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- » 2023 . 07
Category : ミリタリー
定数枠による防衛力規定は、防衛費を高騰させるだけではないのか。陸兵14万、護衛艦48、戦闘機260という定数の内側であるというだけで、吟味されることなく、無駄に高い階級配置や装備が与えられている。そこに防衛費を安く上げようとする意見は反映されない。
■ 定数枠により、予算は吟味されない
同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきなのだが、いまのシステムではそれは実現されない。定数内にとどまるかぎりは、予算が通ってしまう。その中身については、細かい審査はされない。
現行では、防衛費を安くあげさせる仕組みはない。人件費も装備品調達も、費用と効果の検討もなく、金をつぎ込んでいるのが現状である。
人件費は定数枠に応じて自動的についてしまう。給与の高い中級以上の幹部を抑制する仕組みはない。既にできた予算定員の大概は変わらない。人件費が義務経費として自動的についてしまうので、1尉配置のままでも、不必要であっても、能力に欠けていても、枠があれば昇任する。防衛省からすれば、枠を余すことは無駄であるためだ。自衛官は合計して25万人いるが、まず現業にはあたらない3佐以上が17600人、15人に1人いる。※ 比率では、旧日本軍隊の下士官なみにいることになる。
装備品も定数枠にあわせて買い放題である。定数内であれば、機械的に決められた耐用年数を超えれば、まず新しい装備が買える。この耐用年数は昔に決まったもので、諸外国と比較すると極めて短い。ついこの間まで、海自の潜水艦は耐用年数16年であった。諸外国では30-40年使用することを考えれば、半分かそれ以下である。ただ、潜水艦は必要性が理解できるからまだいい。だが、陸自の本土決戦にしか使えない戦車や大砲も、車検の度に新車を買うようにポイポイ更新されるのは無駄だ。
こんな無駄をしている国もない。海外ちょっかい掛けまくりのフランスも、戦車は日本と同じ約400両であるが、半分が90式戦車相当のルクレール、残り半分が74式相当のAMX30で済ませている。90式、ルクレールと大差のない10式を新造して配備するようなムダもない。
装備品調達は抑制されていない。やるのは財務で値引きする程度である。陸空装備であれば、今年10買うところを8にしろ。艦艇であれば、排水量を100トン減らせ、この装備は後日装備にしろという程度である。無駄な装備であっても、大概通ってしまう弊害がある
■ そもそも防衛力にタガをはめるための制度
定数枠は、防衛力に上限を設けるための制度であり、防衛予算を制約するための制度ではない。
定数枠は、昔の憲法論争を引きづった結果である。自衛隊が戦力であるか否か、自衛権の範囲を超えるか否かが争われた時代、左派は自衛隊に関しては戦力上限にタガをはめることだけが焦点であった。防衛費に関しても、戦力のタガとして1%枠が問題になっただけである。防衛費を効果的に使用するかどうかは全く意識されていない。防衛力に比して高い防衛費、防衛費の割に低い防衛力は問題にされなかった。
制約に対する代償として、予算面を潤沢にしてやった面もある。平和憲法や自衛隊に課せられた種々の制約について、右派や自衛隊関係者は不満を持っていた。その不満をそらすため、高いおもちゃを買ってやった部分はある。昭和50年代以降、常に高級な最新装備、必要なのか分からない施設、曹の定年引き上げといった厚待遇が実現された背後には、平和憲法、1%枠、特定装備保有制限に対する右派や自衛隊関係者の不満を埋め合わせる面もあった。
定数枠のタガは、防衛予算を制限する機能を持たなくなった。装備数の範囲内であれば、そのコストはほとんど論じられない。逆に、定数内であれば、過剰性能も無駄遣いも許される構造になってしまった。
■ 同じ防衛費ならヨリ強力にすべき
しかし、憲法論争は終わった。自衛隊に課せられた制約はなくなった。政治的に戦力や軍隊と明言しない限り、自衛隊保有への反対はなくなった。自衛隊に戦力のタガを課すべきという主張も減った。法的制約についても、自衛のための軍隊が、遠く海外に派遣される状況である。
不満をそらすために、潤沢な予算を与える必要はなくなった。同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきである。そのためには、定数枠による防衛力規定は改めたほうがよい。
定数枠内部でなるべく高級装備を買おうと、過剰性能を与えている現状は無駄遣いである。重要性が増している艦艇や航空機であれば、トータルで安くなれば数を増やしてもいいだろう。逆に必要も減った戦車や大砲については、その戦車や大砲をわざわざ新型化することを許さない仕組みを作るべきである。
枠による人員数制限だけで、給与総額を考えない仕組みもやめたほうがよい。人員や階級も予算総額との関係を重視すべきである。配置以上に階級・給与を与えるような仕組みはなくせばよい。人員構成上とやらで、実際に佐官は佐官配置より多い。あるいは、階級に応じた給与ではなく、配置に合わせた給与にすればいい。大原則として賃金は労働に応じる。その階級に応じて給与を払う必要はない。実際に階級の名前が残れば、1尉クラスへの給与ダウンにも、それほど不満はでないだろう。
※ 平成24年度予算「1042 防衛省所管 予算定員及び俸給額表」(http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/dlpdf/DL201211001.pdf)では、中級幹部である3佐は10300人、防衛省幹部にあたる2佐以上は、2佐は約5000人、1佐は約2000人、将官は260人である。
■ 定数枠により、予算は吟味されない
同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきなのだが、いまのシステムではそれは実現されない。定数内にとどまるかぎりは、予算が通ってしまう。その中身については、細かい審査はされない。
