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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.08
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Category : ミリタリー
 中国海軍新型コルベット、056クラスなんだが、どうもピントがハズれているように見える。香港誌『鏡報』8月号に、いつも軍事記事を掲載する梁天仞さんの「掲開056軽護神秘使命」※ が掲載されている。そこに3DCGと、正横から艤装中を写した写真が掲載されている。「056轻型护卫舰 」で画像検索するか、このあたりhttp://news.sctv.com/jsxw/201012/t20101203_552029_1.shtmlを見てもらえばよいだろう。

 梁さんによると、056型は1300tであり、全長89m、全幅11m、喫水3mで、最大速力25kt、航続距離2000マイル、乗員60名。砲は3インチ砲×1門と、小型艇避けの30mm機銃2門、対艦ミサイルはYJ-83を4発、対空ミサイルはRAMもどきのFL-3000Nを搭載している。対潜兵装は短魚雷のみであり、ヘリは離着艦のみで、搭載はしない。退役したDEの「いしかり」と同じ規模と見てよいだろう。

 この056型は、図を見た限りでも、甲板での運用作業が面倒であるように見える。ステルス性を強調した結果、中甲板が内側に引っ込んでいるので、船腹にぶつかって海面にアクセス出来ない。甲板作業は艦橋前にある前甲板30mか、航空甲板を兼ねた後甲板15mを使ってやるしかない。これでは落水者の救助や浮遊物回収がやりにくい。だいたい、拾い物は横目に見ながら、艦橋真横に擦り付けるように接近する。しかし、中甲板が使えないとそれも困る。前甲板に合わせるとなるとフレアに隠れて見えにくい。後甲板だと下手すれば水流に巻き込んでしまう。

 また、バウソナー装備についても疑問が沸く。バウソナーを装備しながら、ソナー部の喫水も4.5mと浅い。これでは探知距離が狭くなってしまう。水中音波の関係から、潜望鏡深度といった浅い位置にいる潜水艦を、近距離でしか探知できない。一般的には、ハルソナーよりも高級なバウソナーをつけてもあまり意味は無い。そもそも、短魚雷だけの対潜装備と釣り合っていないとも言える。

 なによりも、航続距離が短く、船型過小であり、外洋にだせない点で、使いにくく見える。18ktで航続距離2000マイルは短すぎる。外洋海軍になろうとしている中国海軍であるにも関わらず、昔の沿岸海軍に合わせた程度の航続距離でしかない。広州から南沙列島までだと経済速度で往復するので手一杯であり、海南島から南沙列島でも、哨戒や戦闘速力を発揮を考えると心もとない。戦闘航海を考慮すると、寧波から台湾、琉球列島線あたりまでしか使えないことになる。乗員数も少ないので、無理に長期航海させるといろいろ困るだろう。現在の中国海軍にとって既に使いにくく、将来的にはお荷物になるように見える。

 航続距離の短さについては、梁さんもどのような使い方をするのか見えてこなくて困っている様子である。記事では「脚が短いので南沙は無理、おそらく尖閣諸島で使うのだろう。あるいは、米LCSに対抗するための沿岸防備艦として使うのかもしれない」(大意)と述べられている。

 外洋海軍を目指す中国海軍にしては、沿岸域でしか使えないコルベットは場違い太郎な印象を受ける。現在2隻が艤装中であり、合計20隻も建造される可能性があるとのことだが、「いしかり」やその後継の「ゆうばり」と同じ轍を踏むように見える。将来的にOPVへ転用するにしても、脚の短さは致命的だろう。

※ 梁天仞「掲開056軽護神秘使命」『鏡報』421(鏡報文化企業有限公司,香港,2012.8)pp.82-85.


目下、コミケ作業が佳境なもので、コミケ明けまでは書きためた記事が連続します。興安嶺の魔女みたいなアレですのでご勘弁
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