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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
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2014.01
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Category : 未分類
 南シナ海迂回ルートのコストは破滅的なのだろうか? 常々不思議に思うことだが「南シナ海を迂回するコストは日本経済に破滅的影響を与える」とする主張には頷けない。

 特に原油をはじめとするエネルギー輸入では、南シナ海不通は全く影響しない。もともと輸送コストはタダ同然であって、市場価格変動に隠れてしまう。そのコストが1割程度増えても何も起きない。

 この点で、北村淳さんの主張には違和感がある。北村さんの「想像以上のスピードで『近代化』している中国海軍」※ では、南シナ海が不通となった場合に、各種タンカーの運行経費が急騰し「電気をはじめとする日本のエネルギー料金は軒並み経験したことがない程度に高騰する。」と述べている。

  日本は尖閣はじめ南西諸島そして東シナ海が中国海洋戦力の直接的脅威を受けているが、中国が南シナ海をコントロールするようになると、日本経済、そして日本の国民生活は極めて深刻な影響を受けることになる。というのは、南シナ海には原油や天然ガスを積んで日本に向かう各種タンカーの航路帯(シーレーン)が縦貫しているからである。
北村淳「想像以上のスピードで『近代化』している中国海軍」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39529?page=3
 もちろん、危険な海と化した南シナ海を迂回してフィリピン海そして西太平洋を迂回すれば日本に達することができる。しかしながら、このような迂回航路を各種タンカーが通航すると運賃や人件費などが急騰して、電気をはじめとする日本のエネルギー料金は軒並み経験したことがない程度に高騰する。
北村淳「想像以上のスピードで『近代化』している中国海軍」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39529?page=4


 しかし、迂回による経費増加は無視できる。

 これは前にも「マラッカ・バシー海峡は、『死活的』であるか?」で述べたとおりである。ペルシア湾岸からの輸入については、距離が1割程度伸びるだけである。一般的に、船舶輸送コストの半分程度は積み込み、積み下ろしで費やされていることからすれば、行程が1割増加しても、コストは5%も増加しない。

 資源エネルギー庁「石油輸送に関する現状について」(2008.2)※※ でも、同じ結論になる。7頁にあるとおり、増額分は「VLCCでは片道約$99,000(1,100万円弱)」にとどまる。増額分は、往復2200万円であるが、原油30万トンで割ればトンあたり80円弱に過ぎない。価格でみれば、1万円あたりで15円も増加しない。(1トン≒6バレル、バレル95ドル)

 もともと、大型タンカーの経済効率は極めて高い。30万トンの原油を1.7万馬力14ktで輸送するが、船舶用ディーゼルは馬力あたり120g/時間にすぎない。1時間に使う燃料は2tであり、ペルシア湾への往復1600時間で3200t(しかも粗悪なC重油)しか使わない。

 仮に南シナ海を迂回したとしても、その影響は極めて小さいということだ。

 北村さんには、中国の脅威を必要以上に強調する傾向があるのではないか。現在の中国の脅威を正しく示すというよりも、中国の脅威は大きい、中国は危険であるという主張をしたいように見える。

 今回の記事にある「空母『遼寧』よりも注意すべきは海南島海軍基地」もそうである。海南島にある基地がいかに危険であるかと述べたいのだろうが、具体的にはどう危険であるのかは全く説明されていない。

 このあたり、中国の脅威の実相を説くのではなく、日本国内にある中国脅威論に乗じているようにしか見えないのである。



※ 北村淳「想像以上のスピードで『近代化』している中国海軍」『JBPress』(日本ビジネスプレス,2013.12.26)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39529


※※ 「石油輸送に関する現状について」(資源エネルギー庁,2008.2)http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60214a08j.pdf
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Comment

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エントリとはずれるコメントになり申し訳ございません

昨今のよくある中国脅威論は、中国の脅威に対して軍拡しなくてはならない、が結論ですが、軍拡するのは手段であって、どういう政治的目標に到達したいかのが見えないものが多いと感じます

対人関係と違って殴り倒して解決するものでもないし、結局は相手にどうさせたいかを考える点が抜けてるものが多いと

結局はこの南シナ海の話も、失地したくないというのが本音で、経済論理は虚構なんじゃないでしょうか、結論が先に決まってるから議論にならない

No title

表面上のコストアツプは微増かもしれないが
日本の足元を見て産油国が便乗値上げしてくる可能性はありそうだよね

北村さんの原文を読んでないので憶測ではありますが。

そもそも南シナ海を封鎖と言っても
①それが能力的に可能という意味か、
②それとも国際法に照らして適法だから可能という意味か、
そこが気になります。

国際法上、中国海軍が表に出ないとなれば、裏で海賊を使うということになりますが、それなら自衛艦派遣しますしね。
どういう筋書きで封鎖をするのか気になりますな。