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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.01
14
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13:00
Category : ミリタリー
 今、日本に上陸戦をかませる国がどこにあるのですかね。
 ゆとり上陸作戦の人が、10式戦車がないと国が滅ぶとか言っていたのです。10式の必要性として「[日本の]戦争継続目的がアメリカ軍の救援が到着するまで橋頭保を確保し続けること」と言っている。しかし、これって相当に古い感覚ではないですかね。

 今日、日本本土に攻め込める国はないことを理解していない。しかも、日本単独で対処できず、米軍の増援を待つほど強力な上陸軍を送り込める国なんてないでしょ。政治的にも日本本土に攻め込もうとする国はない。軍事的にも、中国にもロシアにもその能力はない。冷戦期、極東ソ連軍と対峙していた時代ならともかく、ソ連崩壊以降に日本本土上陸の脅威を持ちだしても、今更な話です。

 その上、「アメリカ軍の救援が到着するまで」持ちこたえると悲壮感に浸っている。これは、70-80年代の、平和憲法に縛られた弱体な自衛隊という感覚そのものです。悲壮感の発露は、80-90年代の自衛隊増強と、ソ連崩壊以降の東アジアの現状を理解していない事を示すものでもあります。

 日本に上陸してくるにしても、そもそもが、ゆとり上陸理論です。例えば「[日本海空戦力を]完全に撃滅せずとも局所的な優勢の元での揚陸は可能です。」「周辺国の軍隊のうち2つは空挺戦車まで降りてきます。」といったあたりです。

 局所的な優勢程度で対日上陸戦はできません。上陸作戦に必要な、制海と絶対的な航空優勢を理解していません。策源地から上陸海岸までの制海と、制空権といってもいいほどの絶対的航空優勢がなければ上陸作戦はまず不可能です。航空優勢という言葉が好きな御仁ですが、防御側も一時的・局所的な航空優勢をとれば、上陸海岸や上陸船団に打撃を与えることができることを理解していないのでしょう。日本側F-2やP-3が持つ、強力な対艦攻撃戦力の意味がわかっていないのです。

 また、空挺部隊で日本に侵攻できるという発想も、ゆとり空挺作戦でしょう。日本への大規模空挺作戦は、上陸戦以上に困難です。大規模な空挺作戦こそ、絶対的な制空権なしにはできるものではありません。それこそ、防御側の一瞬の隙をついた攻撃ですべてオジャンになってしまう作戦です。上陸作戦もそうですが、空挺作戦は一回こっきりの輸送で終わるのではなく、その後も補給物資を送り続けなければならないわけです。日本相手の戦いで、その間、ずっと「局所的な優勢」を維持できると考えるのは、相当に甘い考えです。

 旧ソ連やロシア通とのことですが、そもそも旧ソ連の空挺作戦は、国内の辺境への緊急展開や、第三世界への介入を狙った発想です。戦前ソ連が考えた、航空輸送の軍事的応用が空挺作戦です。今もそうですが、国内交通網が未発達なソ連は航空輸送に頼るしかなかったわけです。戦後も第三世界や衛星国への介入が、ソ連空挺部隊の大きな目的でした。この辺りは、80年代のソビエト・ミリタリー・スタディでデサント概念としてよく出ていた話です。ロシア軍事通を自負しながら、デサントの概念に弱いことは、対空挺地雷の件でも露見しています。

 何にせよ、対日上陸戦が可能でなければ、大事な10式戦車の必要性がアピールできないので困るのでしょう。対日上陸戦が可能であることを、支持者に仄めかすために、MLPを持ってきています。

 しかし、MLPを用いた上陸戦は、米軍でなければできないことです。形だけ作っても駄目で、海上に暴露し、不動のMLPを敵海空戦力から保護できなければ、敵前上陸には使えたものではありません。

 また、MLPで輸送での不効率も言及していないのは、海上輸送や港湾荷役をご存じないのでしょう。「ホバークラフトとヘリコプターによる港湾以外への揚陸が可能となります。」「MLPとAFSBはその後に直ぐ続いて揚陸に参加し、港湾を使用せずとも上陸部隊を支え続ける事が出来ます。」と書いています。しかし、大した量を詰めないACVやヘリでの往復輸送は、かつての沖仲仕そのもので、不効率です。

