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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.08
01
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13:00
Category : ミリタリー
 護衛艦を引き渡しの仕事をしたことがある。「護衛艦壱隻、〆テ500億円(内官給品300億円)慥二請取致候」みたいな請収証と船舶証書を渡すだけの簡単な仕事。チェックは本当に護衛艦があるかどうか確認するだけ。細かい金額的な書類は契本がやっていた。その書類があることを確認すれば何もやることはない。

 この仕事が出張だと旨味が増す。なんせ仕事は30分もかからない。遠い造船所なら、公務員の標準移動日が◯日もついたりする。民間機移動なので、半日もかからない。まあ、どこのお役所も同じだけど、その◯日間は、官費で遊び放題ということだ。先任で引率者なら自儘だし、そうでなくても幹部だから放置プレイ。話を聞くと、悪い所まで遊びに行くヤツもいるらしいのだがね。己は地位を利用し、趣味も兼ねて、造船所見学をしていた。なんでも見せてくれたよ。

 あとはパーティーだね。慣習により、先方持ちで大宴会が行われる。全く椀飯振舞でね。ホテルのケチな宴会とは違う。造船所のゲスト・ハウスで、シャンパン飲み放題、世界三大珍味食い放題。まあ、艤装員長以下への接待だろうけど、そのご相伴に預かれる。おいしい思いをしておいてなんだが、税金使った飲み食いと変わらない。廃止はともかく、縮小しても良い習慣だと思うのだけれどもね。お祝いなので勿論参加しなければならないし、参加すれば頂戴する。

 陸任期あがり事務官が、シャンパンを飲んで「これ何ですか?」といったのを思い出す。本当に飲んだことがないらしい。「自腹じゃ飲み食いできない高級品だから、心ゆくまで飲み食いしろ」と言ったところ、微かに酔った容貌で「弁当箱と水筒持ってくればヨカッタですねえ」だって。

 防衛産業は儲からないというのも大嘘。この手のパーティーに金を惜しまない程度には儲かっている。まあ、艦艇引渡はおおっぴらに宴会ができるし、航空機もやっているらしい。おそらく戦車や自走砲でもやっているだろう。この費用も経費に積み上げられている。その経費に利益率GCIPを乗じるから、パーティーも金をかければかけるほど儲かる構造。「担当者が始終呼ばれるので儲からない」なんて言われるけど、市ヶ谷や現地に呼びつける費用も同じ構造。経費積み上げされて、利益率が掛けられている。

 本当に宴会で酔っ払うわけにも行かない。己はほとんど飲めない上、その後に引渡し式がある。防衛大臣から自衛艦旗を授与する式典で、海幕長以下が参加する重要な儀礼。でも、年度末に引渡しラッシュになると、エライ人は東京近場の重要艦に参加する。同日に遠くの造船所で行われる儀式には来やしない。そうなると代理が立つ。海幕長代理が海幕勤務の3佐ドノ。確か車両かなにかを担当していた人。で、配属総監部の総監代理が当時2海尉の己だった。

 乗り込みの際には艦長以下との敬礼があるのだが、代理だからこっちがエライ。手を挙げるだけだから金が掛かるわけでもないので、向こうも名代に敬礼するのには抵抗もない。敬礼は敬意を示すためにやるものではない。決まっているから機械的に敬礼するものだしね。しかし、船務士、応急士あたりに配置された同期連は嫌な眼で己を見ていたよ。「序列最下位のお前に敬礼して損をした、あとで返せ」という眼だったな。

 なんにせよ、役得な仕事であったもんだ。
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