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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.10
05
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13:00
Category : ミリタリー
 自衛隊ファンをこじらせた結果、パペットやプロキシに堕してしまったのではないかね。「自衛隊スゴイ、エライ、大事にしろ」という話を、マクロ・ミクロを問わず、抽象度も調節されずに羅列し、しかも結論なく並べられると文章に違和感しか残らない。「自衛隊スゴイから、防衛予算を増やせ」や「日本の防衛産業エライから、競争入札ヤメロ」といった従来主張を見ていると、自衛隊への片想いが行き着いて、自己同一化したようにしか見えない。



 桜林美佐さんの記事「世界で最も信頼が厚い海自掃海部隊」※ には全体的な違和感がある。主張も不明瞭であり、内容の過半を占める海自対機雷戦部隊紹介にしても、散文的であり、自国軍隊への顕彰に引きづられている。対機雷戦部隊へのファンレターなのか、機能・能力について述べたものか判然としない。

 まず、主張が分からない。最初と最後の章からみれば「国防のため、対機雷戦戦力へのレディネスを上げろ」と主張したいのかもしれない。しかし、記事の構成や内容からでは単に、海自対機雷戦部隊の紹介にしか見えない。

 もともと桜林さんの記事は主張がハッキリしない。記事の中には、防衛政策等への細かいリクエストといったものが幾つかある。しかし、全体で何を主張したいのかがハッキリしない。昔の記事「陸軍が用いた海上戦力とは?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35526」)が好例である。



 対機雷戦部隊紹介も、贔屓の引き倒しにしか読めない。記事の題名「日本の対機雷戦技術は世界で最も信頼が厚い」にしても、自国への顕彰が過ぎる。

 世界が海自を待っているといったような記述は桜林さんの願望である。海自の対機雷戦部隊を顕彰するため、桜林さんは、各国は日本部隊に大きな期待をしていると主張している。記事中では次に引用する部分である。

もしイランがホルムズ海峡の機雷封鎖を強行した場合、海自掃海部隊に対し即出動の期待の目が向けられた可能性は高い。

これにはしかるべき根拠がある。1991年の「湾岸の夜明け作戦」だ。湾岸戦争後、やはりペルシャ湾に派遣された海自掃海部隊は、木造の小さな掃海艇を駆使し、あらゆる悪条件を乗り越え、34個もの機雷処分に成功したという実績を持つ。

 「よくこの船でここまで来たな」

 とっくに現地で活動していた各国部隊は皆、目を見張ったという。海外での運用を想定していなかった掃海艇で、はるばるインド洋を経由したどり着いただけでも彼らを驚かせたが、さらにその実力のほどを発揮し、日本の掃海部隊の名を世界に知らしめることになったのだ。
「世界で最も信頼が厚い海自掃海部隊」より)


散文的な内容であるので整理すれば「日本から木造掃海艇で到着したことは偉業であり、各国海軍に驚きを与えた」「日本は高い掃海技術を発揮し、各国海軍にその能力を印象づけた」という内容になる。

 しかし「日本から木造掃海艇で到着したことは偉業であり、各国海軍に驚きを与えた」とする主張も、自国軍隊への顕彰と、パーティでのお世辞を真に受けたものにしか見えない。そもそも、ペルシア湾に投入された対機雷戦艦艇は、日本も各国も似たようなものであった。日本だけが小型であったわけでも、木造であったわけでもない。排水量的には各国MSC/MHCと変わらない。木造艇についても、アメリカが投入していた。英仏伊が投入したGRP艇と性能には大差もない。

 特に木造であることを強調しているのは、参加隊員が悪環境にあったことを強調したいのかもしれない。しかし、日本が木造艇としたのは、実際には乗り心地に拘った結果である。これもあまり格好のいい理由ではない。

 「日本は高い掃海技術を発揮し、各国海軍にその能力を印象づけた」も同様に、顕彰と、お世辞を真に受けたものである。そもそも、ペルシア湾戦後処理では日本は掃海していない。各国ともそうで、ドイツがトロイカを試用しただけである。重箱の隅をつつくようだが、行われたのは掃討であり、日本は技術的に大きく立ち遅れていた。そのため、ダイバーによる処理が多用された。むしろ各国海軍の能力、そこからの立ち遅れに気づいたのが正直なところである。



