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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2012.11
21
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Category : ミリタリー
 12式SSM、12式地対艦誘導弾だが、わざわざ垂直発射にする必要はあったのだろうか。

 12式SSMが採用した垂直発射方式は、不利は多く、利はない。価格を押し上げるだけの自己満足機能である。例えれば、車の電動格納式アンテナである。実用上、何の価値もなく、高く付くだけのオプションである。

 12式SSM整備への疑義は「無駄遣い 12式SSM」で書いたとおりである。それに加えて今回は、垂直発射方式採用は無駄であった点を示してみたい。

■ 垂直発射の不利
 垂直発射にすると不利が多い。まず射程が短くなる。その分、ミサイルが大型化、あるいは弾頭が小さくしなければならない。また、ミサイルも高くなる。垂直発射に対応するギミックが必要であるからだ。

 垂直発射だと射程が短くなる。SSMを最大射程で使う場合、目標に向けて撃つのが一番である。撃ってからグルリと向きを変えるのは燃費が悪く、射程が短くなる。相当昔に習った数字なのだが、ハプーンの場合「目標に向けて撃たないと射程は◯◯%も短くなる」と言われた。おそらく、射程の短い旧式を、180度の正反対に向けた場合の数字なのだろうが、◯◯%は小さい数字ではない。

 垂直発射採用は、ミサイルの大きさ、性能で不利を伴う。垂直発射による射程減少を補うためには、ミサイルを大型化するか、弾頭を小さくするしかない。逆に、在来発射方式にすれば、同じ大きさでヨリ高性能、あるいは同性能で小型化が可能になる。

 垂直発射の分、値段も高くなる。細かい点が公表されていないので、具体的には言えないが、いずれにせよ垂直発射のギミック※ の分、価格も高くなることは間違いない。

■ 有利な点はあまりない
 逆に、垂直発射で有利な点はあまりない。好意的に見ても、狭隘な場所から発射できる、また、車体の向きを変えずに全周360度の攻撃が可能である程度だ。

 たしかに、垂直発射により、狭隘な場所から発射できる点は、隠蔽や防御上優位だろう。例えば、非常に狭い盆地、蛸壺状の地形から発射できる点があるだろう。車体が隠れる穴を掘って、その中から対艦ミサイルを運用することができる点も、有利かもしれない。

 しかし、それは在来発射方式でも難しくはない。在来発射でも、狭い盆地や、窪地状にした陣地から発射はできる。従来の対艦ミサイルでも、上昇角度は45度程度はある。45度程度、クリアランスを取れば、充分に隠蔽可能である。

 在来型対艦ミサイルでも、上昇角度は45度程度ある。旧式ミサイル、旧ソ連のスティックスでも、巡航高度までの上昇角度は45度であった。また、ハープーンほかのSSMも、現用の88式も、実際には水平には発射されず、斜め上に向って発射される。発射方向に45度もあれば、大概の地形でミサイルと地物は引っかかることはない。

 垂直発射により、ランチャーの向きを変えず、360度攻撃可能な点は、対艦ミサイル運用では優位にはならない。発射方位は海の方向であり、だいたい決まっている。対水上戦闘は、対空戦闘のように1秒を争うものでもない。仮に変更するにしても、車体の向きを変える程度の時間はある。ランチャーの向きを変えず、360度攻撃可能であっても利益はない。

■ 垂直発射は不必要な技術
 12式SSMでの垂直発射は割に合わない技術である。垂直発射に必要なコストは安くはない、対して、その利益は少ない。対空ミサイルとは違い、対艦ミサイル運用で、垂直発射でなければ困る切実な理由もない。強いて言えば、最新技術っぽく見える点だろうか。前に述べようたように、乗用車の電動格納式アンテナに似ている。自己満足のためのオプションに過ぎない。

 そもそも12式SSMをシステムごと新造する必要はあったのだろうか。

 まず、既存の88式SSMでも性能的に問題はない。ロシアや中国海軍の戦力や、その防空能力は、冷戦末期のソ連太平洋艦隊の足元に及ばない。陸自が対艦ミサイルで狙う揚陸艦や輸送船であれば尚更である。

 仮に対艦ミサイルを更新するにしても、ミサイル本体だけを新しくすれば済む話である。対艦ミサイルの性能は、ミサイル本体で完結している。適切な設定があれば、発射方式や発射機、FCSは関係なく威力を発揮する。本来であれば、対艦ミサイル更新は本体だけを新しくして、88式SSMにそのまま入れ替えれば充分であった。

■ 過剰性能を許す仕組になっているのではないか
 国産兵器には、不必要なまでの過剰な性能が付加される。12式SSMでの垂直発射は過剰性能であるし、そもそも88式SSMで充分な現況では12式自体が過剰性能とも言える。陸戦兵器では10式戦車もそうだ。航空関連でも、P-3Cで不足はなく、搭載機器改修で性能向上を図ればすむ話であるが、P-1を作った。

 過剰性能が生まれる原因は、要求元と開発側で要求性能を吟味できない点にある。

 各幕は、まず価格や維持費といったコストはあまり意識しない。自衛隊装備は、定数あるいは現在数ベースであり、その範囲であれば予算要求は容易である。また官僚組織であり、予算を含めて規模を大きくしようとする習性がある。仮に必要充分な装備が安く作れても、同じ数であればその調達は望まない。予算要求上、余裕があると見れば無駄なオプションを付ける。それが過剰性能である。

 開発元も、利益を極大化するために行動する習性がある。官側開発者にとっての利益は、組織の成長である。開発規模を大きくしたい、予算額的にも、性能的にも大きくしたい願望がある。垂直発射のように不必要な機能であっても、最新技術として導入したいと考える。防衛産業にすれば、額は大きければ大きいほどよい。防衛装備に関しては、開発も生産も、原発と同じで経費に企業ごとに固定された利益率を載せたものである。経費がかかればかかるほど良い。無駄なオプションも、載せれば載せるほど利潤に繋がる。

 兵器国産開発には、過剰性能が盛られる仕組みになっている。それが、12式SSMの調達であり、無駄なオプションである垂直発射方式採用である。



※ 例えば、低速で急変針するためのギミックが必要になるだろう。地対艦ミサイルは運用上、非探知を防ぐために発射直後に目標方向に変針し、低く飛ぶように飛ばすことになるだろう。だが、そのためには発射直後に急変針をする必要があるが、発射直後は低速で舵効が良くないので何かの工夫が必要である。もちろん、在来発射型ではこの点は不要である。
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