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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2013.09
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Category : ミリタリー
 北朝鮮との戦いがあるだろうと言って、だからいわゆる「反日」をやめろと言っても、韓国人を怒らせるだけではないか?

 日本戦略研究フォーラムに樋口譲次さんの「韓国防衛は、日本なしには成り立たない -それでも反日政策を続けるのか?」が掲載されている。

 樋口さんは、韓国の対日姿勢が厳しいことを問題視している。いわゆる反日では北朝鮮との戦争で大変と述べている。「韓国の安全保障或いは防衛上、日本の協力が不可欠」とする前提で、反日は損であるとしている。

 しかし、韓国の防衛で日本の協力は不可欠ではない。

 朝鮮戦争や70年代までと比較して韓国は、相当に強くなった。政治的にも安定し、軍事力も充実し、経済力も発展した。対して、北朝鮮は政治的に不安定になり、軍事的には旧式化し、経済的には衰退している。この状況で、日本の協力はあるに越したことはないが、不可欠ではない。

 韓国は、政治的に安定している。今の韓国は、面白い部分はあるものの、民主主義政体である。李承晩体制のように、アメリカの傀儡に操縦されるバナナ共和国でもなく、傀儡が転じた独善的な独裁者による統治体制ではない。国内で反対者に果断な刑罰を振るう軍事政権でもない。北朝鮮が侵攻してきても、韓国政治体制は動揺しない。韓国国民には一致団結して戦う体制が確保されている。

 また、軍事力も充実している。朝鮮戦争当時とは違い、韓国には教育された職業軍人と、彼らに訓練された膨大な国民兵がいる。装備もほぼ最新装備であり、強力な航空戦力まで揃えている。しかも、米国のバックアップもある。

 経済的にも相当に進歩した。経済面について、樋口さんは古い見方をしている。70-80年代の、アメリカが咳をすると日本が風邪を引く、日本が風邪を引けば韓国は肺炎になるといった認識にある。しかし、90年代以降、韓国は経済での対日従属から離れている。既に韓国は日本の下請けではない。自前で北米や欧州、中国と貿易し、その規模を拡大している。もちろん、日本との貿易や投資は、韓国経済で大きな地位を占めているが、日本の協力がなくとも、北の侵攻には十分対抗し、その後には北進もできる経済力は持っている。

 逆に、北朝鮮の著しい体力低下を注目すべきである。

 北朝鮮の政治体制は戦争に対して脆弱である。国民支持のあやしい権威体制であり、軍隊や警察機構による締付で維持されている。戦争により、その締付が弱まれば、政治体制も弱まる。戦場で大敗北を喫すれば、現体制も相当に揺らぐことになる。

 北朝鮮の軍事力も相当に低下している。ミサイルといったものを除き、主要装備は80年代水準のままであり、韓国軍を打倒する力はない。ソウルに嫌がらせ的な攻撃を掛けるのが手一杯である。

 北朝鮮の経済は、そもそも対韓国侵攻を許さない。食糧事情や液体燃料、輸送能力もカツカツであって、対韓戦は可能な状態ではない。

 この状況で、北との対立があるからと、韓国がいわゆる「反日」を引っ込める必要はない。もちろん、韓国政府や首脳は、日本と仲良くしなければ損が多いことは承知している。しかし、歴史的経緯から、国民感情が反日である。政府や首脳は、国民感情を無視した政策を取れない。民主主義なら尚更である。

 植民地支配された側は、支配した側を許すことはない。日本人は昔のことは水で流せ、70年も前の事で「恨」を持ち出すなという。だが、韓国でも中国でも「恨」というのは、元々「100年たっても200年たっても消えないほどの怨み」意味である。そして、国民国家としての韓国建国神話にもいわゆる「反日」含まれている。今の韓国は「日本に抵抗し、勝利して生まれた国家」であり、日本に好き勝手されないことが存在理由なので、対日感情が悪いのも当たり前の話である。

 韓国は本質的には、北朝鮮への警戒や憎しみよりも、日本への警戒や憎しみの方が強い。北朝鮮は同じ国の一領域に過ぎない。同じ民族が住んでいるどころか、親類縁者も居る。いずれは一緒になる仲間と考えている。対して、日本は半島を征服した悪の国家であり、不倶戴天の敵である。

 韓国は対北戦では日本の協力は必ずしも必要ではなく、本質的には北朝鮮よりも日本のほうが憎い。その国に対して「韓国防衛には日本の手助けが必要だろう、だから俺たちを赦せ」といってもせんない話である。前者で「後進国だと思って馬鹿にするな」と反発を受け、後者で「何様のつもりか」と怒るだろう。

 いずれにせよ、樋口さんの主張が成立するのは、韓国が脆弱であった70年代までの話である。確かに60年代の軍事政権では、北朝鮮の脅威から、国民感情に逆らっても「反日」を力で封じ日本との国交を樹立した。70年代80年代でも、経済的な離陸のため、満足に食べるため「反日」はやめろと説得して日本の投資を受け入れた。しかし、今の韓国にはそれほどの切実な必要性はない。そのような主張をしても、韓国国民を怒らせるだけの結果に終わるだろう。



※ 樋口譲次「韓国防衛は、日本なしには成り立たない -それでも反日政策を続けるのか?」『日本戦略研究フォーラム』(2013.7)http://www.jfss.gr.jp/kiho%20ok/kiho57/6%20page.htm

※※ 実際にできることは、国民や資本の安全確保や、貿易や投資、交流での理不尽な障害排除といった実務的利益を順々に確保し、堅固にするような働きかけではないか。韓国政府や指導層にも過激な「反日」は良くないと考えている層は居る。
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Comment

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No title

自衛隊との関係がいかに深かろうが、在日米軍は米軍、半島有事になったら日本の都合なんぞ考えず独自に好き勝手やるだけなんじゃないかなー。自衛隊の協力が無くても独立して作戦できる能力を維持するだろうし、北朝鮮側に不審な動きがあればアメちゃんも即応できる準備するに決まってる。そうなった場合、日本が協力するかしないか選べる立場じゃなくて、むしろアメリカに「一同盟国として協力しろ」って圧力をかけられる立場だろ。

あと著者肩書きの日本製鋼所顧問ってのが気になります。

反日とは言いますが

普通、「反◯◯政策」といえば、相手を国家として認めないか、軍事行動の手前の措置をとるという意味です。
例えば、日本なら北朝鮮に対しては政権を認めない、送金を認めない、アメリカならシリアへの軍事介入を検討するなど、こういう措置のことですよ。

誰が反日政策という言葉を使い始めたかは知りませんが、歴史認識程度で反◯◯と言って大騒ぎしてるあたりが、マスコミのネタなんだろうなと。