 沖掛かりから、ACV等での往復は、港湾やビーチングと代替できるものではありません。実際に「おおすみ」型輸送艦以降、海自は硫黄島への輸送でホバークラフトの低い輸送能力に難渋しています。「みうら」や「ねむろ」では、硫黄島輸送分の貨物はビーチングにより半日で卸せました。しかし、おおすみ+ACVでは、同量を1日で捌けず、積み残しも生じています。ACVやヘリの往復では、よほど多数を揃えない限りは、大規模な部隊を内陸侵攻させる輸送能力は実現しません。米軍でも、MLPで師団級の内陸侵攻部隊を支える貨物を捌くことは難しく、また経済的に許容できるものでもないでしょう。

 10式戦車に目が眩み、戦争全体を展望する視点を失ったのです。周辺国による日本への上陸戦は不可能です。蓋然性もないのですが、上陸戦を行なっても、日本海空戦力の前に頓挫します。さらに、奇跡的に上陸部隊が揚がって来たとしても、その後が続かないのでは、春の雪のように直ぐに溶けて消えてしまいます。ディエップでは戦車が揚がって来たと力説しますが、その戦車は日本で言う独混旅団程度に行きあたり溶けて消えてしまったわけです。

 10式があってもなくても同じ事です。すでに戦車定数の9割は90式戦車で占められています。90式と10式には大差はありません。まず、90式で勝てなければ、10式でも勝てません。10式でなければ、90式であれば日本が滅ぶということはないことです。
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Comment

非公開コメント

No title

戦車信者には何を言っても無駄ですね。
信仰ですから。

お説の通り、ロシアに全面的な侵攻してくるだけの軍事力の経済力もない。中国も同じ。

しかも未だにメルカバ4と10式のスカートの厚さの違もみとめない。確認したわけでもないのにメルカバのスカートは中空だ、だから10式のスカートが薄くてもいいのだとわめき立てる。
これも変な話で、ペラいスカートで済むならば、M1
もメルカバもレオパルトもあんな厚いスカートを装着する意味がない。

まっ、10式、自衛隊は常に正しいという胡乱なドグマを中心に自説を組み立てているからこうなる。
池田大作センセイが常に正しいという信じる人達と同じだわ。

彼らには90年代以降の陸戦の概念の変化も、防衛費には予算の上限があることも理解できない。

No title

#防御側も一時的・局所的な航空優勢をとれば、上陸海岸や上陸船団に打撃を与えることができる

それこそ制海・制空権をほぼ喪失した沖縄戦でも天山をうまく使って米戦艦に一撃加えたりしてますからねえ。
過去の戦史に学ぼうとしないのは悪弊ですよね。

現在の周辺国の戦力的に、虎の子の揚陸艦なり大型輸送艦なりに一発食らえば事実上そこで上陸戦は破綻する訳で、なんで中ロがそんなリスク背負ってまで日本に全滅予定部隊を送り込まなきゃいかんのか、理解に苦しみます。

てなことを言うと、決まって「中共やロシアの指導者が常に理性的だとは限らない!」みたいなアレな反応が返ってくるのですが、なるほど確かにゆとり上陸作戦の人達を見てると、人間とは理性を失い理不尽な行動に走る事があるんだなあと妙な納得をしてしまいました(笑)

No title

指導者が理性的とは限らない、となるとイギリス
やフランス、オーストラリアとかまで攻めてくることを考えないといけなくなるんですよね。

そもそも戦車教の人たちは上陸作戦でどれだけの
物資を消耗し、その補給がどれだけ難儀かもわか
ろうとはしません。

何しろはじめに10式の採用だけが正義ですからね。90式でいいでないかい?とでもいえば「こいつは戦車不要論者だ!」とレッテル張って攻撃する。理性がない人たちと議論はできませんよね。


