ」を元に戻し、同じように製作総指揮による「非実在であっても許されない」とハサミが入った部分「第二ふさう楼」も原作通りとなりました。政治的なバイアスが取り払われたところで、原作(伊藤桂一『ストライクウィッチーズ 悲しき戦記』収録)の物語が本来の輝きを取り戻したところでしょうか。

 岩波ホールは骨太の作品が好きですからね。次回作『オレンジと太陽』も楽しみなものです。1970年代まで秘されたまま続いた、オーストラリアへの児童移民に光を当てる作品です。やはり見なければならないでしょう。

参考 岡本喜八監督『血と砂』(東宝、1965年)





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Comment

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No title

見てきました
シャーマン戦車やタイガー戦車、88ミリ対空高射砲など涙モノの兵器が多数でてきてよかったです
焼けた銃身を交換するシーンなんて感動モノです

...まあ観客がヤローばかりってのが御愛嬌でしたが