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- » 2024 . 01
Category : ミリタリー
MCH-101の掃海能力を、MH-53Eよりも高いとする行政評価は怪しいものではないか?
防衛省の「平成23年度行政事業レビューシート」http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h23/pdf/r-sheet24/0048.pdfにMCH-101がある。行政事業レビューは、本来なら防衛省の事業を批判的にみるべきであり、その欠点や足りない部分も明らかにするべきであるが、そのような記述は一切ない。第三者である有識者を選んでやらせているが、その人選や事務局が予算要求元の省庁なのだからそうなるだろう。
行政レビューそのものも、もっと批判的にやって欲しいということはともかく。その中身に怪訝にも事実と異なるとなると、防衛省によるレビューそのものの信憑性はさらに低下する。
MCH-101の記述でヘンな点がある。掃海能力がMH-53Eに優るとする記述がそれだ。
掃海ヘリとしての能力は、単純に曳航能力で決まる。航空掃海は、掃海具を曳航するだけが仕事であり、能力はどれぐらいまで大きく、重い曳航具を曳けるかで決まる。もちろん、単純に軽い掃海具が低能力というわけではないが、重い掃海具でなければ効果を見込めない場合もある。たとえば、水圧掃海をやりたければ、いまのところコンクリート・バージか廃船でも曳くしかないが、曳航能力が低いヘリでは不可能である。掃海ヘリとしては曳航能力が高いものが、高い曳航能力を持つといってよい。
曳航能力だけでみれば、MH-53Eが西側トップである。エンジン出力を見ても、MH-53Eは15,000馬力であるのに対して、MCH-101は6000馬力に留まる。MH-53Eは、出力だけではなく、曳航具取り付け部も丈夫にできており、機雷原の中に取り残された1万排水トンクラスの艦船を曳航して脱出させられる。MCH-101では、1万トンクラスは曳航できるかどうかが分からない上に、その速力も低くなる。悪天候や海象悪化による抵抗に勝てるかどうかも怪しい。
実際に、MCH-101が曳航する掃海具は、簡易なものとなる。防衛省では掃海具についての具体的な発表はない。※※ Mk-104、Mk-105、Mk-106といった従来掃海具は運用が難しくなる。まだ具体的な発表はないが、繋維掃海具であれば、幅は狭くなる。磁気掃海具はおそらく発電機を伴うものではなく、DYAD掃海具やMOP掃海具のように永久磁石を縦に並べたものになるだろう。あるいは、TEM掃海と言われる船舶の磁気・音響を正確にエミュレートする小型の掃海具も使うかもしれない。※※※
もちろん、永久磁石でも役には立つ。航空掃海のメインは略掃、概略の掃海である。どこまで機雷が入れられているかを確認する。また、なんでも食い付くダボハゼ機雷の数を減らそうというものであるので、そこに問題はない。
ただし、掃海能力そのものは減る。掃海という手法そのものが通用しなくなっているが、Mk-104、Mk-105、Mk-106の掃海能力は、簡易な掃海具よりは高い。曳航能力が減少したMCH101を指して「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れた」とは言えない。
MCH-101を買う事自体は悪い話ではない。もちろん、MCH-101は悪い飛行機ではない。まず、稼働率が悪いMH-53Eに較べれば、安定して運用できる点は大進歩である。また、アビオニクスの進化により、掃海作業での操縦支援も進歩している。航空掃海は基本的に真っ直ぐ飛ぶだけで、掃海具の負荷に応じた調整や、曲がる所で曲がる程度の操縦しかしない。MH-53Eでも、航法支援や、未掃海面である「ホリディ」を防ぐための掃海線確認機能はあった。しかし、MCH-101であれば、設定にあわせて、ターンや出力調整もやってくれるようになる程度の進歩はあるだろう。
しかし、行政お手盛りの行政評価でMCH-101を褒めるときに、事実としても怪しい記述はすべきではない。役人作文であれば、劣っているものを「劣っていない」と修辞することはあっても、事実と異なることは書いてはいけないはずである。この点から見ても、「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れたMCH-101を整備する」という記述は、行政事業レビューへの軽視であるようにも見えるのである。
※ 「0042 掃海・輸送ヘリコプター MCH-101」『平成23年度 行政事業レビューシートの最終公表』http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h24/pdf/r-sheet/0042.pdf
※※ 具体的なポンチ絵では掃討メインにされている。曳航式ソーナー捜索具としてサイド・スキャン・ソナー、レーザー捜索具としてALMDSをつけている。おそらく、シー・アーチャー同等の使い捨て航空処分具も付けるのだろう。
ただ、この手の器材は従来ヘリでも使えるし、普通の汎用ヘリにも搭載可能である。米軍のALMDSほかも、モニター画像を乗員が機上解析する手法で行われる。
※※※ TEM掃海は、いいとこづくめに見えるのだが。エミュレートが正確すぎるので、逆に機雷の設定がエミュレートした船舶を除外する条件では、機雷除去ができない。
防衛省の「平成23年度行政事業レビューシート」http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h23/pdf/r-sheet24/0048.pdfにMCH-101がある。行政事業レビューは、本来なら防衛省の事業を批判的にみるべきであり、その欠点や足りない部分も明らかにするべきであるが、そのような記述は一切ない。第三者である有識者を選んでやらせているが、その人選や事務局が予算要求元の省庁なのだからそうなるだろう。
行政レビューそのものも、もっと批判的にやって欲しいということはともかく。その中身に怪訝にも事実と異なるとなると、防衛省によるレビューそのものの信憑性はさらに低下する。
