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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.06
06
CM:18
TB:1
13:00
Category : ミリタリー
 地対艦ミサイルも新型を作る必要はない。陸自は地対艦ミサイル(SSM)をシステムごと入れ替えようとしている。しかし、新旧装備に大差はない。無駄としか言えない。

 もちろん、対艦ミサイルは戦車よりも役に立つ。対上陸戦では、敵を揚げて叩くよりも、揚がる前に沈める方が手間がかからない。戦争末期、本土決戦構想でも、陸上決戦というより、半ばは近海決戦であった。日本陸軍であっても、主力は事実上、特別攻撃隊を主要した対艦艇、対船舶攻撃であった。対上陸戦以外にも使えないこともない点も、戦車よりも役立つ点である。

 しかし、現況でシステムごと新型SSMを作る必要性は見当たらない。日本本土に敵が上陸する脅威もない。念のため、用意しておくのであれば既存の88式SSMで充分である。性能的には、今の88式SSMに不足はない。12式SSMに変わっても、ミサイル本体は大して性能向上するわけではない。

 まず、着上陸の脅威はない。極東ロシアは日本に侵攻する余力はない。中国も、日本本土に侵攻する力はない。確かに中国は軍隊を近代化している。海軍力を増強しているが、日米同盟どころか、日本海空戦力を排除できる力は獲得できそうにない。いずれにせよ政治的緊張が高く、極東ソ連が最盛期であった80年代前半とは異なる。着上陸の脅威は無視してよい水準である。

 対艦ミサイルの性能を見ても、88式に不足はない。とりあえず中露艦艇を目標としても、88式SSMでも性能的に不足はないだろう。中露は対艦ミサイル防御を軽視しているとはいえないが、飽和攻撃への対処を目指した日米ほど重視しているわけでもない。日米はイージスのような専門艦を整備し、それ以外の艦艇にも80年代からシステム化を進めている。艦載ヘリも大型高級なヘリを導入し、早期警戒能力を付与している。投入した努力量からして、中露の対艦ミサイル防御能力は、高くても欧州海軍同等程度で、たいしたものではない。

 逆に、88式SSMで対抗できない場合には、12式SSMでも歯が立たない。12式は、公表されている限りは、88式と同じ亜音速SSMである。ある程度はステルス性も向上しているかもしれないが、敵防空網を突破する上で88式SSMと差はない。両者は同サイズであるため、弾頭も同程度と考えられ、破壊力に優れるわけでもない。88式では倒せない相手が、12式になって倒せるようになるわけではない。

 長射程化した点は性能向上かもしれない。しかし、長射程化させるにしても、システムごと入れ替える必要もない。ミサイル弾体だけで更新し、中間誘導機構を追加すれば済んでしまう。

 その、長射程化に実用性があるかも怪しい。射程延伸は悪いことではないが、その性能を生かせるかどうかは別である。88式SSMの射程は150㎞+、おそらく100nm程度であるが、内陸から沿岸域を叩くには充分である。日本の国土は狭い、それ以上に下がる地積はない。海岸線に前進して、水平線より先にある艦艇を叩くことを期待しているかもしれない。その場合に、艦艇や航空機による目標情報支援が必要となる。しかし、艦艇や航空機が、敵艦隊にシャドーイングできるような状態であれば、空対艦ミサイルや艦対艦ミサイルで済んでしまう。

 そもそも、88式でもオーバー・スペックである。上陸船団を叩く程度の所要であれば、中古ハープーンSSM程度で充分済んでしまう。抗湛性が気になるのであれば、陣地にこもらせればよい。台湾は山に地下陣地を作り、女性を含むおそらく2線級部隊で雄風を運用させている。おそらく、方位とレーダ開眼位置を指示する方位発射モードで運用している。前に「さおだけ屋SSMはなぜ否定されるのか」で書いたように、軽トラのトリイに積んで発射しても構わない。対艦ミサイルは発射時に大した設定は要しない。目視発射なり、方位発射なり、緯度経度指定程度であれば容易にできる。

 12式SSMは、必要な装備ではない。まず、着上陸の脅威はない。性能的に88式SSMと大差はない。システムも入れ替える必要はない。長射程化での利益もない。趣味的な技術開発にすぎない。12式SSMを大金はたいて開発し、性能も充分な88式SSMと交代させることは、防衛費の無駄使いである。

