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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2012.12
03
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13:00
Category : 有職故実
 「海軍参謀長」は誤訳じゃないけど、不案内な人の不適切な翻訳じゃないでしょうか?

 「自衛隊の名称改正を改正しよう」という話です。だたし、選挙の話題じゃない方。その中で見つけたのですがが、やはり「海軍参謀長」のあたりには相当に違和感を感じてしまう。

 『外交』最新号に、道下徳成さんが「自衛隊の組織・装備の名称改正案」※(1) を述べています。問題意識としては、国民にわかりやすくすべきだというもので、理解でき、共感できる内容になっています。しかし、自衛隊での名称については、すでに膾炙している部分もあります。英訳はズバリ軍隊そのものなので、実施する必要性は、あまり感じらるものではないように見えます。

 道下さんの主張は、昔の「『特車』って何?」と同じものです。「国民が理解し難いから、各自衛隊は陸海空軍に、階級は旧軍呼称に、普通科を歩兵に、施設科を工兵にしたほうがいい」(大意)といった内容です。

 もちろん、使用上には実害はありません。隊員はわかっているし、海外でも問題はない。道下さんが言っているとおり、自衛隊は英訳で世界標準にあわせてある。歩兵はinfantryだし、大佐はCaptain、大尉はLieutenant。実務レベルでは、海自なんかは平気で"JAPAN Navy"(なぜかJapaneseではない)と言っています。

 道下さんは、漢字表現だと「中国と韓国で理解し難い」という意見もされています。ただし、旧日本軍と全く同じでなければ理解されないわけでもありません。「戦力ではない」理屈の自衛隊が「国軍」なのは、「党の軍隊」であるはずの人民解放軍が「国軍」なのと同じです。階級にしても、日中韓でも漢字名称は違う。日本が大佐、大尉にしてもコンパチになるわけでもない。漢字文化圏で通用しにくいのは、陸自の普通科、特科の二つだけでしょう。海の「護衛艦」なんて、中国語でも似た様な感じです。タイプ056は、中国側では056軽型護衛艦です。

 ただ、海軍関係の言い換え表現は気になります。各種名称は、変えても変えなくても、どちらでもいいのですが。旧軍準拠に変えるのなら、正しく踏襲しないと不自然感が生まれます。また、規模や内容を正しく示せていないようにも見えます。

 中にある言い換え一覧表「自衛隊の現行名称と新名称案」その海軍関係用語が相当に不自然・不正確なのです。

 「海軍参謀総長」「海軍参謀部」「海軍作戦司令部」はあまりにも不自然でしょう。普通は「軍令部長」「軍令部」「◯◯艦隊司令部」※(2) になります。「海軍参謀本部」も、一応は明治の一時期にはあったのですけど、あまりにも短命で人口に膾炙しませんでした。

 英訳部分でも、例えば護衛隊群を"Escort Flottila"ではなく"Destroyer Squadron"とするのは、二重に間違えているでしょう。"Destroyer Squadron"は相当に不自然です。元の"Escort Flottila"は、水上部隊だよという分類と、フロッティラ(小艦隊)であることを示しています。対して、"Destroyer Squadron"だと、駆逐艦だけという意味と、フロッティラから規模が一つ落ちた「戦隊」※(3) という意味になってしまう。ニュアンス的に、タイプ編制、つまり同じ型の駆逐艦だけを集めた、駆逐隊のイメージになります。今でいえば護衛隊のイメージです。

 護衛隊群は、規模内容として、いまのまま"Escort Flottila"でいいでしょう。あるいは、まあ単に"1st Flottila"とか、あるいは、タスク編成っぽくなりますけど"Surface Group"か"Surface Action Group"ではないでしょうか。

 他にも、今の航空集団を"Naval Aviation"にするのも、イメージが違います。"Naval Aviation"では、組織ではなく、海軍航空職域をイメージしてしまう。日本語の方も「海軍航空隊」ですが、これも作戦組織ではなく、漠然とした職域イメージです。海自的には「海軍航空隊」よりも「航空艦隊にしてくれ」※(4) でしょう。英名も、今のままの"Fleet Air Force"か、お師匠さんに倣って英海軍の"Fleet Air Arm"、空自と紛らわしいけど米海軍と同じ"Naval Air Foerce"でしょう。

