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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.06
26
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12:00
Category : ミリタリー
 防衛白書の概要なのだが。毎年毎年同じように安全保障が悪くなったを繰り返すのは、「今年は当たり年」を毎年繰り返すボジョレ・ヌーボーと同じではないかね。

 時事通信による※ と、2013年度版防衛白書では「日本を取り巻く安全保障環境は『一層厳しさを増している』と強調」されるとのこと。ただし、これは毎年同じような文言を繰り返すものである。なるほど、ここ10年は中国とのゲームが続いている。しかし、今年になって急激に厳しさを増しているわけではない。去年とも、一昨年とも、あまり大差はない。日本と中国は防衛分野で対峙しているものの、軍隊同士は極端に緊張しているわけでもなく、その緊張もここ三年で大差もない。このあたり、組織防衛のためという防衛白書のスタンスを理解しないで、その文言をそのまま真に受けるのは、ボジョレ・ヌーボーのコピーを真に受けるのと同じではないか。

 防衛白書は、防衛省とその施策を肯定するために出される。防衛省に権限よこせ、防衛予算を増やせ、人を減らすなという内容になる。それは役所なので仕方がないとも言える。しかし、防衛省の組織防衛のため、国際情勢ほかで現実の情勢を無視する傾向があるのは頂けない。

 実際に、防衛白書には、冷戦が終わった後になっても、消滅したロシアの脅威を強調しつづけた前科がある。当時、抜け殻状態であった極東部ロシア軍について、防衛白書は毎年「ロシアの脅威は無視できない」と言っていた。極東ロシアの陸海空軍が大幅に減少し、装備も放置され運用不可能な状態にあることを知りながら、そのことは見て見ぬふりをして、一切白書には書かなかった。北に重点配備された陸自13ヶ師団、18万人を維持する上で不利になるからである。

 防衛白書での安全保障環境とやらは、自衛隊を減らさないような情報を記述するものだったというわけだ。現実の極東地域、東アジアを観察し、そのまま記述すると都合が悪ければ、それには一切触れない内容である。

 だから、防衛白書は、毎年「より危険になった」と書く。ボジョレヌーボーが、毎年「10年に1度の出来」、「ここ数年で最高」、「50年に一度の傑作」を繰り返すように。防衛白書も、連続で出された昭和51年以降、ここ40年、毎年「安全保障は厳しさを増している」、「戦力拡大した周辺国に較べ、わが防衛体制は大きく遅れている」を繰り返すことになる。これをまともに信じると、毎年毎年劣勢になっていくわけなので、日本は自立も怪しいバナナ共和国並になるはずである。

 つまり防衛白書は、組織防衛を目的とした役人による作文にすぎない。原状維持を目的としているから面白くない。情勢や判断については、資料としては批判的に読まなければならない部分も多い。逆に、予算関係の数字については、役人のやることなので間違いはない。また、施策についての掲載順といった細部を読むことによって、防衛省内での優先順位を見出すといったこともできる。※※ 役人はそういった事にこだわる。革命記念日にクレムリン前で並ぶ首脳陣の順番を観察するようなものだが、そう読むにも、やはり批判的に読むに限る。

 本来なら、防衛白書は内閣の政策を発表するものではないか。新しい政策の必要性や、そこに至る経緯や、そのために必要なコスト、あるいはオプションとコストとベネフィットの比較とかを説明するのが本来ではないか。中国に海洋膨張主義の脅威が云々というなら、それに対して、膨張主義のおそれを封じ込めるために、日本も第1列島線でのプレゼンスを強化するとかね。そのためには、北にある戦力を大胆に整理して南西に回す。海洋でのプレゼンスにあまり意味のない戦力を削り、その分を艦隊建設に回す。その政策を訴えるのが本来である。※※※



※  防衛白書、中国に強い懸念=尖閣「不測の事態も」『時事ドットコム』(時事通信,2013.6.25)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013062500749
※※  ちなみに10式戦車は、防衛省による施策発表の順番では、毎年最下位である。
※※※ そのような政策転換ができないのが、日本の政治風土でもあるのだけれども。結果として防衛予算の中身は陸海空均等割で膠着したままになっている。
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Comment

非公開コメント

陸海空で予算均等割りということは

要するに、安全保障政策を一括してまとめる省庁や組織が存在しないってことでしょ?
あえていえば、「陸自省」「海自省」「空自省」がバラバラに行動してて、利権を確保するときだけは談合してるってお話で。
中国云々より、こっちの方がヤバイんじゃないですか。

No title

もともと二流のお買い物官庁、政策を作る能力なんぞは要求されてこなかった。省になっても代わり映えはしないねえ。