 もちろん、地対艦ミサイルは南西諸島に貼る政治的なコマとして、陸自戦力では最も適している。艦隊からみれば、小銃持った歩兵や戦車はハエのようなものだ。警戒する必要はなにもない。それに較べれば、地対艦ミサイルはスズメバチである。刺されたら厄介程度には意識される。地対艦ミサイルは、中国海軍力を掣肘できるコマとして、眼の上のたんこぶ程度にはなる。しかし、それは新型でなければならないわけでもない。別に12式SSMでなくとも、88式SSMでも、余剰ハープーンでも構わない。
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まとめtyaiました【無駄遣い 12式SSM】

 地対艦ミサイルも新型を作る必要はない。陸自は地対艦ミサイル(SSM)をシステムごと入れ替えようとしている。しかし、新旧装備に大差はない。無駄としか言えない。 もちろん、対艦ミサイルは戦車よりも役に立つ。対上陸戦では、敵を揚げて叩くよりも、揚がる前に沈める?...

Comment

非公開コメント

No title

まあそうかもしれませんが
ノルウェーがステルス対艦ミサイルの実験に成功してから
どの国も一斉にステルス、大射程、GPS誘導方式の対艦ミサイル開発に舵切ってます
日本もそろそろ新型(アメリカが売ってくれないような)対艦ミサイルが欲しいのかもしれません

No title

世の中には、ecmっちゅうミサイルへの対抗方法もあるのよ?
この分野はハードキル的ミサイル対抗方法なんて比較にならないくらいに日進月歩なのよ?
敵が進歩しないことを前提に論理を組み立てるとか、敵に甘えすぎなのよ

No title

ミサイルには、寿命があるのでは。88式SSMを改めてライン設け生産するよりは、という意味かと。

No title

 まあ対艦ミサイルは誘導機構がキモで、そこだけ更新すれば済んでしまいますからね。
 とはいえ、ロシアはあの体たらく、中国に対しても、それほど対艦ミサイル防御に熱心とも思えないわけです。従来の88式のままで充分ですよ。
 固体素子のミサイルですし、ターボジェットも未使用です。燃料とか点検・交換すれば寿命はまだまだ残ってますし。

No title

誘導機構がキモなのは事実だけど、ポン付けで改良できるもんでもないですよ?
シーカーの感度は兎も角、誘導システムはミサイル本体とも密接に関わっているんだから、本体にも当たり前に手は入りますよ
それに、発射角度の高射角化や対処可能目標の増加、中間誘導へのGPS誘導の採用は運用の柔軟性向上って面で大きな性能向上では?
当然ご存知とは思いますが、もともとSSM-1は内陸から海岸線近辺の艦艇を狙うことを想定したミサイルなのですから、これらの改良はその運用においての柔軟性を向上させていると言えませんか?

あと、SSM-1は初期加速用にロケットモーター使ってます
ターボジェットエンジンとはいえ、未使用であろうとも経年劣化はします
機械はほっといても壊れる時は壊れるんです

No title

ハープーンは内陸から海岸近辺の艦艇を叩くような、小器用な運用は想定されてませんよ?
日本の地勢でそんな事やったら、普通に山肌に直撃するだけです

そもそも、日本のSSMの射程がめなのは山岳の間を縫って低空でSSMを飛ばすためです
射程が短いと、海岸線から敵の対抗攻撃でSSM部隊が被害を受ける可能性が高くなりますし、射程は極めて重要な要素ですよ?
人員被害は陣地にこもらせれば問題ない、というのは火砲の射程が重要な性能ではないのですか?
AAMの射程が重要な要素ではないのですか?
あなたの自衛隊員への考えは極めて付に乱暴で非情な発想と思います
強固な陣地構築には時間がかかりますし、そもそもどれだけ強固でも人員と機材の損害はゼロにはできないのですから
もともと兵員数の少ない自衛隊が、被害を極限可能な性能を兵器に求めるのは当然ではないですか?
どこが趣味的な技術開発なんでしょうか?
理解に苦しみます

No title

GPS誘導機構はポン付けできますよ。システム検証がメンドイですけど、ミサイルシステムごと新規開発するような問題でも無いです。

あと、ハプーンも飛行高度を指定すれば(確かあったと思う)低い山は越せますし、別に海岸部まで前進させればそれで済む話です。

88式も、内陸からコースウェイ設定で飛ばすためにターボジェットつけましたけど、それでお値段も高価になったんでしょうねえ。海岸端から、ブースターつけたASM-1を発射すれば充分なんですけどねえ。妙に凝った兵器にしたので、高く付いたもんです。

