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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.06
04
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12:00
Category : ミリタリー
 中国人には「中国空軍は強い、空自に完勝することは容易である」という話がウケるのだろう。

 『鏡報』今月号に、梁天仞さんが「中国完勝日空軍没難」※ と題した記事を載せている。「中国空軍事力全面超逾日本」と、中国空軍の実力は全ての面で中国を超えたと述べている。概略は、戦闘機の性能で優る、ステルス機の存在で優る、ミサイルの性能で優る、AWACSの類で優るとしている。

 梁さんは、中国は戦闘機の性能で優ると述べている。中国が保有するSu-27/30とJ-11は、F-15を凌駕するとしている。趣旨は、90年代に導入された中国のSu-27系は、80年代に導入されたF-15に優るという理屈である。

 ステルス機の存在も、中国の優位としている。J-20が存在し、J-31を開発中の中国が優位にあるとするものだ。F-22が生産停止し、F-35が順調に遅れている中では、日本はステルス機を当座入手できないとしている。

 ミサイルのスペックでも中国優位としている。梁さんは、中国側空対空ミサイルのR-77、PL-12は、日本側AMRAAMやAAM-4に優ると述べている。R-77やPL-12の射程がAMRAAM、AAM-4よりも長いので強いといったものだ。

 最後に、AWACSの類でも中国優位であるとしている。「預警機の父」王小謨さんの「KJ-2000はE-3Cの一歩先にある」を引いて、優位の証拠にしている。梁さんは、電子戦の能力も、高新5号があるので優れているとも主張している。

 しかし、中国空軍が空自に完勝できるのだろうか?

 中国空軍について、梁さんの主張は、自己称賛的に過ぎるように見える。

 戦闘機の性能にしても、F-15とSu-27系には隔絶した差はない。格闘戦をするような状況ではSu-27系がやや優位かもしれない。しかし、パリティな状態での格闘戦は実際には、まず起きない。状況や乗員練度、AWACS等支援の厚さを考慮しなければならない。

 中国がステルス機を持っていることは、確かに優位である。J-20やJ-35は、能力そのものが不明だが、保有していることは有利とはいえるだろう。しかし、何ができるのかが判然としない。ステルス性が高く、足が長ければ対日航空撃滅戦に投入できるかもしれないが、何分、いつ実戦配備されるかわからない。その間にも、日本がF-35を取得すれば、ステルス技術では、中国はどうにかしてパリティ、下手をすれば劣勢になってしまう。

 ミサイルについても、中国が保有するR-77、PL-12はスペックでは優位であるが、西側機にスペック通りの性能で通用するかはわからない。AAM-4もそうだが、実戦に使われているAMRAAMほどの信頼性があるか分からない。特にR-77、PL-12は、西側の電子戦に耐えられるのかどうかもある。そもそも、ミサイルの性能が優れていても、射程が長かったとしても、相手に先制攻撃できなければ意味もない。その点は、戦闘機、特にレーダの性能、乗員練度、AWACS等による支援による。

 AWACSの類については、40年にも及ぶE-3の米軍運用実績を無視している点は問題だろう。KJ-2000やKJ-200は、ハード的に完成したばかりである。仮にレーダとしての能力、たとえば出力がE-3Cよりも強かったとしても、解析や評価にでE-3やE-767に敵うものではない。その辺りに必要なのはノウハウであり、中国は容易に獲得できるものではない。

 もっとも気にかかる点は、どのような戦争をするかである。仮に、空自が中国国内に攻め込む状況では、空自は中国に相当苦戦する。下手をすると完敗するだろう。しかし、日中の中間地点付近で戦うとなると、AWACSを含むJADGEや、空中給油や整備態勢といった後方支援が手厚く、パイロットの練度が高い日本側が相当に有利になる。日本沿岸となると、中国は日本に相当に苦戦し、日本に完敗する可能性も出てくる。

 『鏡報』は、親大陸的な香港誌である。商業的には、香港人を含む中国人の歓心を得る記事が必要とされることもあるだろう。しかし、中国人相手でも、中国マンセーでは足許を見透かされることもあるのではないか。書いている本人も、読者のうちのインテリもそのあたりは承知しているはずだ。

 大学院時代に、一緒だった中国人留学生も、中国マンセーの怪しさは口にしていた。中国の留学生さんは、自国軍※※ への信頼や敬意はある。だが、兵器の性能で日米に敵うものではないと見ている。

 空軍についても、中国製は米国製器材に敵うとも思っていない。ある男性留学生曰く、「中国はエンジン技術がアレだから直ぐに飛ばなくなる」と言っていた。女性の留学生(アップルが大好きな党員さん)も「iPhoneでもパクリしかできないのに、アメリカより優れた戦闘機ができるわけがない」とも言っていた。人文系の交換研究者も「米国に対抗できればいいのであって、それよりも優れたものでなくてもよい」といっていた。まあ、こっちの商売がソレだったので、ヨイショがあるのかもしれないが、インテリ層は冷静に見ているといったところだろう。



※  梁天仞「中国完勝日空軍没難」『鏡報』431(鏡報文化企業有限公司,香港,2013.6)pp.66-69.
※※ 日本での対中強硬派は人民解放軍を党の私兵というが、実際には国軍である。憲法改正派が国軍としての敬意を受けていないという自衛隊が、実際には国軍で敬意を受けているのと同じ話だ
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Comment

非公開コメント

No title

 中国空軍と空自のどちらが強いかといったら「場所による」としか言えないでしょうね。

 現代空戦で一騎打ちはありえないとした上で、それでもあえて単機の性能を比較したらJ-MSIP済みのF-15JでSU-27にやや劣る。といったところでしょうか。
 J-MSIP改修前の機体なら、素直にSU-27の方が有利でしょう。パイロットの錬度は日本優位。

 早期警戒管制機に関しては日本の方が圧倒的に有利。ただし中国側がKs-172を入手したり、R-37やKh-41をAWACSに向けて撃つという戦法を取る可能性がある以上はAWACSを後方に下げざるを得ないのでこれも厳しい。

 更に、AWACSの開発に半ば失敗したロシアは戦闘機同士のデータリンクに力点を置いたため、SU-27とSU-30の組み合わせで擬似的なAWACS機能を持つ事も出来ました。
 つまり、戦闘機同士の「群れ対群れ」の戦闘ではSU-27側が更に有利になります。

 それでもまだ日本の方が優位な状況にあるとは思いますが、油断しようものなら一気に持って行かれかねない距離まで接近されていると思った方が安全です。
 北朝鮮や韓国もそうですが、相手を害する事に躊躇いのない国はそれだけで怖いです。

No title

『鏡報』って雑誌の位置づけが気になるところですね。こんな記事が載ってるんだと、マトモな軍事雑誌というより日本だったら『週刊プレイボーイ』だとか『SAPIO』だとかその程度の雑誌っていうように見えちゃう

Re: No title

『鏡報』は、軍事雑誌というよりは総合雑誌で、本質は大陸の言いたいことを香港で話す代理人みたいな雑誌です。資本関係も、大陸関係者ですから。

 それでも中台の軍事雑誌よりは読み応えありますよ。政治サイドの話もするし、大陸の軍事関連発言や情報もよく出ていますし