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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.05
05
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13:00
Category : ミリタリー
 硫黄島の手当は大きい。現号俸の2割だか3割だかが付く。さらに五月蝿いことを言われないこともあり、行きたがる奴は多い。

 中でも、2-3年の硫空基勤務を3回も4回も繰り返す海曹がいた。50寸前なんだが、30年に満たない勤務期間のうち10年以上を硫黄島で暮らしていることになる。要は借財を作るたびに硫黄島に行っていた。

 その海曹が帰ってきた。分隊士だったので、初めて会うときには借財は面倒だなとおもっていたのだがね。そこらへんで拗ねているわけでもないので安堵したよ。

 仕事ぶりは悪くない。ややトッポイ感じはあるものの、海士にも海曹にも幹部にも人当たりは良い。北海道出身らしく、仕事を頼めば、まあ命令すれば必ず一言いう。場合によればそんなの無駄ですよというものの、やってくれる。

 ただねえ、パチンコが大好きなのがアレだった。前世紀でパソコン等についての管理がうるさくない時分だったので、仕事の合間にはパチンコのエミュレーション?のソフトや、無印PSでパチンコのゲームをやっていた。

 最初は事務仕事ができなかった。押して頼めば、やり方と基準を教えれば、在庫の拾い出しや、作業員割付なんかやってくれる。だが、成果品が手書きなのが困った。その場限りの文書ならいいのだけど、雛形に足していく感じだと再入力しなければならない。図面なんかも、CADじゃないから転用ができないし、角度や長さが怪しいので面積の拾い出しも怪しくなる。

 そこで、司令部での臨時勤務に放り込んだんだ。さすがにワープロと表計算くらいはできるようになるだろうと踏んでのこと。

 さすがに何もできない状態で放り込むのは先方に悪すぎる。准尉と先任に頼んで、待機所で若手士長、海曹を使って、使い方を教えるようにしておいた。

 その後に群司令部に放り込んで、多量の事務仕事を捌く状態に放り込んだ。

 それが本人のストレスになったのかね。パチンコ通いが悪化して、持っているお金以上に入れこむようになったらしい。

 硫黄島から戻ってから着任して1年たつかどうかの頃だったか、准尉と先任が「班長チョット、ショップまで」と己を呼ぶ。「なんですか?」と行くと、件の海曹がしおらしく座っている。何かあったのかねと思いながら席に付くと、先任が海曹に「話せ」という。

 話の切り出しは覚えていないが、チョット借財がという内容。そのチョットが、あまりチョットではない。膨大ではないが、とても少額ではない。本人は大した額ではないというものの、1年間水を呑んで暮らしても返せない程度の額。

 本人を帰らせたあとで、己と准尉と先任で相談。要は「硫黄島に行きたい」と言い出したらしい。だがねえ、戻ってきて1年で放り込める場所でもない。年齢と階級と技能が吊り合わない部分があるので、行かせても仕事がないとのこと。

 事務所に戻って赤表紙(人事記録)と「申し送り」を持ってくると、見てはいけない先任が席をはずす。先任は黒表紙(簡略版)しか読めない仕組みなんだが、赤表紙や申し送りに書かれている中身は悉皆知っている。本人を10年以上見知っている准尉(承認10何年目だった)の解説付きで確認をすると、なるほど合点がいく。

 先任を呼び戻すと「悪い奴じゃないけど、どうしょうもないでしょ」と笑いながら言う。先任が自販機で買ってきた缶コーヒーと、ストックしておいたお菓子で、感想めいた雑談をしていたのだがね。先任が「彼の息子も独り立ちしたから、あとは自業自得でいいんじゃないですか」と言った。

 海曹は息子を上の学校に行かせる必要もあった、だからみんなで頑張って硫黄島に放り込んだ。隊長・班長が硫黄島や総監部にとにかくお願いをした。実質の人事を握っている、王様と言われた近所の○○隊の司令にも准尉は裏から頼んだ。そうやって八方手をつくしてどうにか送り込んでいたのだが「本人は島に行けばどうにかなると甘えているんだからねえ」と准尉も苦笑しながら説明をする。

 とりあえず、己が硫黄島に相談した形にして、あとは先任が因果を含めることにした。当時の隊長がちょっとアレだったので、そこは簡単に説明してスキップするようにした。隊長は3級賞詞欲しさに、ネガティブな話は一切関わろうとしなかったので好都合。

 アリバイとして硫黄島に自衛隊電話を掛けると、先方の隊長だったか「席がないし、息子さんも社会人になったんだから、そこまで面倒見ることないよねえ」とのこと。硫黄島の隊長も「手伝うよ」とのとこで、島での先任から当の海曹に自衛隊電話を入れさせて因果含めることになった。その電話があった後なんだろう、こっちの先任から「島の先任から電話があって、その話を先任困りましたと言ってきたので、私も因果含めておきましたよ」と先任から連絡がある。

 本人は困った顔をしていたよ。硫黄島にいけばどうにかなると思っていたのが、上手くいかないのだからそうなるのだろう。だがねえ、借金作れば硫黄島に行けるという約束はどこにもない。誰を恨んでも仕方がない話。本人は天性気楽な性質なので、荒むこともないし、現実逃避で仕事はするから大丈夫と聞いていたが、確かに困った困ったを連発するものの、のんびりしたものだった。

 結局、本人曰くパチンコは止めて地道に返済するとのことだったが、先任も准尉も無理だろうと見ている。己もそうなんだろうなと思ったけどね。他にもスナック通いという癖があるのは別の海曹から聞いている。まあ退職金で充分返せる額だし。18や20の子供でもない。その日の勤務時間終わった後の行動は気にしなかった。

 その後、もう一度、返済計画の相談(分隊士はそういう面倒も見ることになっている)に来たのだがね。本人に返済計画表を作らせて(進歩あってエクセルで作った)、先任と准尉と己でそれを見て、おいおいこんなに節約できないだろうとか、ああだこうだいって終わりにしといた。定年時の退職金を計算しといた准尉がそれを見せながら「上手く行かなくとも、最後はコレで返せるから安心しろ、そのかわり家とか車とか買えないけどな」と言ってオシマイ。

 硫黄島手当もそうだが、艦艇や潜水艦、航空機といった手当を、最初から当て込むとエライ目に遭う。人生設計レベルの金勘定に盛り込むとロクな事にはならないということだね。なんせ、あぶく銭だからねえ。
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