No title

少しは、「なんでそういう運用想定になったのか?」ってことを考えようよ・・・・・・
陸自がSSM-1運用で想定してるのは、海上優勢も航空優勢も全部敵に奪われた状況ってことぐらい、容易に想像が付くでしょうに
ああ、言っておくけど「ありえない想定pgr」は止めてね
陸自の想定としては至極当然の想定で、理論的に奇襲などの理由で一時的とは言え発生しうる事態なんだから
奇襲なんてありえないなんて想定はそれこそありえないから
奇襲される側の「ありえない」という思考から発生するんだから
湾岸戦争ではアメリカですら政治レベルでの奇襲を受けてるんだからさ

ハープーンに関しては、迎撃しやすく発射位置の特定も容易な弾道飛行ができるからって、SSM-1系の完全代替にはならないよ?
海岸線から発射すれば良い?
海岸線なんて敵に容易に補足される地点ではなく、山岳地域から発射して敵の上陸船団を攻撃できる、山肌を縫うように飛行でき被撃墜率と発射地点特定の可能性を極限できるってのが、SSM-1系列のメリットなんだからさ、それをかなぐり捨ててどうすんの?
数の少ない陸自隊員の消耗を避けるため、と見ればそれほど不思議な機能でもないでしょ?
あと、GPS誘導をポン付けとか、本体とのマッチングに新規開発とそれほど変わらない手間がかかるよ?
GPS誘導のみが要求されたわけではないのだし、そんなら、システム全体の改良なり新開発をやってしまうって12式の発想はむしろ健全だ

No title

>海上優勢も航空優勢も全部敵に奪われた状況ってことぐらい、容易に想像が付くでしょうに

考えても意味のない想定ですね。今の海空戦力は周辺国に対して相当優位になっています。着上陸の可能性も無視して良い時代に、12式を新規開発する必要性もないでしょう。

No title

射程が長くなれば、その分一基あたりのカバーできる範囲が増えるから、
コストパフォーマンスがあがっていいじゃないか。
以前現役の人に聞いた話だと、88式はバブル時代の設計で色々と割高だから、
新しく安い12式を作った。とかいう説明だったし

No title

伊勢神宮の遷宮といっしょ。
定期的に開発案件与えてないと、国内の開発力なくなっちゃうよ?まぁ「じゃ、外国から買えばいいじゃん!」っていうなら別だけど。
ある程度は能力維持の為の必要経費だと認めてあげようよ。

No title

湾岸戦争でもフォークランドでもいいけど、結局奇襲したからって勝てるとは限らないんだよなぁ。単に奇襲だけで一時的な優勢を確保したからといっても、奇襲効果が無くなる前に日本が折れなければ湾岸戦争のイラク軍やフォークランドのアルゼンチン軍の二の舞になるってことぐらい、容易に想像がつくでしょうに

自衛隊の海空戦力をほぼ無力化できる具体的な目途や計画を提示せずに無力化されることばかり考えて、肝心の海空戦力整備を疎かにするのはそれこそ杞憂プラス本末転倒じゃないんですかねぇ

露は兎も角、何故中の対艦ミサイル防衛能力が進歩しないとお思いになられているのか解りかねます。また、何故着上陸まではされないと考えているのですか。軍事的事象には固定観念を当てはめてはいけないと太平洋戦争で思い知ったでしょう。確かに今は88式で十分かもしれません。でも明日には来月には来年には古いシステムと古いミサイルでは対応出来なくなるかもしれません。88式と12式は性能にかなりの違いがあります。射程が100kmしか変わっていないではなく100kmも違うなのです。その100km伸ばすのは想定されていない後付けだとどれだけ難しいのかは解っておられるとおもいます。これは単なる趣味なのではなく後悔しないための最大限の努力なのです。

Re: タイトルなし

88式が役に立たない相手には12式も役に立たないと思いますよ

> 露は兎も角、何故中の対艦ミサイル防衛能力が進歩しないとお思いになられているのか解りかねます。また、何故着上陸まではされないと考えているのですか。軍事的事象には固定観念を当てはめてはいけないと太平洋戦争で思い知ったでしょう。確かに今は88式で十分かもしれません。でも明日には来月には来年には古いシステムと古いミサイルでは対応出来なくなるかもしれません。88式と12式は性能にかなりの違いがあります。射程が100kmしか変わっていないではなく100kmも違うなのです。その100km伸ばすのは想定されていない後付けだとどれだけ難しいのかは解っておられるとおもいます。これは単なる趣味なのではなく後悔しないための最大限の努力なのです。

