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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.05
27
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12:00
Category : オカルト
 史実として神話を教えるのは、標榜する現実主義と相性悪くないか?

 観念的な理想主義に反発する、現実主義を標榜するのが保守派だが、ときおり非合理的な主張に傾くことがある。神話や宗教的倫理観の重視がそれだ。現実主義そのものには頷けるものがあるが、神話や宗教的倫理観を押し付ける主張は辟易する。

 自衛隊が持つ外郭団体風に、郷友連盟がある。基本的に、両者は無関係ということになっている。だが、所管官庁は防衛省になっており、人事的にも密接な関係がある、かつて理事の過半数が自衛隊OBであった。基本的に旧陸軍に関連する組織である。まずは、偕行社の政治版だと思えばよい。

 その郷友連盟が主張する歴史教育は、古代史は神話主体にしなければならないらしい。郷友連盟は、一般社団法人なので、どのような政治スタンスから何を主張してもOKなのだが。保守団体として、普段に標榜する現実主義と相性は気にすべきではないのか。

 郷友連盟は「愛国心を育てるために、古代史教育に神話を教えろ」と主張している。「郷友総研 教育研究委員会」名義による「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」 に明らかである。
小学校学習指導要領解説書(社会編)で解説している[中略]「高天原神話」「天孫降臨」「出雲国譲り」「神武天皇の東征の物語」「九州の豪族や関東などを平定した日本武尊の物語」を明確に例示しているにもかかわらず、殆どの教科書がこの記述を蔑ろにしている。このことは、我が国の歴史に対する教育関係者の怠慢としか言いようがない重大な問題である。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
教科書が神話を取り上げないことが「我が国の歴史に対する教育関係者の怠慢」と断じている。

 各教科書への具体的な評価事項も、古代史についての評価は神話のあるなしだけが焦点とされている。検討項目も
(1) 我が国の始まりを「記紀」を主、魏志倭人伝を従として記述しているか。
(2) 国づくりの高天原神話を記述しているか。
(3) 天孫降臨の神話を記述しているか。
(4) 出雲国譲りの神話を記述しているか。
(5) 神武天皇の御東征を記述しているか。
(6) 「建国記念の日」を記述しているか。
(7) 「大和朝廷」という用語を使用しているか。
(8) 建国の由来に関する史跡を紹介しているか。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
となっている。

 神社本庁であれば、スタンス上、記紀を大事にしろというのも分からない主張でもない。しかし、それを防衛省と密接なつながりのある、支持団体が主張するのは、よくわからない。歴史的事実と直接対応しない神話を以って、歴史教育に充てろとする所長は突飛に見える。それは、郷友連盟による他の主張と衝突してしまう。郷友連盟は国防や外交等に関する主張や、主催する講演録を読む限りは「国際情勢の現実を前にすると、観念的な理想主義は現実に基づかない空虚な主張であり、無意味である」と主張している。その姿勢からすれば、史実に基づかない、根拠として空虚な神話を歴史教育に持ち込めとする主張は、明らかに矛盾している。もちろん、神話はなんらかの歴史的事件の影響を受けたものだろう。だが、変容した物語であり、現実である史実とは遠いからだ。

 郷友連盟にとって最大の不満は、おそらく、天皇についての「神話」を載せていないことを、天皇制をないがしろにするものであるとする思い込みだ。
初代天皇であられる神武天皇についての記述は全教科書皆無であり、代わりに外国の史書から引用した卑弥呼が、全教科書の本文に挿絵入りで記述されていることは、日本国憲法 第一章 天皇についての歴史的記述を排除し、「天皇についての理解と敬愛の念を深めるように」との学習指導要領にも反する扱いであり、ある種の意図が働いているのではと危惧するものである。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
と、現行憲法を持ちだしてまでも、神武天皇を記載しろ、卑弥呼は載せるなとしている。

 これは、天皇制への支持や、今上への崇敬と、神話への支持を取り違えたものだ。天皇制や、今上への崇敬は、天皇に付随する神話がなくとも成り立つものである。実際に、別に神武天皇が不存在でも、その即位が2700年前でなくとも、崇敬は成り立っている。むしろ「2700年前からの万世一系なので崇敬しろ」とする主張のほうが、崇敬とは程遠く危険である。それは今上への崇敬ではなく、神話への崇敬に過ぎない。だいたい、郷友連盟のスタンスでは、神話が史実ではないことが明らかになれば、恐ろしいことに今上への崇敬の念は消え失せてしまうのである。

 郷友連盟が、政治や国防について現実主義を語るなら、神話や教育からの脱却を果たしたほうがよい。皇室崇敬でも、神話や万世一系、神武紀元とは距離をおいたほうが良い。既述したような教育での神話導入や、別に行なっている道徳教育での主張は、各種の宗教団体との密接な関係を伺わせる。防衛省・陸自を支持・協力する上でも、郷友連盟の主張を普及する上でも、邪魔になるものだ。広汎な支持を得るためには、宗教関連臭を消したほうがよろしい。
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Comment

非公開コメント

No title

いわゆる右といわれる方々は生徒としての天皇制に崇敬していて
左の方々は国民に心を砕いている今上天皇に対し敬慕していますよね

No title

なんというか、アメリカの創造論者が「進化論を教えるのならインテリジェントデザイン論(実質創造論)も教えろ」と主張しているのとダブって見えるんだよなぁ....

No title

 例として間違った例えだというのはわかったうえで書きますが、ギリシャで「学校教育の時間にギリシャ神話を教えよう」というのは間違ってますかね?

 人類史において、それぞれの国と国民の成り立ちに、それぞれの国の神話が重要な意味を持つのは否定する必要の無い事だと思いますが。
 日本の場合特に、国家という物を否定する教育を続けられてきましたから、それに対するアンチテーゼとして述べてるのでは?

 なにも日本神話を「実際にあった現実」として教えろと言ってるわけではないでしょう。
あくまでも物語として、卑弥呼に割くページがあるなら神武天皇も載せてくれてもいいのでは?という主張でしょう。

Re: No title

史学は事実の積み上げですから。
古代史で卑弥呼より神武天皇を優先する考えはある意味、生物学で進化論をやめて、創造論を教えろと同じですよ

仮に神話をやるにしても、国語の日本文学ということで記紀で充分ではないですか。
倭臭と漢臭のα群とβ群があって、日本人と、日本人以外によって書かれているので、
オケ王、オオケ王の話なんか、首陽山に死すあたりを真似したんじゃないみたいな話が面白いですけど

No title

中国の愛国教育は批判されてるのに吹いた

Re: No title

ほとんど裏返しですね。日本の神話を含む愛国教育は良い教育、中国のそれは歴史的事実に欠ける悪い教育なんでしょう

> 中国の愛国教育は批判されてるのに吹いた

No title

 内容そのものが事実か否かにかかわらず国が編纂したはじめての本格的な歴史書である記紀に書かれているということ自体は事実ですよ。
 記紀の内容に怪しげな部分、まちがいと思われる部分、中国の史書を写したと思われる部分(これは先進国中国の方法に倣って、「歴史を推定」したのだと思いますが)があること確かですが、その大筋についてまちがいであることを示す確かな根拠は出されていません。

Re: No title

何かのメタファーかもしれませんが、神話の部分は、そのまま史実ではない、お伽話であることは確かですよ