現行では、防衛費を安くあげさせる仕組みはない。人件費も装備品調達も、費用と効果の検討もなく、金をつぎ込んでいるのが現状である。
人件費は定数枠に応じて自動的についてしまう。給与の高い中級以上の幹部を抑制する仕組みはない。既にできた予算定員の大概は変わらない。人件費が義務経費として自動的についてしまうので、1尉配置のままでも、不必要であっても、能力に欠けていても、枠があれば昇任する。防衛省からすれば、枠を余すことは無駄であるためだ。自衛官は合計して25万人いるが、まず現業にはあたらない3佐以上が17600人、15人に1人いる。※ 比率では、旧日本軍隊の下士官なみにいることになる。
装備品も定数枠にあわせて買い放題である。定数内であれば、機械的に決められた耐用年数を超えれば、まず新しい装備が買える。この耐用年数は昔に決まったもので、諸外国と比較すると極めて短い。ついこの間まで、海自の潜水艦は耐用年数16年であった。諸外国では30-40年使用することを考えれば、半分かそれ以下である。ただ、潜水艦は必要性が理解できるからまだいい。だが、陸自の本土決戦にしか使えない戦車や大砲も、車検の度に新車を買うようにポイポイ更新されるのは無駄だ。
こんな無駄をしている国もない。海外ちょっかい掛けまくりのフランスも、戦車は日本と同じ約400両であるが、半分が90式戦車相当のルクレール、残り半分が74式相当のAMX30で済ませている。90式、ルクレールと大差のない10式を新造して配備するようなムダもない。
装備品調達は抑制されていない。やるのは財務で値引きする程度である。陸空装備であれば、今年10買うところを8にしろ。艦艇であれば、排水量を100トン減らせ、この装備は後日装備にしろという程度である。無駄な装備であっても、大概通ってしまう弊害がある
■ そもそも防衛力にタガをはめるための制度
定数枠は、防衛力に上限を設けるための制度であり、防衛予算を制約するための制度ではない。
定数枠は、昔の憲法論争を引きづった結果である。自衛隊が戦力であるか否か、自衛権の範囲を超えるか否かが争われた時代、左派は自衛隊に関しては戦力上限にタガをはめることだけが焦点であった。防衛費に関しても、戦力のタガとして1%枠が問題になっただけである。防衛費を効果的に使用するかどうかは全く意識されていない。防衛力に比して高い防衛費、防衛費の割に低い防衛力は問題にされなかった。
制約に対する代償として、予算面を潤沢にしてやった面もある。平和憲法や自衛隊に課せられた種々の制約について、右派や自衛隊関係者は不満を持っていた。その不満をそらすため、高いおもちゃを買ってやった部分はある。昭和50年代以降、常に高級な最新装備、必要なのか分からない施設、曹の定年引き上げといった厚待遇が実現された背後には、平和憲法、1%枠、特定装備保有制限に対する右派や自衛隊関係者の不満を埋め合わせる面もあった。
定数枠のタガは、防衛予算を制限する機能を持たなくなった。装備数の範囲内であれば、そのコストはほとんど論じられない。逆に、定数内であれば、過剰性能も無駄遣いも許される構造になってしまった。
■ 同じ防衛費ならヨリ強力にすべき
しかし、憲法論争は終わった。自衛隊に課せられた制約はなくなった。政治的に戦力や軍隊と明言しない限り、自衛隊保有への反対はなくなった。自衛隊に戦力のタガを課すべきという主張も減った。法的制約についても、自衛のための軍隊が、遠く海外に派遣される状況である。
不満をそらすために、潤沢な予算を与える必要はなくなった。同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきである。そのためには、定数枠による防衛力規定は改めたほうがよい。
定数枠内部でなるべく高級装備を買おうと、過剰性能を与えている現状は無駄遣いである。重要性が増している艦艇や航空機であれば、トータルで安くなれば数を増やしてもいいだろう。逆に必要も減った戦車や大砲については、その戦車や大砲をわざわざ新型化することを許さない仕組みを作るべきである。
枠による人員数制限だけで、給与総額を考えない仕組みもやめたほうがよい。人員や階級も予算総額との関係を重視すべきである。配置以上に階級・給与を与えるような仕組みはなくせばよい。人員構成上とやらで、実際に佐官は佐官配置より多い。あるいは、階級に応じた給与ではなく、配置に合わせた給与にすればいい。大原則として賃金は労働に応じる。その階級に応じて給与を払う必要はない。実際に階級の名前が残れば、1尉クラスへの給与ダウンにも、それほど不満はでないだろう。
※ 平成24年度予算「1042 防衛省所管 予算定員及び俸給額表」(http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/dlpdf/DL201211001.pdf)では、中級幹部である3佐は10300人、防衛省幹部にあたる2佐以上は、2佐は約5000人、1佐は約2000人、将官は260人である。
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Comment
23:06
エンリステッド
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編集
逆に予算科目も定数も定めず。〇兆円渡すから、好きに遣れと言われた方が工夫しそうですね・・・
個人的には、「准将」を早く創設して、偉すぎる配置の適正化をして欲しいですね・・・(陸の某学校なんざ、校長も副校長も「将補」という無駄ぶり・・・)
Re: タイトルなし
20:02
文谷数重
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編集
> 定数枠こそが実は「予算」節約の障害になっているという考えは新鮮でした。
>
> 逆に予算科目も定数も定めず。〇兆円渡すから、好きに遣れと言われた方が工夫しそうですね・・・
>
> 個人的には、「准将」を早く創設して、偉すぎる配置の適正化をして欲しいですね・・・(陸の某学校なんざ、校長も副校長も「将補」という無駄ぶり・・・)