>88式が歯の立たない相手なら12式も歯が立たない
なんで?
進化した妨害に対する手段は、当然こちらもシステムをアップデートさせなきゃならないし、妨害電波に左右されにくい素材を誘導装置のカバーに使うって手もあるし
そもそも12式って88式改として開発されたんだから、あんたの言うGPSポン付しただけでも12式として制式化されたんじゃない?88式で十分ったって見た目が変わってるのは丸型キャニスターが生産中止になったからだし
無駄も何もどうせ経年劣化するんだから新たな技術盛り込んで更新しようってだけじゃん
新しく88式をライン復活させて生産する方が誰がどう見ても無駄
それに中の人じゃないんだから、実際どのくらい能力向上したのかも実はわからないだろ?

Re: タイトルなし

> 進化した妨害に対する手段は、当然こちらもシステムをアップデートさせなきゃならないし、妨害電波に左右されにくい素材を誘導装置のカバーに使うって手もあるし

EAのことだと思いますが、妨害は昔からほとんど進歩していませんし
電波の周波数帯は捜索用もEA用も同じなんで「妨害電波に左右されにくい素材」なんて都合いいもんないです

> そもそも12式って88式改として開発されたんだから、あんたの言うGPSポン付しただけでも12式として制式化されたんじゃない?88式で十分ったって見た目が変わってるのは丸型キャニスターが生産中止になったからだし
> 無駄も何もどうせ経年劣化するんだから新たな技術盛り込んで更新しようってだけじゃん
> 新しく88式をライン復活させて生産する方が誰がどう見ても無駄

GPS機能追加なら、新しい物買わなくても既存のミサイル本体を持ってきて中の誘導機構だけ交換すればいいのですよ
ちなみに、アメリカ以下の各国はハープーンやエグゾゼ、さらにはスタンダートまで改修キットだけ買って既存品のミサイルから
対象コンポーネントだけ交換して更新してますね、経年劣化で更新とか言い出す人ってそれ知らないんですよね

> それに中の人じゃないんだから、実際どのくらい能力向上したのかも実はわからないだろ?
電子戦や対艦ミサイル防御を行っている実艦艇にブチ込んでないですからねえ
防衛省も「実際どのくらい能力向上したのかも実はわからない」
そもそも、空自や海自の対艦ミサイルと違って陸はロクに実射してないから、誘導機構をいじるとまともに動作するかどうか

で、作った端からまた新しい地対艦ミサイル作るといってるのも、案外、12式がアレな証拠だったりして
昔、国産魚雷作った時、日米共同訓練で使ってみると9発発射9発外れ、3発の発射後回収できず、国産はカスといわれる始末でしたからねえ

No title

>確かに中国は軍隊を近代化している。海軍力を増強しているが、日米同盟どころか、日本海空戦力を排除できる力は獲得できそうにない。



この記事から、わずか4年、中国の第四世代戦闘機数は2016年の段階で810機という。水上艦艇に至っては、バカスカ量産しまくってるという。052C/Dなんて2-3年以内に20隻近くになっちゃうでしょう。
たった数年で完全に逆転されてますよね。

しかもまだまだ拡大するという。
10年先は見通せなくても、数年先は見通した論考が必要でしょうね。

Re: No title

でも日米同盟どころか日本一国の海空戦力を排除できる力もないですねえ


> この記事から、わずか4年、中国の第四世代戦闘機数は2016年の段階で810機という。
・ 日米は第五世代に更新中ですが、その後に陳腐化するのでは?
・ 中国空軍戦闘機数は世代更新の度に減少しますよ
  20年前に5000機、10年前に2000機ありましたが、第5世代更新機には何機になるのですかね
・ 中国は一方面に全力集中できない問題もありますよ

>水上艦艇に至っては、バカスカ量産しまくってるという。052C/Dなんて2-3年以内に20隻近くになっちゃうでしょう。
・ 052C/D以前がすでに陳腐化しつつあります。051、052Bまで、053の退役・二線級おちをカバーできますかね
・ 054、055含めて艦隊戦力は数的増加はないでしょ