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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.02
19
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13:00
Category : ミリタリー
 桜林美佐さんには、国産でなければならない理由を挙げられない。性能や価格よりも国産であることが大事と主張しているが、理由は情緒・感傷的なものにすぎない。

 桜林さんは、日本のパイロットは『死ぬなら、日本人の造った飛行機がいい』と考える。自衛隊員が外国製の飛行機に乗ると、体格や気質が合致せず、国産ではないことでストレスを感じ、ついには任務に集中できなくなる。桜林美佐さんは「UH-Xが絶対に必要である」と主張しているが、必要であるとする説明は、このような精神的なものだ。

 桜林さんは「陸自多用とヘリ『UH-X』は絶対に必要だ」※ をテーミス2月号に載せている。必要性については、既に述べたパイロットの精神的な問題をメインに据えている。
そもそも外国人の体型や気質に合わせて造られたものは、日本人にとって違和感のあるものも多い。
 「死ぬなら、日本人の造った飛行機がいい」

 機体に命を預けるパイロットたちのそんな正直な思いも技術者は受け入れる。任務に集中するための適合性は、安全性を担保する重要な要素なのだ。
   (太字部分、改行場所、段落はオリジナルと同じである)
しかし、これはあまりにも説得力に欠ける。

 今の外国製航空機で、日本人との体格差が問題になることはない。※※ 昔であれば、日本人の体格は大きく劣っていたが、今は西欧人と大差はない。実際に、製造国壮丁の体格と、日本人の体格は同じようなものだ。外国製ヘリコプターは、米国製か、仏国の影響の大きな欧州製である。米仏とも、確かに日本よりも背が高い人も多い。だが、背が低目の人も少なくなく、平均から低め側の体格は日本人と変わらない。

 航空機に気質が与える影響にしても、むしろ運用レベルでは外国製の方がよい。日本製航空機は複雑巧緻である、ある程度、日本的気質が影響したものである。しかし、現場ではシンプルであり、フール・プルーフを徹底する外国製機体の設計思想を好ましいと捉えられている。例えば、シーキングは、系統にあわせてオイルの色を換え、プラグ類はその場所にしか挿さらない星形(★)であったことは、古い整備幹部や整備員が絶賛する点である。

 『死ぬなら、日本人の造った飛行機がいい』というのは、桜林さんのイメージか、あるいは設計側の冗談を真に受けたものだろう。パイロットにとっては、高性能で信頼できる航空機がいい航空機である。なにより、死なない航空機が一番である。どこ製であるかは気にしない。

 桜林さんのイメージする自衛隊パイロットは、相当に戯画的にしか見えない。あるいは、神風連の乱を起こした敬神家のようなものか。文明開化を拒否した彼らは、西洋から輸入された電信線の下を通るときに、頭の上を扇子でカバーしたという。西洋の毒、ウエスタン・ポイズンを避けるためである。

 桜林さんが「UH-Xが絶対に必要である」と主張する理由は、ほかにもある。「UH-Xがないと、尖閣まで飛んでいけるヘリが手に入らない」(大意)とか「故障した部品修理に長時間かかる」(大意)、「随意契約の方がコスト削減に寄与する場合も少ないくない」(大意)といったものだ。

 しかし、UH-Xがなければ尖閣まで飛んでいくヘリがないという認識は正しくない。輸送ヘリはUH-1とUH-Xだけではない。陸自に限っても、CH-47やUH-60がある。

 部品修理に長時間かかるというのは、契約形態等による問題である。FMSによる手続きや調達時期のタイミングを指しているのだろう。しかし、直接発注で解決する問題も多い。そもそも、補用品そのほかを準備すれば済む話である。

 随意契約のほうがコスト削減につながるという主張は、練習機T-7導入での実例を無視したものである。当初の随意契約から競争入札となり、候補にスイス製練習機が現れると、富士重工は入札価格を当初随意契約の半分近くまで下げている。やはり競争入札はコスト削減につながるのである。

 この記事は結語も奇妙に見える。「この問題[UH-Xの開発談合]の最大の矛盾と感じるのは」「起訴された陸自の2人であり」「川崎重工に情報を提供した。それなのに罪に問われたという事実だ」とある。「矛盾」が「2人であり」という掛かり方も国語的にも奇妙であるが、それはさておく。それよりも、入札者である川崎に、競争相手の富士重工の「情報を提供した」のに「罪を問われた」点に矛盾を感じるところが奇妙である

 これは相当に感覚がズレている。 桜林さんは「談合をしたら罪に問われた」という部分を矛盾であると感じていると述べているのである。しかし、入札情報を漏らすことと、その人間が罪に問われることには矛盾はない。桜林さんのいう矛盾という言葉が使えるのは「談合を回避しようとしたら、罪に問われた」ときだろう。

※ 桜林美佐「陸自多用とヘリ『UH-X』は絶対に必要だ 自衛官が官製談合法違反で略式起訴されたが飛行機も国内開発・生産がベストだ」『Themis』(2013.2,テーミス)pp.80-81

※※ 昔、NTTが電話を独占していた頃、貿易摩擦絡みで外国製電話機の売り込みを受けた時「日本人は骨格が違うので、送受話器が大きな外国製電話機は使えない」と嘘をついたらしい。でも「頭が小さな子どもも大人向け電話機が使えるだろ」と後に反論されたとかいう。
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No title

早い話が産業政策上の保護政策なんですけど、建前上自由貿易主義なのと、例外的な保護主義政策は実際のところ認められてるのですが対(欧)米配慮なのでしょうね。

報復で自動車や一般機械などに不利な規制をやられたら産業界が(金額的にもはるかに大きいので)困りますし

米政治家・有力ロビー勢力に問題視されてかわせる政治力も日本側業界にはない上に、ボーイングなど米大手航空機メーカーは重要なお得意様でもありますし