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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2013.04
26
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13:00
Category : ミリタリー
 「通説」の問題点を突きたいのだろうが、「28榴は威力を発揮した」に対して「28榴は威力を発揮できなかった」とするのは乱暴ではないか。

 田中さんと松沢さんの「露軍旅順艦隊沈没原因調査」は、日露戦争での28サンチ榴弾砲の威力を重大視する通説に対して、その威力を冷静に見直そうとする、興味ふかい内容である。旅順では28榴は大きな効果を挙げたものの、28榴で勝ったとまでの評価は短絡的過ぎる。陸戦でも、他の砲も各種投入され効果を挙げており、また赤城艦による公算射撃も在泊艦艇に被害を与えている。

 しかし「28榴の威力・効果を発揮できなかった」とする主張は「28榴で勝った」とする主張同様に、短絡的である。28榴が威力を発揮したという「通説」の問題点を突きたい様子であるが、威力を発揮したことは否定できない。

 田中さんと松沢さんは、日露戦争で28サンチ榴弾砲は露軍艦を沈没させることができなかったとする問題提起をしている。傍証として陸軍調査に基づく不発弾問題や船底を貫通しない問題を挙げている。しかも初速と存速と撃角について※※ の砲外弾道学の微積分を提示しているのだが、どうもピントがズレているように思える。

 28榴は露軍艦を轟沈させなければならなかったわけではない。旅順港内に隠れている露軍艦の戦闘能力、あるいは航洋能力を奪えば十分である。特に轟沈せずとも、緩慢に沈めてもいいし、撃破するだけでもよい。

 もともと28榴は、すでに旧式化しつつあった要塞砲である。開発は日清戦争以前であり、しかも習作といってよい。砲弾も質量効果でまず貫通させることを狙っている。高品質な鋼材でできた砲弾と確実に動作する信管で轟沈させることは、当時の技術では望むべくもない。

 また、日本の要塞は、海峡系に作られており、通峡を阻止できればそれで良い。一発で轟沈させるに越したことはないが、それは二義的である。また、当時としては、軍艦を轟沈させるのは砲ではなく、新兵器である水雷(海軍水雷営が運用)に期待されていた。

 その28榴で、露艦艇を轟沈できなかったことで「28榴が威力を発揮できなかった」とするのは乱暴である。むしろ、旧式で弾道すら怪しい28榴が、その弾薬質量で露艦艇を戦闘不能とした点は評価すべきだろう。信管不調や炸薬未発火といった問題はあったが、28榴は、露艦艇を戦闘不能にするという、期待された効果を充分発揮できたのである。

 本当に主張したいことは、陸軍が科学技術を重視していた部分陸軍が困難な砲外弾道学を研究し、充分に活用しているという部分なのだろう。しかし、それを主張する上で、無理に通説※※※ との違いを強調するため「28榴は威力を発揮できなかった」は、乱暴ではないだろうか。



でも、陸軍調査の中身を紹介する面白い論文です、一読をオススメ!



※ 田中道彦. 松沢邦彦「露国旅順艦隊沈没原因調査」『技術史教育学会誌』(日本技術史教育学会誌編集委員会,2009.9)pp.40-45

※※ 初速と存速と撃角に齟齬が、横転弾まで船殻内に貫通しているのだから、あまり意味は無いのではないかと。

※※※ 社会科学系や人文科学系だと、通説と異なる点をもって新発見であるとしないといけないので、仕方がない部分かなあと。オマエの提出論文どうだったと言われるとね。
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半藤じいさんの日露戦争本で、「実は9月30日に行われた28榴の砲撃で旅順艦隊に止めを刺していた。ロシア側がボロ舟の大群と化した旅順艦隊を28榴の射程外に移動させたため、日本側は旅順艦隊はまだ健在だと誤認し、203高地攻略にシフトすることへ。」みたいな事が書いてあったのを思い出した。