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- » 2021 . 04
Category : 有職故実
地名に出てくる「谷」は、西は「タニ」、東は「ヤ」と読む。笹原宏之さん(大学院の時に講義を取った先生だ)の話で出てくる。西日本、一の谷や蓑谷、山城青谷はタニ、東日本、渋谷、四ツ谷、谷中はヤで読む。「『東京の鶯谷は違うじゃないか』というだろうが、あれは江戸の後半期に京都に憧れ、新しくつけた地名だ」といっていた。この辺りは、岩波新書の『日本の漢字』でも書いてある。
この「タニ」という訓読み、マライ・ポリネシア諸語に由来の言葉ではないか示唆する話がある。
崎山理「日本語の混合的特徴」※ で見つけたのだが。崎山さんは、マライ・ポリネシア祖語で「低地」を示すtanahと、日本語上古音のtaniと比較しているのである。
「日本語の混合的特徴」は、去年の『国立民族博物館研究報告』に載っている。中身は、マライ・ポリネシア祖語、ポリネシア祖語、ポリネシア西部祖語と日本語を比較するというものだ。例えば、根源的な単語について次のように比較している。
・手 taŋan (PMP) taa,tai(上古日)
・目 mata (PMP) maa,mai(上古日)
・名 ŋajan (PAN) naa (上古日)
・歯 baraŋ (PWMP) paa (上古日)
・火 apuy (PMP) f/p/h音(上古日)
その中に
・低地tanah (PMP) tani (上古日)
も含まれている。これを見ると、上古日本語での基幹語とマライ・ポリネシア系の祖語とはよく合致しているように見える。「タニ」はおそらくオセアニア諸語の影響を受けた単語である。
そして、マライ・ポリネシア文化の影響を強く受けていた西日本にタニが残った。地名にタニが付く地域が西日本に限定されている。その理由は、古代の西日本がマライ・ポリネシア文化の影響を受けていたことと関係があるのだろう。
もちろん、タニについては、オーストロネシア語の影響を見なければならないだろう。マライ・ポリネシア語の、さらに一段階遡った段階にあるオーストロネシア語としての台湾語や北フィリピン諸語の、その祖語や基幹語との関係を見なければいけないのだろうけどね。
※ 崎山理「日本語の混合的特徴」『国立民族博物館研究報告』(36-3)(国立民族学博物館,2012)pp.353-393
この「タニ」という訓読み、マライ・ポリネシア諸語に由来の言葉ではないか示唆する話がある。
崎山理「日本語の混合的特徴」※ で見つけたのだが。崎山さんは、マライ・ポリネシア祖語で「低地」を示すtanahと、日本語上古音のtaniと比較しているのである。
「日本語の混合的特徴」は、去年の『国立民族博物館研究報告』に載っている。中身は、マライ・ポリネシア祖語、ポリネシア祖語、ポリネシア西部祖語と日本語を比較するというものだ。例えば、根源的な単語について次のように比較している。
・手 taŋan (PMP) taa,tai(上古日)
・目 mata (PMP) maa,mai(上古日)
・名 ŋajan (PAN) naa (上古日)
・歯 baraŋ (PWMP) paa (上古日)
・火 apuy (PMP) f/p/h音(上古日)
その中に
・低地tanah (PMP) tani (上古日)
も含まれている。これを見ると、上古日本語での基幹語とマライ・ポリネシア系の祖語とはよく合致しているように見える。「タニ」はおそらくオセアニア諸語の影響を受けた単語である。
そして、マライ・ポリネシア文化の影響を強く受けていた西日本にタニが残った。地名にタニが付く地域が西日本に限定されている。その理由は、古代の西日本がマライ・ポリネシア文化の影響を受けていたことと関係があるのだろう。
もちろん、タニについては、オーストロネシア語の影響を見なければならないだろう。マライ・ポリネシア語の、さらに一段階遡った段階にあるオーストロネシア語としての台湾語や北フィリピン諸語の、その祖語や基幹語との関係を見なければいけないのだろうけどね。
※ 崎山理「日本語の混合的特徴」『国立民族博物館研究報告』(36-3)(国立民族学博物館,2012)pp.353-393
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