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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.08
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Category : 有職故実
 昭和20年夏、農村も荒廃しており、日本農業は崩壊の寸前であった。食料事情が極端に悪化しており、農村でも飯米不足が重大問題となっている。

 中でも、象徴的な事件は秋田県雄勝郡山田村(現湯沢町)で発生した。内務省にとって重篤な事例であり、衝撃を受けたものであった。米が足りなくなった農家が、向かいの家から米を少量盗み、放火する事件が発生したのである。

 内務省警保局保安課が接受した特高秘発第六七八号文書がある。昭和20年9月20日、秋田県知事久安博忠から、内務大臣山崎厳に宛てられた「飯米窮乏ヲ繞[めぐ]ル放火事件発生検挙二関スル件」と題されている。

 文書によると、事件は昭和20年8月15日夜に発生している。若妻と子供しかいない応召軍人の小作農家に入り込み、米3俵を盗み、その証拠隠滅のために放火したとある。

 内務省にとって深刻なのは、農村社会が崩壊する兆しがあったことである。ついに米農家が米にこまり、女子供しかいない向かいの家に盗みに入った。これは飢餓が都市部だけではなく農村に及び、それにより近所づきあいが瓦解する予兆である。

 この時期、農村も、ついに飯米不足に陥っている。

 まず、米が取れない。徴兵による労働力不足や、生産や輸送混乱による肥料不足があった。当時、窒素原料は火薬製造に回され、肥料製造は圧迫し、その肥料も決戦用に多数造成された飛行場での芝土育成に優先されていた。農村に配布する分も、船舶輸送や鉄道網の混乱麻痺や、トラックによる小口輸送能力不足により、上手く行っていない。

 収穫した米も、強制供出制度により、僅かな自留分しか残らない。被疑者は田地2町2反、畑地3反を持つ中農であったが、19年米穀年度で生産56石から48石を割当られ、調整して37石6斗を供出されている。残りは18石4斗あるが、現金化や困っている他農家への配給もあったため、最終的に手許に残ったのは7石2斗に過ぎない。

 当時は大家族であり、また2町持ちともなると、農繁期には多く食べないと体が持たない。そのため、1日5升を消費していたところ、ついに8月15日には2斗だけしかなくなったのである。

 このため、中農が、小作に盗みに入るという事態が発生した。しかも、盗まれた小作農家は、旦那を海兵団に取られ、若妻が田畑と家と守り、子供三人をどうにか食わせている、生存の限界にある家である。盗みに入るにしても逡巡する家だ。そこに入るということは、人情も枯れたということである。

 農村が疲弊状態にあり、その崩壊が近いことを予感させる事件である。このため、通常の道府県警察局長から内務省警保局長への経路ではなく、特に秋田県知事(当時は内務省隷下)は内務大臣に報告することとしたようにみえる。

 昭和20年は食糧不足で本土決戦は行えなかった。具体的に終戦を巡る会議では、農林省は食糧問題で戦争遂行の不可を述べている。

 しかも米穀20年度は、労働力と肥料不足の極もあり、戦時下最悪の大不作である。おそらく、20年秋、終戦なしに九州と関東で本土決戦を行おうとしても、食糧問題とそれによる地方情勢不安により決戦は困難である。それどころか、米国が上陸戦をしてくれないと日本政府は国内治安維持に困窮する。昭和21年春には食料が尽きる。その場合には、戦争どころではない政治的混乱が発生しただろう。
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Comment

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秋田県雄勝郡は

私の地元です(笑)
橋を渡ると山田村ですが、この事件は知りませんでした。いつもながら、文谷さんの博識には頭が下がります。(ちなみに昭和29年市制施行で、現在は湯沢市山田地区です)

典型的な内陸盆地の稲作地帯で、食べ物に困るような場所ではないんですけどね。他人の家に遊びに行くときは、野菜や山菜を手土産にするような人達が住んでますよ。

これで分かるのは、海空無視した本土決戦は夢物語だということ。盆地なので敵が攻めてくれば袋叩きに出来る地形ですが、内情はこの有様です。

一部の方々はそれでも持論を曲げないとは思いますが、国民としてはこういう事実は知っておいた方が良いです。

Re: 秋田県雄勝郡は

山田村の大字、小字、番地、名前、家族構成まで書いてあるんですよね、コレ。
さすがに書けないし、知っていても聞ける話でもないですし。

実際には、お米がなくなる焦燥感と、終戦のショックもあってのことだと思うのですけどね