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Category : ミリタリー
「殲-31はF-35に勝る」の一節を書かねばならなかったのだろう。香港誌『鏡報』最新号※、梁さんの「『雪鴞』為何令美国打寒顫」だが、国産機を肯定的に書かなければならないので苦労している様子。なんにしても、殲-35は飛行映像がもたらされたばかりであり、詳しいことは何もわからない。それを褒める方向に持っていくのは容易ではない。
どこの国も、国産機は褒めないとファンは怒る。国産機を紹介するときには、その利を褒めて、その不利に触れない。
殲-31では梁さんは頑張っている。殲-31が間違いなくいい飛行機であれば苦労はしない。しかし、海山ともつかない機体である。良かった探しをしてどこか褒めなければならない。
数少ない写真や、噂レベルの情報の中から、殲-31が優れた機体であろうことを述べている。「殲-10『速龍』や殲-20『威龍』といった従来の龍シリーズとは違う」と述べて、画期的である点を暗示している。また「艦載機に発展する余地がある」として、アレスティング・フックを伸ばした想像CGを最初に提示している。「機体番号の桁が増えている」とも述べ、実用機として大量整備に繋がる点も暗示している。
これらが根拠に乏しいことは、梁さんも承知しているのだろう。名前の付け方が龍から猛禽類に変った点、なるほど進化かもしれないが、具体的な能力向上を伺わせるものではない。次に龍に戻る可能性も捨て切れない。艦載機云々といった話も航母熱の名残だろうが、艦載機の実運用経験を積まない段階では絵空事である。機体番号の桁数増加も、なんとも言いがたい。実戦配備をしてみて成果を見ないことには、大量整備の可否は判然としない。
しかし、商業的には「国産機が優れている」と無難に書かねばならない。言論は金を出す読者に応じたものであり、読者を喜ばせなければならない。このため、国産機について述べるときには褒めなければならない。広告主が出すPR記事と同じで、良い所を徹底的に褒め、悪いところは触れてはならない。これは日中で変わらない。F-2ができた時も、雑誌ではその利だけが書かれ、不利や凡庸はないもののように書かれた。
ただ、殲-35は分からない点が多く、その仔細は全くわからない。しかし、読者は、航空機、軍艦、戦車のマニアは大抵が、どうでもいいような細部の情報を求める。読者の要求に基づき、ディテールが明らかでない機体について、その細部に至って褒めるのは、やはり大苦労である。
梁さんは、細部についてはコストとデザインでF-35に勝ると褒めている。頑張った成果なのだろうが、牽強付会であるようにしか見えない。
コストでは、梁さんは「日本がF-35を調達する価格の3割」としている。日本のF-35が2-3億米ドルであるのに対して、殲-31は0.6-0.8億ドルと述べている。
だが、どちらの価格もまだハッキリしていない。実際、日本のF-35調達価格は23年度から24年度予算で跳ね上がっている。そもそも中国では、航空機生産のコストが明確にはなっていない。日本のF-35がさらに高騰する可能性もあるので、なんとも言えないが希望的観測にすぎる。
また、相当苦心している様子だが、F-35への優位性をデザインでも示している。「高速兼霊活 戦力勝F-35」と、6つの点で優れるとしているのだが「双発であるので単発よりもポテンシャルが高い」程度の話である。
6つの点は、次のとおりになっている。
・第一に、[F-35に比べて]機体が滑らかで主翼が薄い。速力と敏捷性で勝る。
・第二に、殲-20のエンテ型[鴨翼]をやめたので、発達の余裕がある。
・第三に、双発機なので単発機のF-35より優位にある。
・第四に、中国の新型レーダを使用している。[だから今までみたいな不利はない、と言いたいのだろう]
・第五に、能力向上に成功した渦扇-15エンジンに載せ替えられる。
・第六に、多用途化・汎用化のために妥協したF-35に対して、速力、ステルス性で優れる。
文意としてつばがりにくい部分もあったが、そこはF-35に優れた点であると推測して[ ]の中に足してみた。
いずれにせよ、国産機の不利は書けないのである。不利はいくらでも思いつく。戦闘機単体でみても、アビオニクスやエンジン技術で米国に並ぶ力がない点、航空戦でのノウハウ不足があり、それが設計からソフトウェアまで足を引っ張っている可能性、兵装での遅れがある。背景にも、システムとしての空軍力の遅れ、例えば実用AWACSがまだないあたりを指摘するのは、読者は喜ばない。それが真実であればあるほど不機嫌になる。これもどこの国でも同じことだ。
むしろ、梁さんの記事で注目すべきは、輸出可能性への指摘である。大意であるが「殲-31は売れる。ステルスがほしいが、ステルスを売ってくれない国。しかも、隣国がステルスを持っている国には、売れる」は、大いに参考になる指摘である。
売れる可能性のある国として、パキスタン他を挙げている。パキスタン、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、ヴェネズエラ、エジプト、インドネシアである。特にパキスタンについては、F-35は買えそうもない。しかし、不倶戴天の敵、インドがロシアとステルスを開発している状況である。パキスタンも第四世代機体を買わなければならないと考えるだろうと言っている。
その国の国産機を取り上げる記事は、PR記事そのものになる。実際には不本意な内容であっても、また海山つかないものであっても、良かった探しをしなければならない。だが、その合間合間には、本人が主張したいことがあるのだろう。この記事では、それが殲-31の輸出可能性がそれだと見るのである。
