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Category : 未分類
渡辺の「辺」の字と、斉藤の「斉」の字は、社会的なコストも考えれば全部「辺」と「斉」にしてしまったほうがいいのではないか。
笹原宏之さんの「漢字の異体字の攻防」では、人名で使う渡辺の「辺」(磯辺の「辺」でもいいけど)は100種類を越えるという。斉藤の「斉」の字も同じであるともいう。
もともと、辺も邉も邊…も全部同じ文字である。島と嶋と〓(山の下に鳥)と同じ伝で、書き方の差に過ぎない。
江戸期の人に聞けば、渡辺も渡邊も渡邉も同じだと答えるだろう。当時はパソコンもワープロもない。手書きで書く上、メンドイから適当に省略したり書き癖がでる。もともと活字の辞書もないので、字も今ひとつ統一されない。邉や邊のような画数の多い文字はあやふやであり、人によって違う。
本人にしても、違う書き方をする例がある。下手をすると自分の名前について、渡辺と渡邊と渡邉が混在しても不思議はない。新選組始末かなにかだったか、新選組と新撰組どちらが正しいのかという説明で、新撰組が正しいとありながら、我々新選組では……といった表記もあったという。
笹原さんによると、渡辺が100通りの書きぶりになった理由は、書きぐせと転載時の誤記としている。最初に戸籍を作ってから、その戸籍の文字を正しいと考えて、自分は渡辺である、渡邊である、渡邉……と認識するようになった。さらに、戸籍係の書癖や、書き間違いもあり、康煕字典にないような邊や邉のバリエーションが生まれた。さらに、転出転入等でその文字を写すときに、さらに文字を間違えてバリエーションは増えた。そう述べている。
結局、大した理由でもないということだ。
だが、その大した理由でもないのに怒る人もいる。渡辺と斉藤は、発音すればみんな同じなのだが、ガミガミいうやつも多く、中には怒りだす奴がいる。
だが、もともとは同じ文字の書きぐせである。この辺り、メンドイから法律で統一してもいいのではないか。渡辺斉藤法(正確に言えば斉藤の斉は意味も違うのがあるが、姓で使う分には同じようなものだ)とかついでに吉田統一法とかね。佐藤斉藤内藤遠藤の藤の字も、始終出てくる度に手書きするのは面倒だから「草冠に乃」でいいんじゃないかと思うけどね。
あと、この笹原さん記事だと、「さいたま市」の「さ」の字についての分化もなかなか面白い。「ち」を裏返した2画の「さ」と、3画の「±」のような「さ」について、分化しているという話。住所で「さいたま市」と書くときには、漢字欄に2画の「さ」、ふりがな欄に3画の「さ」で使い分ける例があるという話である。
小学校の県庁所在地の試験で3画の「さ」を使うとバツを付けられたという話もある。笹原さんは大学院の時の先生なのだが、その手の話を集めていて、前には「薩摩の『薩』の字で、『文』にするか『立』にするかで正誤答にされた話もあるよ」と話していた。その手の例の2つ目なのだろう。
※ 笹原宏之「漢字の異体字の攻防」『日本語学』(明治書院,2014.2)pp.60-77.
