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- » 2023 . 03
Category : ミリタリー
中国防空網を日本のそれと同じと考えるのは、思慮が足りないのではないかな。
中国に対して巡航ミサイルが通用しないと主張する人がいる。「亜音速の巡航ミサイルなんて中国軍レベルの相手には殆ど通用しない事が判明してる」と言っている。これは、中国防空網が日本のように密であり、すべての超低空目標を見逃さないと思い込んだ結果の誤ったものだ。
第一、中国側の防空網は密ではない。
実際に、チベットはザルである。チベットにはついこの間まで、旧式戦闘機しかなかった。J-10が配備されたのは最近である。面積に比して、飛行場も少ない。レーダ・サイト配置等について詳細は分からない。だが、戦闘機も飛行場も少ない低開発地域に、厳密な対空警戒網があるとは考えられない。
おそらく、雲南省や新疆、ウイグルも似たようなものだろう。冷戦期に、米国偵察機はパキスタン経由で新中国となった新疆に入り、そこからソ連に侵入していた。これは、前に情報公開された史料が米公文館紀要"Prologue"に掲載されていた。中国は、ラオスからミャンマーまでの国境地帯も掌握しきっていない。最近でも、カレン民族を討伐するミャンマー軍航空機が越境攻撃したているが、中国は目視でどうにか確認できたにすぎない。
チベット、新疆、雲南、おそらく北朝鮮国境には、大した中国防空網はない。そこから巡航ミサイルは容易に侵入できる。仮に米国が攻撃するとした場合、第三国の領空はそれほど尊重しない。中央アジアや南アジア、東南アジア各国の領空はそれほど尊重されない。米国は冷戦期やベトナム戦争で、管理できていない他国領空を経由した偵察や爆撃を行なっていた。最近の例でも、パキスタンの主権を尊重せずにウサマ・ビン・ラディンに攻撃をしている。北朝鮮に関しては、未だ戦争中であり、国家としても未承認である。その領空を意に介する必要もない。
一度、侵入された巡航ミサイルを追尾できるかも怪しい。中国の国土は広大である。防空警戒網が大都市や重要施設周辺以外にあるとは考えられない。重要な地点を除けば、超低空目標を確認するレーダ網を整備する余裕もない。AWACSはなく、AEW/Cも実験機の域をでていない。数も少ないので全土をカバーすることもできない。
日本のように、隙間なく防空網を設定できる国は例外である。大面積の国で完全カバーできる国はない。旧ソ連/ロシア、北米、オーストラリアとも、レーダ覆域には影がある。旧ソ連/ロシアも、極東・北極海方面はザルであるのはご承知の通り。北米であっても完全にレーダ覆域に収まっていない。オーストラリア空軍機が短波通信を常用していたことも、極超短波による防空通信網がないことの裏返しである。
「亜音速の巡航ミサイルなんて中国軍レベルの相手には殆ど通用しない」と言い出すのは、中国防空網が日本のそれと同じだと思い込んだ結果である。もともと、個別の兵器の、そのスペックだけを執拗に見るが、背後にあるシステムは全く見ない御仁である。最新戦闘機であるJ-10、J-11があることを見て、「シュートダウンできるから巡航ミサイルは敵ではない」と思い込んだのだろう。「水陸両用戦車が新しいので、74式戦車ではどうやっても勝てない」と言い出したように。
Haight,David"Ike and His Spies in the Sky""Prologue"2009 Winter (NARA,2009)p21
中国に対して巡航ミサイルが通用しないと主張する人がいる。「亜音速の巡航ミサイルなんて中国軍レベルの相手には殆ど通用しない事が判明してる」と言っている。これは、中国防空網が日本のように密であり、すべての超低空目標を見逃さないと思い込んだ結果の誤ったものだ。
第一、中国側の防空網は密ではない。
実際に、チベットはザルである。チベットにはついこの間まで、旧式戦闘機しかなかった。J-10が配備されたのは最近である。面積に比して、飛行場も少ない。レーダ・サイト配置等について詳細は分からない。だが、戦闘機も飛行場も少ない低開発地域に、厳密な対空警戒網があるとは考えられない。
おそらく、雲南省や新疆、ウイグルも似たようなものだろう。冷戦期に、米国偵察機はパキスタン経由で新中国となった新疆に入り、そこからソ連に侵入していた。これは、前に情報公開された史料が米公文館紀要"Prologue"に掲載されていた。中国は、ラオスからミャンマーまでの国境地帯も掌握しきっていない。最近でも、カレン民族を討伐するミャンマー軍航空機が越境攻撃したているが、中国は目視でどうにか確認できたにすぎない。
チベット、新疆、雲南、おそらく北朝鮮国境には、大した中国防空網はない。そこから巡航ミサイルは容易に侵入できる。仮に米国が攻撃するとした場合、第三国の領空はそれほど尊重しない。中央アジアや南アジア、東南アジア各国の領空はそれほど尊重されない。米国は冷戦期やベトナム戦争で、管理できていない他国領空を経由した偵察や爆撃を行なっていた。最近の例でも、パキスタンの主権を尊重せずにウサマ・ビン・ラディンに攻撃をしている。北朝鮮に関しては、未だ戦争中であり、国家としても未承認である。その領空を意に介する必要もない。
一度、侵入された巡航ミサイルを追尾できるかも怪しい。中国の国土は広大である。防空警戒網が大都市や重要施設周辺以外にあるとは考えられない。重要な地点を除けば、超低空目標を確認するレーダ網を整備する余裕もない。AWACSはなく、AEW/Cも実験機の域をでていない。数も少ないので全土をカバーすることもできない。
日本のように、隙間なく防空網を設定できる国は例外である。大面積の国で完全カバーできる国はない。旧ソ連/ロシア、北米、オーストラリアとも、レーダ覆域には影がある。旧ソ連/ロシアも、極東・北極海方面はザルであるのはご承知の通り。北米であっても完全にレーダ覆域に収まっていない。オーストラリア空軍機が短波通信を常用していたことも、極超短波による防空通信網がないことの裏返しである。
「亜音速の巡航ミサイルなんて中国軍レベルの相手には殆ど通用しない」と言い出すのは、中国防空網が日本のそれと同じだと思い込んだ結果である。もともと、個別の兵器の、そのスペックだけを執拗に見るが、背後にあるシステムは全く見ない御仁である。最新戦闘機であるJ-10、J-11があることを見て、「シュートダウンできるから巡航ミサイルは敵ではない」と思い込んだのだろう。「水陸両用戦車が新しいので、74式戦車ではどうやっても勝てない」と言い出したように。
Haight,David"Ike and His Spies in the Sky""Prologue"2009 Winter (NARA,2009)p21
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