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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.11
09
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13:00
Category : ミリタリー
 尖閣諸島に海自艦艇を出すのは、よいアイデアなのだろうか?

 濱口和久さんは「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」※ で海保の強化が必要であると指摘している。実際に、海保は慢性的な人で不足である。その上、尖閣諸島での警備行動が加わっており、能力的に限界にあるといってよい。海保強化は早急に解決する課題である。

■ 軍艦を出すべきではない
 しかし、そこで海自艦艇を前進させようとする主張は、妥当とは考えがたい。濱口さんは巡視船に洋上補給設備を作り、尖閣付近で海自給油艦から給油できるようにすべきであるとも主張している。しかし、尖閣付近に海自艦艇を出すことは、中国を刺戟してしまう。

 そもそも、海保を出しているのは、軍事行動ではないことを示すためである。巡視船は、船体にハル・ストライプをつけている。これは、警察力を行使するコースト・ガード組織であることをアピールするためである。その行動が、軍事的行動ではなく、警察行動であることを示すためである。

 補給艦を出した場合、洋上給油の利よりも、エスカレーションの不利が大きい。日本も中国も、軍事的行動ではないことを示すため、ハル・ストライプを付した政府公船を出している。そこに軍艦旗(自衛艦旗)を掲げた軍艦(補給艦)を出すことは、国際社会に日本がヨリ軍事行動にシフトしたという印象を与えてしまう。また、中国も対抗上、軍艦を出さざるを得なくなる。

■ 蛇管と金物の問題でもない
 また「洋上給油が技術的に不可能である」とする指摘は誤りである。

 もちろん、濱口さんが指摘する巡視船の燃料問題は、鋭い指摘である。尖閣での配備は、経済速力で2点を往復するような単純な行動ではない。小競り合いが始まれば、燃費は一気に跳ね上がる。そもそも、予備燃料がなければ小競り合いにも参加できない。巡視船は、燃料が半分になれば帰港せざるを得ない。

 しかし、装備の差異により、洋上給油ができないとする指摘も誤りである。

 濱口さんは「給油口の大きさ・形状の違い」を解決すれば、日米海軍や実施する横曳での洋上給油ができただろうと考えている。
[東日本大震災では]救援活動する米海軍や海上自衛隊の艦艇は、すべて海自の補給艦が洋上で給油していたが、海保の巡視船は給油口の大きさ・形状の違いから、救援活動を中断して港まで帰らなければならなかった。
   濱口和久「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」http://www.data-max.co.jp/2012/10/31/post_16448_hmk_1.html
しかし、それは正しくない。海保の巡視船が洋上補給できなかった理由は、「給油口の大きさ・形状の違い」といった蛇管、つまり給油ホースの先である金物形状だけではない。問題としては、本質ではなく些少である。

 洋上給油はできなかったのではなく、やるつもりもなかったのである。そもそも海保が本格的な横曳の洋上給油を想定していない。訓練の手間、甲板作業を行う要員を考慮すれば、海保の巡視船には横曳を採用することはできない。そもそも並走しての洋上給油は、器材以上に面倒が多い。互いのジャイロ誤差0.1度まで確認し、紐を引っ張り、適切な距離を保ち続ける必要がある。甲板上での作業にも多くの人手が必要であるが、その人数が巡視船にはない。器材も「給油口の大きさ・形状の違い」だけでなく、ハイラインを受け入れる設備も必要になる。

 逆に、本格的でない洋上補給であれば、今の装備でも可能である。縦曳や接舷給油であれば「給油口の大きさ・形状の違い」は問題にならない。通常の燃料・真水のホースでよい。縦曳は戦前の海軍や、戦後の東側海軍で多用された方式である。効率は悪いものの熟練はいらない。接舷給油は、第二次世界大戦で英海軍が行った方法である。H鋼にタイヤを通した緩衝材を作り、足が短く、運用能力が低い船団護衛艦艇に接舷給油を実施している。天候に左右されるが、技術的にはさらに容易である。とちらも給油側は民間タンカーで充分である。

■ まず乗員が持たない
 尖閣に巡視船を貼り付け続ける上で、一番問題となるのは、むしろ乗員の休養である。同程度の護衛艦に較べ、人員数で半分から1/3に過ぎない巡視船では、燃料補給が必要になる頃には乗員が参ってしまう。巡視船が頻繁に港に戻る理由は、燃料の余裕がないこともあるが、乗員疲労により余裕がなくなることがメインだろう。

 洋上給油だけを実施しても、巡視船の行動能力がもとどおりになるわけではない。ヘリで交代といった方法も考えられるが、艦船勤務者にとって船は住居である。慣れない船に体一つで移動しても、非直時に休養できない。携行できる程度の被服や私物では、すぐに困るし飽きが来る。

 乗員は家にも帰さないといけない。乗員は入港し、出先で休んでも、やはり復活するものではない。出先で休養しても飲むか、あるいは悪い遊びをする程度である。3ヶ月、あるいは半年ならともかく、尖閣での行動が長期になる。士気を維持するためには、なおさら妻子の待つ家に帰さないといけない。

 海自補給艦を出すなら、遠隔地から来た巡視船乗員に官費での休養と帰省手段をあてがった方がよい。民航機のチケットがいいのだろうが、その金がないのなら、海保、海空自衛隊の航空機を使わせるほうがよい。



※ 濱口和久「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」http://www.data-max.co.jp/2012/10/31/post_16448_hmk_1.html
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