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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.07
04
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13:00
Category : ミリタリー
 国産機は過剰評価されるものだ。中国新哨戒機、高新6号についての中文記事を見つけたのだが、自画自賛に流れている。対潜機としてのハードを褒めるだけで、最も重要なソフトウェアは全く言及していない。分かっていて伏せているよりも、国産に目が眩み、気づかないのだろう。

 中国が開発したという対潜哨戒機、高新6号について香港誌が取り上げている。香港誌『鏡報』7月号、いつもの梁天仞さんの「6大高新戦機震撼問世」※ が取り上げている。これまでは「運-8輸送機を元にした機体である」程度から、一歩進んだ内容になっており、非常に興味深い内容になっている。

 しかし、国産機であるための自画自賛がある。そして、そこにある不利に着目しない点は残念である。

 梁さんは、機体そのものの性能を褒めている。高新6号は、6枚プロペラの4発機で、航続距離は短いものの、巡航速度、最高速度、最大離陸重量はP-3C相当であるという。低空性能も優れているとしている。P-3Cが機内ソノブイ48本しか積めないのに、高新6号は100本搭載できるとも言及している。

 しかし、対潜哨戒機でハードウェアを褒めても仕方がない。P-3Cもニムロッドもオリジナルは旅客機で、しかも古い。それと較べて勝っていても自慢にはならない。低空での運動性能についても、どの程度まで動けるものか。梁さんは「低空盤旋能力」を示しているが、MADを使った低空運動は思ったよりも激しい。潜水艦から離れると磁気以上は探知できないので、低く低く飛ぶ。飛沫がかかる高度60m程度まで下がって右に左に動きまわる。「可以在野戦機場所起飛」ともあるが、脚が長い哨戒機を野戦飛行場で運用する理由もない。「空空導弾、自防能力P-3C相若」とあるが、サイドワインダーの類はどんな機体でも運用できるので、取り立てるほどのものでもない。

 梁さんは、レーダーほかも褒めている。だが、そこに日米機が持っているISARはない。海自機がダンマリでいつの間にかつけている電子光学関連器材もない。P-3にあって、高新6号にないものは少なくない。

 特にソフトウェア、中でもデータベースの遅れは5年10年では追いつかない。

 パッシブでの対潜戦はデータベースとの照合作業になる。潜水艦から発生する音響データ、海洋での音響伝播データが重要になる。極端な話、器材であるソノブイの性能は中国でもどうとでもなる。しかし、音響データはどうしようもない。東シナ海を挟んで対峙する日米海軍、その潜水艦は特に静粛性が高い。潜水艦を見つけるのが難しい。その音響データを収集しなければならない。少なくとも潜水艦と潜水艦以外を聞き分けられるよう、データベース化するには至難である。

 ESM関連もデータベースとの照合である。データベースがなければ、ESM自体は作れても、その方向から電波が来ていることしかわからない。各種レーダの周波数、繰り返し周波数、輻射パターンといったデータを集め、どこの国の、何のレーダ波か。捜索用レーダなのか、射撃用レーダに捕まったのか、あるいはミサイル誘導用であるか。その電界強度と、距離による減衰との関係もはわからない。

 高新6号はそれらしい外形であるが、能力はP-3Cに追いつくものではない。外見や機体スペックはP-3Cなみかもしれない。だが、ソフトウェア、特にデータベースの遅れは、日米に追いつくものでもない。日本ですらP-3Cで使うデータベースの一部は、米国からブラックボックス形式で渡されていた。P-1で対潜機器独自開発を行ったが、背景にはここ20年30年をかけ、日本独自で収集したデータの集積がある。対して、間違いなく中国にはデータ集積はない。頼むロシアにもおそらくない。高新6号は、パッシブ戦やESMでは能力を発揮できない。

 国産装備は盲目的に評価される。そこで優れるものを挙げて賞賛する。しかし、あるべきものがないことは触れられない。これはどこの国でも変わるものでもない。日本でも、F-2を「対艦ミサイルが4発積める、万邦無比の対艦攻撃機」であるように讃えられていたが、80年台にはバッカニアもトーネードも同程度のミサイルを4発積んでいる。「F-16とは全く別物」とも褒めているが、F-16最新型と比べると大差もない。戦車も軍艦も似たようなものだろう。

 国産装備を褒めて褒めて褒めちぎる意見は、どこかに穴がある、アラはある。国産品を賞賛するのは色眼鏡であって、外さないと物事を見誤るのだろうね。



 しかし、『鏡報』も変わったもので、萌え系のページができているのには驚いたよ。大陸系出版社が出した香港誌で、実際には中国人が国内で主張できない話をしているので購読していたのだけれどもね。祈子陽さん作画の「甜甜圏看世界」という、まあ萌え系イラストによる紀行が掲載されている。「哈利法塔的伝奇」というドバイ旅行記なんだがね。香港や大陸のゆとり世代に阿らないといけないのだろうねえ。


※ 梁天仞「6大高新戦機震撼問世」『鏡報』420(鏡報文化企業有限公司,香港,2012.7)pp.80-82.
※※ 作者 甜甜圏,作画 祈子陽「哈利法塔的伝奇」『鏡報』420(鏡報文化企業有限公司,香港,2012.7)pp.102-103.


その他の高新シリーズ(高新1号-高新6号)は、こちらhttp://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-337.html
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No title

知らないほうが幸せってこともありますよ
SE時代ちょっとだけ海自の統合ソフトをいじったことありますが、あれは怪物です
敵潜水艦を☓☓で○△○△できる機能なんて
一般人の想像を超えています
綺羅びやかな正面装備に背を向けてソフト開発に熱中してる自衛隊の方針は正しいと思います