※ 梁天仞「『雪鴞』為何令美国打寒顫」『鏡報』(鏡報文化企業公司,2012.11)p.p78-81
どこの国も、国産機は褒めないとファンは怒る。国産機を紹介するときには、その利を褒めて、その不利に触れない。
殲-31では梁さんは頑張っている。殲-31が間違いなくいい飛行機であれば苦労はしない。しかし、海山ともつかない機体である。良かった探しをしてどこか褒めなければならない。
数少ない写真や、噂レベルの情報の中から、殲-31が優れた機体であろうことを述べている。「殲-10『速龍』や殲-20『威龍』といった従来の龍シリーズとは違う」と述べて、画期的である点を暗示している。また「艦載機に発展する余地がある」として、アレスティング・フックを伸ばした想像CGを最初に提示している。「機体番号の桁が増えている」とも述べ、実用機として大量整備に繋がる点も暗示している。
これらが根拠に乏しいことは、梁さんも承知しているのだろう。名前の付け方が龍から猛禽類に変った点、なるほど進化かもしれないが、具体的な能力向上を伺わせるものではない。次に龍に戻る可能性も捨て切れない。艦載機云々といった話も航母熱の名残だろうが、艦載機の実運用経験を積まない段階では絵空事である。機体番号の桁数増加も、なんとも言いがたい。実戦配備をしてみて成果を見ないことには、大量整備の可否は判然としない。
しかし、商業的には「国産機が優れている」と無難に書かねばならない。言論は金を出す読者に応じたものであり、読者を喜ばせなければならない。このため、国産機について述べるときには褒めなければならない。広告主が出すPR記事と同じで、良い所を徹底的に褒め、悪いところは触れてはならない。これは日中で変わらない。F-2ができた時も、雑誌ではその利だけが書かれ、不利や凡庸はないもののように書かれた。
ただ、殲-35は分からない点が多く、その仔細は全くわからない。しかし、読者は、航空機、軍艦、戦車のマニアは大抵が、どうでもいいような細部の情報を求める。読者の要求に基づき、ディテールが明らかでない機体について、その細部に至って褒めるのは、やはり大苦労である。
梁さんは、細部についてはコストとデザインでF-35に勝ると褒めている。頑張った成果なのだろうが、牽強付会であるようにしか見えない。
コストでは、梁さんは「日本がF-35を調達する価格の3割」としている。日本のF-35が2-3億米ドルであるのに対して、殲-31は0.6-0.8億ドルと述べている。
だが、どちらの価格もまだハッキリしていない。実際、日本のF-35調達価格は23年度から24年度予算で跳ね上がっている。そもそも中国では、航空機生産のコストが明確にはなっていない。日本のF-35がさらに高騰する可能性もあるので、なんとも言えないが希望的観測にすぎる。
また、相当苦心している様子だが、F-35への優位性をデザインでも示している。「高速兼霊活 戦力勝F-35」と、6つの点で優れるとしているのだが「双発であるので単発よりもポテンシャルが高い」程度の話である。
6つの点は、次のとおりになっている。
・第一に、[F-35に比べて]機体が滑らかで主翼が薄い。速力と敏捷性で勝る。
・第二に、殲-20のエンテ型[鴨翼]をやめたので、発達の余裕がある。
・第三に、双発機なので単発機のF-35より優位にある。
・第四に、中国の新型レーダを使用している。[だから今までみたいな不利はない、と言いたいのだろう]
・第五に、能力向上に成功した渦扇-15エンジンに載せ替えられる。
・第六に、多用途化・汎用化のために妥協したF-35に対して、速力、ステルス性で優れる。
文意としてつばがりにくい部分もあったが、そこはF-35に優れた点であると推測して[ ]の中に足してみた。
いずれにせよ、国産機の不利は書けないのである。不利はいくらでも思いつく。戦闘機単体でみても、アビオニクスやエンジン技術で米国に並ぶ力がない点、航空戦でのノウハウ不足があり、それが設計からソフトウェアまで足を引っ張っている可能性、兵装での遅れがある。背景にも、システムとしての空軍力の遅れ、例えば実用AWACSがまだないあたりを指摘するのは、読者は喜ばない。それが真実であればあるほど不機嫌になる。これもどこの国でも同じことだ。
むしろ、梁さんの記事で注目すべきは、輸出可能性への指摘である。大意であるが「殲-31は売れる。ステルスがほしいが、ステルスを売ってくれない国。しかも、隣国がステルスを持っている国には、売れる」は、大いに参考になる指摘である。
売れる可能性のある国として、パキスタン他を挙げている。パキスタン、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、ヴェネズエラ、エジプト、インドネシアである。特にパキスタンについては、F-35は買えそうもない。しかし、不倶戴天の敵、インドがロシアとステルスを開発している状況である。パキスタンも第四世代機体を買わなければならないと考えるだろうと言っている。
その国の国産機を取り上げる記事は、PR記事そのものになる。実際には不本意な内容であっても、また海山つかないものであっても、良かった探しをしなければならない。だが、その合間合間には、本人が主張したいことがあるのだろう。この記事では、それが殲-31の輸出可能性がそれだと見るのである。
※ 梁天仞「『雪鴞』為何令美国打寒顫」『鏡報』(鏡報文化企業公司,2012.11)p.p78-81
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