MCH-101の記述でヘンな点がある。掃海能力がMH-53Eに優るとする記述がそれだ。
点検結果
[略]
3 有効性
MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れたMCH-101を整備することで、掃海艦艇が配備されていない港湾、水路等における機雷脅威
への緊急的対処及び掃海艦艇に脅威となる機雷への対処等を行うとともに、輸送任務として、機上水上部隊等に対する人員、物資輸送等
の任務支援を安全確実に対応できるとともに、将来の高性能化した対象目標に有効に対処できる。
掃海ヘリとしての能力は、単純に曳航能力で決まる。航空掃海は、掃海具を曳航するだけが仕事であり、能力はどれぐらいまで大きく、重い曳航具を曳けるかで決まる。もちろん、単純に軽い掃海具が低能力というわけではないが、重い掃海具でなければ効果を見込めない場合もある。たとえば、水圧掃海をやりたければ、いまのところコンクリート・バージか廃船でも曳くしかないが、曳航能力が低いヘリでは不可能である。掃海ヘリとしては曳航能力が高いものが、高い曳航能力を持つといってよい。
曳航能力だけでみれば、MH-53Eが西側トップである。エンジン出力を見ても、MH-53Eは15,000馬力であるのに対して、MCH-101は6000馬力に留まる。MH-53Eは、出力だけではなく、曳航具取り付け部も丈夫にできており、機雷原の中に取り残された1万排水トンクラスの艦船を曳航して脱出させられる。MCH-101では、1万トンクラスは曳航できるかどうかが分からない上に、その速力も低くなる。悪天候や海象悪化による抵抗に勝てるかどうかも怪しい。
実際に、MCH-101が曳航する掃海具は、簡易なものとなる。防衛省では掃海具についての具体的な発表はない。※※ Mk-104、Mk-105、Mk-106といった従来掃海具は運用が難しくなる。まだ具体的な発表はないが、繋維掃海具であれば、幅は狭くなる。磁気掃海具はおそらく発電機を伴うものではなく、DYAD掃海具やMOP掃海具のように永久磁石を縦に並べたものになるだろう。あるいは、TEM掃海と言われる船舶の磁気・音響を正確にエミュレートする小型の掃海具も使うかもしれない。※※※
もちろん、永久磁石でも役には立つ。航空掃海のメインは略掃、概略の掃海である。どこまで機雷が入れられているかを確認する。また、なんでも食い付くダボハゼ機雷の数を減らそうというものであるので、そこに問題はない。
ただし、掃海能力そのものは減る。掃海という手法そのものが通用しなくなっているが、Mk-104、Mk-105、Mk-106の掃海能力は、簡易な掃海具よりは高い。曳航能力が減少したMCH101を指して「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れた」とは言えない。
MCH-101を買う事自体は悪い話ではない。もちろん、MCH-101は悪い飛行機ではない。まず、稼働率が悪いMH-53Eに較べれば、安定して運用できる点は大進歩である。また、アビオニクスの進化により、掃海作業での操縦支援も進歩している。航空掃海は基本的に真っ直ぐ飛ぶだけで、掃海具の負荷に応じた調整や、曲がる所で曲がる程度の操縦しかしない。MH-53Eでも、航法支援や、未掃海面である「ホリディ」を防ぐための掃海線確認機能はあった。しかし、MCH-101であれば、設定にあわせて、ターンや出力調整もやってくれるようになる程度の進歩はあるだろう。
しかし、行政お手盛りの行政評価でMCH-101を褒めるときに、事実としても怪しい記述はすべきではない。役人作文であれば、劣っているものを「劣っていない」と修辞することはあっても、事実と異なることは書いてはいけないはずである。この点から見ても、「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れたMCH-101を整備する」という記述は、行政事業レビューへの軽視であるようにも見えるのである。
※ 「0042 掃海・輸送ヘリコプター MCH-101」『平成23年度 行政事業レビューシートの最終公表』http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h24/pdf/r-sheet/0042.pdf
※※ 具体的なポンチ絵では掃討メインにされている。曳航式ソーナー捜索具としてサイド・スキャン・ソナー、レーザー捜索具としてALMDSをつけている。おそらく、シー・アーチャー同等の使い捨て航空処分具も付けるのだろう。
ただ、この手の器材は従来ヘリでも使えるし、普通の汎用ヘリにも搭載可能である。米軍のALMDSほかも、モニター画像を乗員が機上解析する手法で行われる。
※※※ TEM掃海は、いいとこづくめに見えるのだが。エミュレートが正確すぎるので、逆に機雷の設定がエミュレートした船舶を除外する条件では、機雷除去ができない。
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Comment
19:37
エンリステッド
URL
編集
101ですが、ひょっとしたら掃海任務については余り優先というか重視をしてないのではないでしょうか?
無論掃海任務にも投入するでしょうが、それ以外の例えば、「特殊戦」やらその他の今どきも任務が期待されているのではないでしょうか?
確かに馬力は小さいですが、艦上運用可能な輸送ヘリとして考えれば101は有力なヘリです。それも53と違って全ての飛行甲板に降りることができる。
戦車より国益に繋がる装備品でしょう。
Re: タイトルなし
20:17
文谷数重
URL
編集
前の-53Eもそうでしたよ。電脳仕事でやらされた大戦略モドキで「(担当した)掃海以外でも現地で使うでしょう」と、事前調整に行ったところ「なんで」と言われましたけど、当日になって「大量輸送に便利だから」と勝手にコマンドとられて使われる始末という。
101でも、落ちた飛行機をバラせば回収できそうですし、エンジンやプロペラ、ローターブレードを運ぶみたいな仕事も果たせるとかあるんじゃないかと思います。バートレップ用だと、タンデムのほうがいいとか、シュペルピューマのほうが安いんじゃないかとかありますけど。