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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.11
17
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Category : ミリタリー
 中国海軍力は、海洋拒否に特化している。自国が制海権を得るための、海洋を支配し、利用するための海軍ではない。たしかに、中国は海軍力を増強し、その装備も外洋向けに更新している。しかし、米国制海権を邪魔するための戦力であり、中国自身が海を利用するための装備ではない。

 中国海軍が整備している戦力は、米水上部隊の接近を邪魔するための戦力である。かつて中国で大量建造された魚雷艇がそうであった。今も同じように、ミサイル艇を大量整備している。魚雷艇もミサイル艇も、米水上部隊を邀撃することだけを考えた装備である。中国では潜水艦や水上艦も同じで、米水上部隊、とりわけ空母機動部隊と刺し違えることだけを考えている。中国が整備しているロシア系艦艇は、長射程大威力の対艦ミサイルのプラット・ホームのようなものだ。

 中国は、制海権を得ようとしているわけではない。あくまでも米国が中国周辺で制海権を確保するのを邪魔しようとしているだけである。その証拠に、敵性潜水艦といったものへの備えは等閑視されている。仮に、中国が米海軍水上部隊を寄せ付けなかったとしても、米潜水艦や航空機の活動を許せば、中国は海を自由に利用することはできない。

 米国の海洋利用を拒否しても、中国は制海権を得られない。仮に、東シナ海で考えてみよう。米中戦になったとしても、中国は海軍力がそれなりにすり潰されるまで、米水上部隊が東シナ海で自由に行動することを許さない。中国海空戦力が健全である限りは、東シナ海で海洋拒否を行うことができる。しかし、中国水上部隊や船舶が東シナ海を自由に行動することも許されない。米国も潜水艦や航空機により、同じように海洋拒否を行うことができる。

 オーストラリアの国防次官だったホワイトさんも、中国による制海権確保は難しいとみている。『外交』の記事で、ホワイトさんは「『海洋拒否』(Sea Denial)は制海の鏡像ではない」※ と指摘している。「拒否は容易である。制海は難しい、中国にできるのは拒否であって制海ではない」と述べている。

 中国が米国やそれ以外の国に、海洋拒否を選択された場合、中国は対応できるだろうか。中国海軍力は、海洋拒否、特に米海軍空母機動部隊への攻撃に特化している。中国には海洋支配、制海を達成する能力は低い。

 例えば、対潜戦戦力や対艦ミサイル防御技術で劣っている。中国の対潜戦力は明らかに劣っている。水上艦の対潜能力は低い。哨戒機も少ない。その潜水艦も、おそらく対水上艦襲撃に力が入れられているだろう。水上艦も、対艦ミサイル攻撃に強靭であるとは考えがたい。中国艦艇は、米国なみの対艦ミサイル防御能力を持たない。哨戒機等による通り魔的な攻撃でも混乱してしまう。

 中国海軍は制海には向いていないのである。中国は海洋拒否に対して脆弱であるとも言える。

 ホワイトさんも、ベトナムであっても工夫すれば中国に対して海洋拒否できると述べている。※ ホワイトさんは米国や日本は中国への海洋拒否は容易であり、韓国以下の諸国でもできるとしている。

 中国は第一列島線の内側でも制海権を立てられるかは怪しい。もちろん、相手の国の持つ海軍力による。しかし、米国を相手にした場合、制海を達成することはできない。

 米国も中国に対して海洋拒否を行おうとしている。中国やイランによるA2ADを打破しようとする、新コンセプトJOAC:Joint Operational Access Conceptがそれである。その中では、海洋拒否によって海洋拒否を邪魔するアイデアが大きな部分を占めている。

 中国が対米戦を行った場合、第一列島線の内側で制海権を確保できるかは難しい。対日戦でもそうであり、対越戦でもそうなるかもしれない。



※ ホワイト,ヒュー「アジアの世紀の海洋戦略」『外交』(外務省,2012.5)pp55-61.
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