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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.01
24
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13:00
Category : ミリタリー
 「重油は軽油よりも4-8倍も高い」わけではない。桜林美佐さんが「日本を守るためのやりくり」※で、以前に話題になった旧式護衛艦の巡視船転用について述べている。確かに、護衛艦を巡視船に転用しても使い安いものではない。人手が少ない海保にはマッチするものではないことは、世間で言われているとおりである。しかし、桜林さんが主張する理由は、あまりにも珍妙である。

 桜林さんは、取材対象等から聞いたことを確認していないのだろう。護衛艦を巡視船に転用する理由として、燃料と船体を挙げている。だが、どちらも奇妙な数字である。燃料に関しては、軽油と重油の理解がおかしい。船体では、例えば小型巡視艇と比較的大型の護衛艦の船価を比較している。

 桜林さんは、護衛艦と巡視船を比較する上で、まず燃料を挙げている。
[自衛艦と巡視船の]双方の違いは著しいのですが、似たものではないかと認識されている方も多いようで、その点を明らかにしなければなりません。
まず、海保の巡視船などは商船規格であり、エンジンはディーゼル、燃料はA重油です。一方、海自[の自衛艦]はダメージコントロールを施したものであり、エンジンはガスタービン、燃料は軽油です。
ざっと燃料経費だけを見ても、軽油を使用すると4〜8倍はかかると見込まれます。
   (「日本を守るためのやりくり」から、オリジナルでは改行は6行連続している)
しかし、海保がA重油利用であると断じた点、自衛艦と護衛艦を混同している点、燃料経費についての数字で全く確認しているように見えない。

 海保は軽油で動いている。海保も軽油がメインであることを確認していない。海保船艇の84%は課税軽油を使用している。※※ 残りのA重油の中身は軽油そのものであることも確認していない。A重油は税制上重油としているだけで、中身も価格も軽油である。加熱しないとエンジンに突っ込めないC重油ではない。

 桜林さんは自衛艦と護衛艦を混同している。素人なら仕方がない話だが、防衛問題を論じ、しかも、広報同様の仕事をしているなら、両者は区別すべきだろう。自衛艦は掃海艇や潜水艦、また支援艦艇である補給艦を含む概念である。数的には護衛艦よりも多い。また、掃海艇以下は、概ねディーゼルがメインである。つまり自衛艦と括った場合にはガスタービンよりもディーゼルのほうが優勢になる。

 一番不思議な点は「燃料経費だけを見ても、軽油を使用すると4〜8倍はかかると見込」むことである。燃料価格をみても、重油はそんなに安くない。非課税であるが、A重油で1リットル90円、C重油で70円程度する。軽油は課税で120円、非課税で90円程度である。ガスタービンとディーゼルの燃費で比較しても「4〜8倍」の差は開かない。1馬力あたり燃料消費量も、経済運転しているガスタービンで180g/時間、ディーゼルで130g/時間程度で、比較しても半分にもならない。

 桜林さんが理由として挙げた燃料に関しては、いずれも誤っている。おそらく聞いた話を確認しないで使った結果である。

 また、船体関連でも同じような誤りがある。
オーバーホールは海保の船がだいたい1億くらいと言われますが、海自では40~50億円くらいはかかるでしょう。
寿命的にも、護衛艦は延命しても10年そこそこ、巡視船は30年余はもたせています。海保の船を新造するのに約40億円として、護衛艦の武器を降ろすなどの改修費用と延命費用合わせて約50億円くらいと、大雑把ではありますが計算してみると、新造のほうが安いということにもなります。
   (「日本を守るためのやりくり」から、オリジナルでは改行は6行連続している)
この桜林さんの主張は、新造・改装費について、寿命について、オーバーホール費用について、比較が妥当ではない。

 新造・改装費は、小型巡視艇と大型の護衛艦を比較している点で妥当ではない。「海保の船を新造するのに約40億円」とあるが、40億程度では小型船艇しか建造できない。「とから」程度の300総トン程度を建造するのがいいところである。そして「護衛艦の武器を降ろすなどの改修費用と延命費用合わせて約50億円」は、2000トンの「あぶくま」や3000トンの「ゆき」を延命するための費用である。桜林さんは、300総トンの「とから」と3000排水トンの「しまゆき」を「大雑把ではありますが計算」している。ちなみに大型巡視船「しきしま」の建造費は350億円程度であり、システムや武器を除いた護衛艦新造費用と大差はない。

 寿命についても、桜林さんは船体そのものの寿命だと勘違いしている。おそらく、海自25年+延命10年、海保25年+延命30年と見ているのだろう。しかし、どちらも船体は同じ造船所で作られ、寿命上大差はない。どちらも50年以上持たせることは可能である。この護衛艦と巡視船の延命寿命にある差異は、海自と海保の予算額での差異に過ぎないことを理解していない。海自は予算が潤沢である。このため、新造艦更新は世界で一番短い。結果として、海自は艦艇を船体・機関寿命以前に早期退役させているだけである。海保は国交省の下にあり、予算上、冷や飯食いであるため、新造艦更新は世界標準である。このため、艦艇寿命も世界標準になっているだけの話にすぎない。

 オーバーホールに関しても勘違いしている。費用の差は、護衛艦と巡視船の構造や機関にある差ではない。船体寿命と同じで「どの程度までやるか」といった話に過ぎない。安く上げるため、エンジンや補機をバラして整備するに留めるか、配管やバルブを全部交換し計装を新型化するかの差異である。「海保の船がだいたい1億くらいと言われますが、海自では40~50億円くらいはかかるでしょう。」といっている。だが、仮に海自の護衛艦を海保に譲渡した場合には、費用をケチることになるので同じである。

 桜林さんの主張や意見は、悪い言い方だが、聞きかじった話をそのまま文字にしているようにしか見えない。桜林さんが自分で確認し、調べ、考えるといった過程を足さない限りは、市ヶ谷あたりの居酒屋、陸の通信が大好きな「うなぎ焼き鳥宮川」あたりで聞いた話をそのまま記事にしているようなものである。燃料の話にせよ、船価の話にせよ、酒席ででるような話を確認しないような内容になっている。度を過ぎた自衛隊擁護や愛国主義も良いが、記事とするには、その辺りを確認してからにしたほうが良いだろう。



※ 桜林美佐「日本を守るためのやりくり」http://ameblo.jp/misakura2670/entry-11453503869.html
※※ 国土交通省「軽油引取税の課税免除措置について」http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/12/06/23zen23kai5.pdf 2頁に「・海上保安庁の巡視船艇の大半(84%)が軽油を燃料としており」とある
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