No title

日本への陸上戦力揚陸能力があるかどうかだけで言えば、ロシアも中国も、韓国さえもあるわけで、それに対応する能力を持つってのは軍事原則からして当然のお話でしょう。
初期投入に1個連隊、港湾への橋頭堡確保後に3個師団が中国地方に揚陸されたばあい、中国地方のみならず近畿の一部まで侵攻を許す可能性があるとの図上演習の結果もあるわけですし。
初期の戦力配置の失敗も盛り込んだ、かなり可能性の低い演習ではありますが、可能性としてはあるわけですわな。、
戦車教なんて宗教をでっち上げて他人を貶めるより、現実としてなぜ必要と判断されたかを考えたほうがよほど理性的だし建設的だと思います

Re: No title

>日本への陸上戦 さん

出先なんで、単純に

> 日本への陸上戦力揚陸能力があるかどうかだけで言えば、ロシアも中国も、韓国さえもあるわけで、それに対応する能力を持つってのは軍事原則からして当然のお話でしょう。

規模があまりにも小さすぎるので、今の陸上戦力で充分に対応出来ます。10式が必要とする理由にはなりませんね


> 初期投入に1個連隊、港湾への橋頭堡確保後に3個師団が中国地方に揚陸されたばあい、中国地方のみならず近畿の一部まで侵攻を許す可能性があるとの図上演習の結果もあるわけですし。

図上演習の想定は、恣意的ですから。やったことがあればわかりますけど、日本側の身の丈に合わせた敵を作為して、だいたいパリティになるくらいの状況から始まるのです。統幕の時、シナリオ作る部署の隣室にいたことあるのですけど、まあ、本人たちが笑うほど敵を嵩上げしてます。
あと、陸上関係の演習で言えば、昭和30年台の想定には関東平野での戦いがありました。それを演習があったとする理由で「可能性としてはあるわけですわな」とおっしゃりますか?


> 戦車教なんて宗教をでっち上げて他人を貶めるより、現実としてなぜ必要と判断されたかを考えたほうがよほど理性的だし建設的だと思います

戦車教をでっち上げたのは、教祖様のほうですね。あとm10式が開発されたのは官僚機構的な惰性でしょ。だから、現実的には、三菱を殺さないための16両しか要求できず、しかも14両しか認められないわけで。

No title

>戦車教

だって宗教でしょう。現実を見ずに、10式は7億円だ、他国の60~70トンもある防御重視の戦車と
同じくらいの防御力があると主張するしね。
戦車は必要といって、随伴する装甲車やISRに必要なUAVとまで必要という頭さえなく、とにかく戦車があれば戦争に勝てると口泡飛ばしている。

戦車という手段が目的化しているんだよね。

これを「宗教」と言わずになっという?


No title

まっ、能力からいったら唯一本土上陸作戦ができるのは米国。
米国にこそ備える必要があるんじゃないの、戦車教の人たち。

No title

10式に関する両陣営(?)の論争は、陸自の装備に関する保守派と革新派の論争と興味深く拝見させていただいております。どちらもまだ行われていないように思うのですが、こういったことをやってみれば話がある程度整理できるのではないでしょうか。
90式を日本列島のどんな場所へどの程度の規模でどの程度の迅速性・安全性を持って戦略機動(配達とも言う)できるのか、そういった検討です。その結果として、歩戦共同が成立しうるなら(通過可能な橋の話はさておき)10式の早急な取得の必要性は説得力を失うわけでしょう。着上陸がある、いや、無い、その今の論争の現状の補強にもなると思います。いかがでしょうか。

No title

単に一定の能力があるというだけなら、英仏の戦車上陸にも備えないとねえ。

しかし74式の寿命も近いですし10式は必要でしょう
 中学の同期が陸自に入隊して90式戦車と実際に戦ったのですがあっさりやられたそうでトラウマになったそうです(何をされたんだ(笑))
 10式はゲリラ戦に力を入れていて軽量コンパクトで道路も壊れにくいし(道路を壊すといろいろまずいんで)いい兵器だと感じるのですが・・・
 対戦車ヘリも天候によってはつかえませんしやはり必要なのでは?