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- » 2023 . 03
Category : 未分類
高坂哲郎さんの「迫りくる自律型ロボット兵器の時代」なのだが。日本はロボット兵器装備について縛りをいれるべきではないとする理屈は分かる。だが、それを対人地雷・クラスター兵器禁止条約を例とする点には、違和感を感じる。
高坂さんは、対人地雷・クラスター禁止で自衛隊が困っていると主張している。日本本土への上陸戦対策や、そこで他国が対人地雷やクラスターが使えるのに、自衛隊が使えないのは大きな不利益であると主張している。
しかし、それは視野の狭い主張であるようにみえる。
まず、自衛隊の活動は、海外での国際貢献や、あるいは海外派兵にシフトする方向にあることを見ていない。海外シフトを考慮すれば、国際的取り決めて対人地雷とクラスターが制約されているほうがよい。国際貢献先で、対人地雷やクラスター子弾がワンサカある状況は好ましくないからだ。
また、対上陸戦といった主張も、その可能性が、ほぼなくなっていることを無視している。当時の政治判断としても、まず発生しない対上陸戦への準備と、対人地雷やクラスターを禁止するオスロ・プロセスのどちらに乗るかといえば、まず後者である。
そもそも、対人地雷もクラスター兵器も、後始末が面倒くさい。
確かに、地雷の類は敷設地点を記録する。だが、数がやたらと多いので戦後の回収は容易ではなく、戦闘があった場所では取り残す可能性も高い。また、対人地雷は機雷とは異なり、自滅装置はまずない。また、自滅装置をつけても、発火式の自滅装置は周囲に危険を伴う可能性がある。電池をショートさせるタイプは、自滅後でも雷管を叩くと発火し、爆発してしまう可能性が高い。(昭和30年代に新潟の浚渫で雷管を叩き、自滅機雷が爆発している)
クラスターは、どこに落ちたのかわからず、不発率も高すぎる。子弾は小型であり、VTではない。衝撃で発火する形式のため、なんらかのクッション効果が起きると不発は多くなる。イスラエルが使ったような、開豁しており、地面が硬い地形でも10%の不発が発生した。これが日本のような植生が発達した所や、対上陸戦で砂浜に落とした場合には、新刊は動作しないおそれはさらに高くなる。
これらの点を考慮すれば、対人地雷やクラスター禁止は妥当であった。
しかし、陸自には不満が多かったのは、結局は、対上陸戦で勝つことしか考えられなかったためだろう。陸自OBには今でも不満を開陳する人がいる。例えば、東北方総監をやったOBの某さんは、4-5年前の「世界と日本」でそのような意見を開陳していた。
だが、そこには上陸戦の可能性やその規模への考察や、戦後処理についての思慮はなかった。その点を考慮すれば、対人地雷もクラスター兵器は絶対必要なものではなかったのである。
このような点を全部スッとばして「無いと対上陸戦ができない」からと[陸自やそのOBが]言っているから、対人地雷やクラスターの禁止は誤っていたとするのは、誤りである。
もちろん、高坂さんの「日本はロボット兵器装備について縛りをいれるべきではない」とする主張そのものには賛同するのだけれども。
※ 高坂哲郎「迫りくる自律型ロボット兵器の時代」『外交』(時事通信,2014.1)pp.50-53.