 結論部でのペルシア湾展開へのレディネスを上げろという主張も、唐突である。桜林さんは、エネルギー安保のため、ペルシア湾での機雷敷設に際しては即時展開できるようにしろと主張している。しかし、ペルシア湾での機雷除去は日本単独で行うものでも、行えるものでもない。1987年、イライラ戦争に伴う機雷除去以来、国際協調が基本である。合意形成には時間がかかる。もちろん、行かざるを得ない。だが、一番乗りをしなければならない理由もない。

 最後に付け加えられた「エネルギー論議」も、どうも次元の違う話である。

それにしても、日本では真にリアリティーのあるエネルギー論議がなされていないように思える。「そんなことはない」という反論もあるかもしれないが、例えば尖閣問題も領土そのものもさることながら、シーレーン問題として捉える必要があるだろうし、また、「反原発」論争にしても、わが国が現時点で、これほどに不安定なエネルギー輸入国であることに目を瞑ってはならないだろう。確かに、地震大国である日本に多くの原発があることは不安要素だ。しかし、遠く海の向こうの資源だけに国の生殺与奪を任せる不安も同様にある。
「世界で最も信頼が厚い海自掃海部隊」より)


桜林さんの問題提起では、輸入先多様化、原油備蓄積み増し、代替エネルギー投資が解決策になる。桜林さんは軍事的にはシーレーンや尖閣諸島に絡めようとしているが、それなら、対機雷戦部隊派遣というよりも、ペルシア湾でのプレゼンスがいるような話になるだろう。



 とにかく違和感が多い。主張が明確ではない。対機雷戦部隊紹介も、顕彰を目的としたファンレター的である。後半部はおそらく、対機雷戦部隊の重要性を主張しようとしたものである。しかし、国際協調といった視点の欠如、エネルギー論議への牽強付会といった部分で不明瞭度がさらに増加している。

 そもそも最初の部分で躓くのである。桜林さんは、普天間基地移設やオスプレイで悶着を起こしたので、領土紛争に至ったと主張している。記事導入部での記述は、国防・防衛の方針に異見がでたので、領土紛争に至ったとしか読めない。

普天間移設問題を混乱に陥れ、基地はいらない、オスプレイは出ていけと日米同盟を自ら揺さぶり、中国・韓国・ロシアに「その気」を起こさせた。
「世界で最も信頼が厚い海自掃海部隊」より)


しかし、北方領土、竹島、尖閣諸島とも、普天間やオスプレイの以前から存在した問題である。また、普天間移設問題、オスプレイ問題への軽視も垣間見える。

 自衛隊への片想いなのだろう。とにかくスゴイ、エライ、大事にしなさい、という内容になっている。それは個人の好き好きなのだろう。だが、「汚職を糾弾する『正義』が国防を弱体化させる」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36126)で主張されたような「防衛費を増やせ」や「防衛産業は競争入札の例外にしろ」※※ は、片想いが過ぎて盲目になったようにしか見えないものである。





※ 桜林美佐「世界で最も信頼が厚い海自掃海部隊‐『いざ』というときに備えて実機雷処分訓練を継続」(2012.10.4)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36220

※※ 空自T-7練習機導入の時に、スイス製メーカーが応札したら、値段が途端に半分になったことを忘れているのかねえ。まあ「『防衛生産・技術基盤研究会』の最終報告書」も、防衛省と防衛産業が喜ぶことを羅列しているんだろうけど。

※※※ 「世界が欲しがる救難飛行艇「US-2」民間転用による輸出で日本経済が活気づく」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36025)なんかだと、題名だけでもねえ、10機に満たない飛行艇で経済が活気付くとか。それでいて本文では、「ニーズの多いUS-2の無償供与などは検討されてしかるべき」と、金出して穴掘って、その穴を埋めれば雇用が生まれるだろう程度の内容になっている。
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