 階級制度についても、旧軍に倣うのであれば、陸空とは違う階級呼称にしないといけない。すると、兵曹、水兵になる。表には下士官の部はありませんでしたが、陸式な軍曹、伍長あたりはダメでしょう。特に伍長は、先任伍長と衝突するからダメ。今の今の海曹、海士でも、旧軍呼称と充分親和的なので、特に変える必要はないでしょうけれども。



※(1) 道下徳成「自衛隊の組織・装備の名称改正案」『外交』(外務省,2012.11)pp.134-141.
※(2) ◯◯には、連合艦隊なり自衛艦隊なり、明治初期みたいに中艦隊なり適当な語を入れればいいんじゃないですかね。
※(3) 大きい方から並べると、Fleet-Flottila-Squadron-Division-Sub Divisionの順番になる。日本語なら、艦隊-小艦隊-戦隊-隊-分隊かな。艦艇なら、Divisionで個艦ですね。
※(4)「航空集団」も空軍ぽくて嫌だ、「ホントは航空艦隊にしたかった」といった話が、うろ覚えですけど『水交』(だったか?)にありました。
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Comment

非公開コメント

基本的に、「米軍の用語を日本語でなんと報道しているか」に合わせるのが筋ちゃうんかなあ>呼称変更

Re: タイトルなし

 いやあ、慣習的にも訳語で米国のCNOは正確に「海軍作戦部長」、英国の1st Sealordは「第一海軍卿」ですからねえ。日本で「作戦部長」だと作戦部の長で、N-3になってしまうのでダメ、第一海軍卿は卿がダメで、明治時代の海軍大臣、「海軍卿」と衝突するのでダメですね。
 下士官兵の階級も、朝日でも正確に「兵曹長」「兵曹」「水兵」だから、日本海軍そのものにあわせてますね

> 基本的に、「米軍の用語を日本語でなんと報道しているか」に合わせるのが筋ちゃうんかなあ>呼称変更

No title

あの論文は、旧軍呼称の復活を目的にしたわけではないので軍令部とか航空艦隊になっていないのだと思います。確かに北部方面隊を北部方面軍(実際の規模も英語名も北部軍)とか誤りもありますが。海軍でも参謀部や海軍司令部の訳語を当てるしかない正式名称を使っている国もありますからし。
まぁ、新国軍の名称は他の国に合わせるくらいなら和名は旧軍を踏襲していいと思います。該当する組織や部隊があるなら。

お礼とコメント

貴重なご意見をくださり、ありがとうございました。日本海軍の伝統を考えるとご指摘の通りになるのですが、私の案では旧軍名称の復活が目的ではありません。「旧軍のことや軍事に詳しくない一般の日本人でも分かりやすい」というのが最大の目的です。従って、できる限り陸海空の名称をそろえて、各軍種の誰と誰が同じ立場にあるのか、どの組織とどの組織が同じような役割を果たしているのかが分かりやすいようにしております。韓国軍の名称はかなり私の案に近く、分かりやすいので参考になります。ちなみに、海軍についての墨田金属日誌さんのご指摘は鋭く、「Surface Action Group」という案は非常に魅力的ですね。日本語にすると「水上機動群」とかでしょうか。今回は、とりあえず「駆逐戦隊」という名称を提案をしていますが、本当はCVHが入っている部隊は、「空母機動群」、英語では「Carrier Action Group」とする予定です。ただ、そこまで論じるのは二段階先のことになるので、今回はとりあえず、「CVHはCVHと呼ぼう」という一段階先までの提案に留めたということです。墨田金属さんの案と組み合わせて、CVHの入っている部隊を「空母機動群 Carrier Action Group」と、入っていない部隊を「水上機動群 Surface Action Group」と呼ぶのも一案かも知れません。引き続き、貴重なご意見をお待ちしております。ありがとうございました。

Re: お礼とコメント

陸海空を揃えるとわかりやすいという点、納得させて頂きました。

しかし、陸海空、陸空はともかく、海は揃えにくいのですよ。准士官の扱いが違う、候補生の扱いが違う、英語での階級名が違うわけです。そもそも「部隊等の長」といったレベルで並列に揃えられないので、そのあたりは相当厳しいとおもいます。