笹原宏之さんの「漢字の異体字の攻防」では、人名で使う渡辺の「辺」(磯辺の「辺」でもいいけど)は100種類を越えるという。斉藤の「斉」の字も同じであるともいう。
もともと、辺も邉も邊…も全部同じ文字である。島と嶋と〓(山の下に鳥)と同じ伝で、書き方の差に過ぎない。
江戸期の人に聞けば、渡辺も渡邊も渡邉も同じだと答えるだろう。当時はパソコンもワープロもない。手書きで書く上、メンドイから適当に省略したり書き癖がでる。もともと活字の辞書もないので、字も今ひとつ統一されない。邉や邊のような画数の多い文字はあやふやであり、人によって違う。
本人にしても、違う書き方をする例がある。下手をすると自分の名前について、渡辺と渡邊と渡邉が混在しても不思議はない。新選組始末かなにかだったか、新選組と新撰組どちらが正しいのかという説明で、新撰組が正しいとありながら、我々新選組では……といった表記もあったという。
笹原さんによると、渡辺が100通りの書きぶりになった理由は、書きぐせと転載時の誤記としている。最初に戸籍を作ってから、その戸籍の文字を正しいと考えて、自分は渡辺である、渡邊である、渡邉……と認識するようになった。さらに、戸籍係の書癖や、書き間違いもあり、康煕字典にないような邊や邉のバリエーションが生まれた。さらに、転出転入等でその文字を写すときに、さらに文字を間違えてバリエーションは増えた。そう述べている。
結局、大した理由でもないということだ。
だが、その大した理由でもないのに怒る人もいる。渡辺と斉藤は、発音すればみんな同じなのだが、ガミガミいうやつも多く、中には怒りだす奴がいる。
だが、もともとは同じ文字の書きぐせである。この辺り、メンドイから法律で統一してもいいのではないか。渡辺斉藤法(正確に言えば斉藤の斉は意味も違うのがあるが、姓で使う分には同じようなものだ)とかついでに吉田統一法とかね。佐藤斉藤内藤遠藤の藤の字も、始終出てくる度に手書きするのは面倒だから「草冠に乃」でいいんじゃないかと思うけどね。
あと、この笹原さん記事だと、「さいたま市」の「さ」の字についての分化もなかなか面白い。「ち」を裏返した2画の「さ」と、3画の「±」のような「さ」について、分化しているという話。住所で「さいたま市」と書くときには、漢字欄に2画の「さ」、ふりがな欄に3画の「さ」で使い分ける例があるという話である。
小学校の県庁所在地の試験で3画の「さ」を使うとバツを付けられたという話もある。笹原さんは大学院の時の先生なのだが、その手の話を集めていて、前には「薩摩の『薩』の字で、『文』にするか『立』にするかで正誤答にされた話もあるよ」と話していた。その手の例の2つ目なのだろう。
※ 笹原宏之「漢字の異体字の攻防」『日本語学』(明治書院,2014.2)pp.60-77.
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Comment
15:55
おひさま
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編集
亀甲、木簡、紙と筆記用具が変わるたびに、書体も書き順も変わり、さらに今は横書き全盛ですので。
こっちはもっと大雑把でいいんじゃないかな。
No title
05:39
大島
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編集
漢字の学者が「漢字に筆順なんて元からないし、子供も暗記が大変だから止めさせたほうがいい」といってるのに教育では無視される。
漢字の筆順をめぐって―学校教育を批判する
http://www.geocities.jp/hituzinosanpo/hituzyun.html
No title
06:12
とん
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かけ離れてしまうとこれまでの書籍を始めとする文化の蓄積を新たな字体で教育を受ける世代以降は享受できなくなります。このへんは中国と台湾の簡体字、繁体字にもつながるのかな。
今の漢字教育は読みに力を入れてるのかしら?
Re: No title
14:23
文谷数重
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> 漢字の筆順問題は有名だね・・・。
> 漢字の学者が「漢字に筆順なんて元からないし、子供も暗記が大変だから止めさせたほうがいい」といってるのに教育では無視される。
>
> 漢字の筆順をめぐって―学校教育を批判する
> http://www.geocities.jp/hituzinosanpo/hituzyun.html
Re: タイトルなし
14:24
文谷数重
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> 学校で教えてる漢字の書き順も、果たして合理的かという疑問もありますね。
> 亀甲、木簡、紙と筆記用具が変わるたびに、書体も書き順も変わり、さらに今は横書き全盛ですので。
> こっちはもっと大雑把でいいんじゃないかな。
Re: No title
14:27
文谷数重
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繁体字も、書けるものでもなく、台湾の人も、手書きで臺灣なんて書いていませんし。
> あまり過去のとかけ離れた字体にならないのであれば、統一してしまうのも合理的ですね。
>
> かけ離れてしまうとこれまでの書籍を始めとする文化の蓄積を新たな字体で教育を受ける世代以降は享受できなくなります。このへんは中国と台湾の簡体字、繁体字にもつながるのかな。
>
> 今の漢字教育は読みに力を入れてるのかしら?
17:10
シュピーゲル
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言葉も意味も時間の中で移ろうものなのに何を基準にしていたか疑問でした
儒教の古賛美にも思えました
とはいえ法で統一してしまうのもどうかと、名字とかアイデンティティーに思う方も居られるでしょうし、法で縛れば杓子定規な対応がされる可能性もあります