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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2013.10
01
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Category : 未分類
 国防は、どうしても金食い虫であり、不採算な投資ではないか。

 ロナルド・モースさんは、国防支出を増やせば経済も好調になる、イスラエルを見ろと言っている。※ 具体的には
安全保障・防衛関係に多くを投資する国は、相対的に強く、経済も繁栄することを歴史は示している。今日、その最たる例はイスラエルである。イスラエルの成功企業の90%は軍事的な研究開発の副産物である。
モース,ロナルド「アベノミクスに欠落する軍事研究開発」(国家基本問題研究所,2013.8.5)http://jinf.jp/weekly/archives/11089
と述べている。

 しかし、国防支出を増やして経済構造が改善するといった話はおかしい。実例もない。例として挙げたイスラエルの経済は繁栄しているとはいえない。

 イスラエルの経済は好調ではない。イスラエル経済はそれほど大きくもなく、GDPも高いわけでもなく、好調でもない。イスラエルの経済規模は、フィンランドやアイルランドと同程度しかない。そして、一人あたりGDPは、フィンランドやアイルランドの6割程度でしかなく、生産性が高くないと、南欧病と言われたスペインやイタリアと同程度しかない。経済成長も鈍化している。その成長率にしても、アメリカからの30億ドルの供与と30億ドルの借款の点滴効果がある。また移民による人口ボーナス効果に底上げされてもいるだろう。

 また、イスラエル経済は、安全保障・防衛関係での投資で維持されているわけではない。輸出を見ても、安保・防衛投資の影響はそれほどのものではない。いまだにダイヤ研磨が輸出の花型であり、あまり安保や防衛とは関係のない化学工業がそれに並ぶ。安保・防衛技術に基づく輸出も、例えば精密機器といった分野に含まれているだろうが、それほど大きくもない。電子関連は、安保・防衛で作られたというよりも、インテルのラインに依存しており、安保・防衛の投資とは関係ない。

 また、モースさんが別に挙げた国も、国防支出で経済が好転しているわけではない。モースさんは「本格的な防衛産業戦略を持っている」として「韓国、台湾、中国、ロシア
」を挙げている。だが、これらの国の経済は、国防支出で好転していない。韓国、台湾、中国は「世界の工場」として経済を拡大し、成長させている。軍事関連産業による経済効果は、その陰で完全に無視される程度である。ロシアは未だに石油や天然ガス、木材といった一次産品精算に頼っている。むしろ国防支出に四苦八苦している状況にある。

 逆に、世界には少ない国防支出で成功している国も多い。香港、シンガポール、ノルウェー、ベネルクス、アイスランドなど幾らでも挙げられる。明らかに巨大な国防支出に圧迫されていないことは利点である。

 これらの点からすると、モースさんのいう「防衛費を増額させよ」は悪手である。国防支出を増やしても経済は強くならない。むしろ、国防支出により、圧迫された経済は悪影響を受けるだろう。

 このモースさんの主張には、理解に苦しむ点が多い。人名事典からモースさんの項目を見つけたが、その職歴部分は
国防総省戦略貿易チーム主任研究員、経済戦略研究所副理事長、メリーランド大学国際プロジェクト部長などを歴任。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授、麗澤大学国際経済学部教授
「ロナルド・モース」『人名事典』http://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%A5%ED%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%E2%A1%BC%A5%B9
と立派なものである。だが、博士号は柳田国男と民俗学とされている。日本語や日本の事情、日本の国民性には詳しいだろうことは窺える。だが「国防支出で経済が強くなる」という主張や、その実例としてイスラエルを挙げる点で、日本、あるいは東アジア以外の事情や、安全保障・防衛関係、各国経済についての知見に、ある種の予断を持ってしまう。

 あるいは、日本の事情に詳しいために、媒体に迎合したのかもしれない。国家基本問題研究所は、保守シンクタンクを自称しているが、まずは神がかり右派の集まりである。国基研を保守系シンクタンクと呼べば、真面目にやっている日本財団その他に失礼である。その神がかり右派に依頼されたので、モースさんは、国基研の方針である「安保大事、防衛費増やせ、米共和党と関係者をヨイショしろ」を纏めてヤッツケ仕事をしたのかも知れない。

 国基研も、仲良しサークルなのでそのまま掲載したのだろう。シンクタンクを名乗るならリジェクトしても良さそうな水準だが、それも厄介なのだろう。専従がいるかどうかは知らないが、職員としてもソッチの方が面倒はない。代表の櫻井よし子さんにしても、今どき
1000年に1度の大地震と大津波を乗り切った5号機と6号機は、福島第2原発及び東北電力の女川原発などと共に、日本の優れた原発技術を象徴しており、むしろ誇ってよいものだ。
櫻井よし子「科学と理性に基づく原発政策を」(国家基本問題研究所,2013.9.24)http://jinf.jp/weekly/archives/11362
と発言している。そのような話が続いているので、国基研としては、モースさんの主張やその論拠にしても、それほどの違和感は感じないのだろう。



※ モース,ロナルド「アベノミクスに欠落する軍事研究開発」(国家基本問題研究所,2013.8.5)http://jinf.jp/weekly/archives/11089

※※ 「ロナルド・モース」『人名事典』http://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%A5%ED%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%E2%A1%BC%A5%B9

※※※ 櫻井よし子「科学と理性に基づく原発政策を」(国家基本問題研究所,2013.9.24)http://jinf.jp/weekly/archives/11362
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Comment

非公開コメント

櫻井よし子の名前がある時点で信用できませんねw

No title

台湾の場合、政治的に孤立しがちだから保健の面として持っているという側面の方が大きいような…
そういう意味ではかっての南アなんかと変わらない

また日本がその戦略を持たないのは単に戦略がなかったというだけでアメリカのせいでもない
右派系の人が敵視しがちな武器輸出3原則にしたって日本側がやりだしたこと

FSXが政治問題になったのはちょうど日本の景気がよく、アメリカの景気が悪い時代の感情的な摩擦もあり、そもそもその摩擦の一因が米側から見て
「アメリカが多大な負担をしているが日本は経済力に見合った負担をしていない」と言うものである。
つまりアメリカにとっても負担であるという認識
話が逆なんですね。

他の公共投資に比べてすら経済効果という面ではあまり大きくない。軍事ケインズ政策はそれこそ「穴を掘って埋める」ような「直接や国は他なくても財政出動による効果はある」と言う時の話ですから

台湾や韓国の例として、軍事の見返りに他での調達をする、例えばフランスとの関係上一旦欧州式で決まりかけた台湾高鉄とか、韓国の業者が受注する事になった中東の事業とか…しかしこれにしても、軍事そのものではなくて見返りの方が大きいわけですが

そういう程度の事なら日本も品は違えどやっているわけで、それ自体の良し悪しはともかく、そのために国防費を増額せよと言うのはやや本末転倒ですね。


これはまた…^^;

素晴らしい学説ぶち上げましたな。ヤっちまったぜ〜というレベル。
ポール・ケネディの「大国の興亡」なんざ完全無視。これが本当なら、ソ連が世界の覇者になるべきでしたね。
どこで歴史を間違えたんだろ〜?櫻井さんもお疲れ様です( ̄^ ̄)ゞ