高坂さんは、対人地雷・クラスター禁止で自衛隊が困っていると主張している。日本本土への上陸戦対策や、そこで他国が対人地雷やクラスターが使えるのに、自衛隊が使えないのは大きな不利益であると主張している。
しかし、それは視野の狭い主張であるようにみえる。
まず、自衛隊の活動は、海外での国際貢献や、あるいは海外派兵にシフトする方向にあることを見ていない。海外シフトを考慮すれば、国際的取り決めて対人地雷とクラスターが制約されているほうがよい。国際貢献先で、対人地雷やクラスター子弾がワンサカある状況は好ましくないからだ。
また、対上陸戦といった主張も、その可能性が、ほぼなくなっていることを無視している。当時の政治判断としても、まず発生しない対上陸戦への準備と、対人地雷やクラスターを禁止するオスロ・プロセスのどちらに乗るかといえば、まず後者である。
そもそも、対人地雷もクラスター兵器も、後始末が面倒くさい。
確かに、地雷の類は敷設地点を記録する。だが、数がやたらと多いので戦後の回収は容易ではなく、戦闘があった場所では取り残す可能性も高い。また、対人地雷は機雷とは異なり、自滅装置はまずない。また、自滅装置をつけても、発火式の自滅装置は周囲に危険を伴う可能性がある。電池をショートさせるタイプは、自滅後でも雷管を叩くと発火し、爆発してしまう可能性が高い。(昭和30年代に新潟の浚渫で雷管を叩き、自滅機雷が爆発している)
クラスターは、どこに落ちたのかわからず、不発率も高すぎる。子弾は小型であり、VTではない。衝撃で発火する形式のため、なんらかのクッション効果が起きると不発は多くなる。イスラエルが使ったような、開豁しており、地面が硬い地形でも10%の不発が発生した。これが日本のような植生が発達した所や、対上陸戦で砂浜に落とした場合には、新刊は動作しないおそれはさらに高くなる。
これらの点を考慮すれば、対人地雷やクラスター禁止は妥当であった。
しかし、陸自には不満が多かったのは、結局は、対上陸戦で勝つことしか考えられなかったためだろう。陸自OBには今でも不満を開陳する人がいる。例えば、東北方総監をやったOBの某さんは、4-5年前の「世界と日本」でそのような意見を開陳していた。
だが、そこには上陸戦の可能性やその規模への考察や、戦後処理についての思慮はなかった。その点を考慮すれば、対人地雷もクラスター兵器は絶対必要なものではなかったのである。
このような点を全部スッとばして「無いと対上陸戦ができない」からと[陸自やそのOBが]言っているから、対人地雷やクラスターの禁止は誤っていたとするのは、誤りである。
もちろん、高坂さんの「日本はロボット兵器装備について縛りをいれるべきではない」とする主張そのものには賛同するのだけれども。
※ 高坂哲郎「迫りくる自律型ロボット兵器の時代」『外交』(時事通信,2014.1)pp.50-53.
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Comment
No title
14:41
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伝統的に防空任務の方が発言が大きいからでしょうか?
田母神氏が航空幕僚長だったとき反対してたような気がするけど、あの人じゃなあという気もするので
Re: No title
19:17
文谷数重
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彼らからすれば、航空撃滅戦以外の対地攻撃に何の興味もないわけですから。
> 自衛隊のクラスター弾って陸自の特科のロケットと、空自のクラスター爆弾があったけども、空自は何も言わなかったんでしょうか?
> 伝統的に防空任務の方が発言が大きいからでしょうか?
>
> 田母神氏が航空幕僚長だったとき反対してたような気がするけど、あの人じゃなあという気もするので
No title
21:31
とん
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対人地雷にしても、対戦車地雷原に混ぜて使うものもありますから。野放図に輸出したり、第三世界の紛争で農地や村落や水場を使用できなくするために無差別に撒くのとは意味が違うように思います。
No title
21:57
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海外派遣で有利ということですが日本が加盟したことで他国を条約に引き込めたのですか?
引き込めてないなら将来の自衛隊の派遣先から地雷や不発弾が消えるという有利さは得られてないということになるかと思います。
また、大規模上陸の可能性が低いといっても、大枚叩いて新しく10式戦車を買うことと既にある自分の手足をわざわざ縛って放棄することは同列には語れないようにも思います。
御意見お聞かせ下さい。
Re: No title
22:26
文谷数重
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しかし、長期的に見れば対人地雷とクラスター子弾はなくなる傾向です
近視眼的に、陸自益の問題だけで禁止に反対するよりも
長期的に、自衛隊の派遣先での危険排除や、日本の立場を考慮すれば禁止に賛成するほうが正解です
オスロ・プロセス当時の状況からすれば、陸自益とされるものだけ争っても取り残されるだけの状況でした
100年前に「ダムダム弾禁止は、日本軍隊の利益にならない」と争うようなものです
どこかの敵の陸軍と睨み合っている状況でもないのに、そんなことを行ってもトンチキ扱いされるだけだったでしょう。
> 少し質問させてください。
> 海外派遣で有利ということですが日本が加盟したことで他国を条約に引き込めたのですか?
> 引き込めてないなら将来の自衛隊の派遣先から地雷や不発弾が消えるという有利さは得られてないということになるかと思います。
> また、大規模上陸の可能性が低いといっても、大枚叩いて新しく10式戦車を買うことと既にある自分の手足をわざわざ縛って放棄することは同列には語れないようにも思います。
> 御意見お聞かせ下さい。
対人地雷廃止でも、クレイモアは残るし
02:56
しやもじ
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